公認心理師 2024-120

働き方改革関連法で規定された事項に関する問題です。

本問は「公認心理師 2023-49」とほぼ同じ内容になっていますね。

問120 2018年(平成30年)に成立した、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律〈働き方改革関連法〉で規定された事項に該当しないものを1つ選べ。
① 健康経営の推進
② 時間外労働の上限規制
③ 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保
④ 長時間労働者への産業医等による面接指導の強化
⑤ 個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方がしやすい環境整備

選択肢の解説

① 健康経営の推進
② 時間外労働の上限規制
③ 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保
④ 長時間労働者への産業医等による面接指導の強化
⑤ 個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方がしやすい環境整備

本問については「働き方改革関連法に関するハンドブック」を参考にしつつ解説していきましょう。

そもそも「働き方改革」とは、働く人々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革です。

日本が直面する「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」、「働く方々のニーズの多様化」などの課題に対応するためには、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境をつくることが必要とされています。

働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現することで、成長と分配の好循環を構築し、働く人一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しているわけです。

「働き方改革関連法」の全体像としては以下のようなものが示されています。


  1. 時間外労働の上限規制を導入(大企業2019年4月1日施行)(中小企業2020年4月1日施行)
    時間外労働の上限について月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合にも上限を設定します。
  2. 年次有給休暇の確実な取得(2019年4月1日施行)
    使用者は10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、年5日について確実に取得させなければなりません。
  3. 中小企業の月60時間時超の時間外労働に対する割増賃金率引上げ(中小企業2023年4月1日施行)
    月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率を50%に引き上げます。
  4. 「フレックスタイム制」の拡充(2019年4月1日施行)
    より働きやすくするため、制度を拡充します。労働時間の調整が可能な期間(清算期間)を3か月まで延長できます。
  5. 「高度プロフェッショナル制度」を創設(2019年4月1日施行)
    職務の範囲が明確で一定の年収を有する労働者が高度の専門的知識等を必要とする業務に従事する場合に健康確保措置や本人同意、労使委員会決議等を要件として、労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定を適用除外にできます。
  6. 産業医・産業保健機能の強化(2019年4月1日施行)
    産業医の活動環境を整備します。労働者の健康管理等に必要な情報を産業医へ提供すること等とします。
  7. 勤務間インターバル制度の導入促進(2019年4月1日施行)
    終業時刻から次の始業時刻の間、一定時間以上の休息時間(インターバル時間)の確保に努めなければなりません。
  8. 正社員と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差の禁止(大企業・派遣会社2020年4月1日施行)(中小企業2021年4月1日適用)
    同一企業内において、正社員と非正規雇用労働者との間で、基本給や賞与などあらゆる待遇について不合理な差を設けることが禁止されます。

上記には、時間外労働の上限規制、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保、長時間労働者への産業医等による面接指導の強化、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方がしやすい環境整備などが含まれているのがわかりますね。

一つひとつ見ていきましょう。

まず選択肢②の「時間外労働の上限規制」についてですが、残業時間の上限を法律で規制することは、70年前(1947年)に制定された「労働基準法」において、初めての大改革となります。

今までは、法律上は、残業時間の上限がありませんでした(大臣告示)が、法律で残業時間の上限を定め、これを超える残業はできなくなります。

残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間とし、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできません(月45時間は、1日当たり2時間程度の残業に相当します)。

臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、以下を守らなければなりません。

  • 時間外労働が年720時間以内
  • 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
  • 時間外労働と休日労働の合計について、「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」が全て1か月当たり80時間以内(月80時間は、1日当たり4時間程度の残業に相当します)。
    また、原則である月45時間を超えることができるのは、年間6か月までです。

ただし、上限規制には適用を猶予・除外する事業・業務がありますので、上記のパンフレットを参照してください。

上記に伴い、選択肢④の「長時間労働者への産業医等による面接指導の強化」も設けられました。

産業医・産業保健機能の強化についてでは、「労働者の健康管理等に必要な情報の産業医等への提供等」が以下の通り設定されています。


【労働者の健康管理等に必要な情報の産業医等への提供】

1.産業医等を選任した事業者は、産業医等に対し、産業保健業務を適切に行うために必要な情報(※1)を提供(※2)しなければなりません。
(産業医の選任義務のある労働者数50人以上の事業場は義務、産業医の選任義務のない労働者の健康管理等を行う医師又は保健師を選任した50人未満の事業場は努力義務)

(※1)産業医に対して提供する情報
ア:既に講じた健康診断実施後の措置、長時間労働者に対する面接指導実施後の措置若しくは労働者の心理的な負担の程度を把握するための検査の結果に基づく面接指導実施後の措置又は講じようとするこれらの措置の内容に関する情報(これらの措置を講じない場合にあっては、その旨及びその理由)
イ:時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超えた労働者の氏名及び当該労働者に係る当該超えた時間に関する情報
ウ:ア及びイに掲げるもののほか、労働者の業務に関する情報であって産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要と認めるもの

(※2)産業医に対する情報の提供時期
アに掲げる情報:健康診断の結果についての医師等からの意見聴取、面接指導の結果についての医師からの意見聴取又は労働者の心理的な負担の程度を把握するための検査の結果に基づく面接指導の結果についての医師からの意見聴取を行った後、遅滞なく提供すること。
イに掲げる情報:当該超えた時間の算定を行った後、速やかに提供すること。
ウに掲げる情報:産業医から当該情報の提供を求められた後、速やかに提供すること。

【労働者の心身の状態に関する情報の取扱い】

2.事業者は、本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合を除き、労働者の心身の状態に関する情報を収集し、保管し、又は使用するに当たっては、労働者の健康の確保に必要な範囲内で労働者の心身の状態に関する情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければなりません。


このように、長時間労働者に対する面接指導等の実施についてでは、①労働時間の状況の把握、②時間外・休日労働時間の算定・申出の手続、③長時間労働者に対する面接指導等の実施、などが行われることになります。

時間外・休日労働時間が月80時間を超えた場合、事業者は申出をした労働者に対し、医師による面接指導を実施しなければなりません。面接指導を実施した医師から必要な措置について意見聴取を行い、必要と認める場合は、適切な事後措置を実施しなければなりません。

時間外・休日労働時間が月80時間を超えた労働者に関する作業環境、労働時間に関する情報、深夜業の回数及び時間数等の情報を産業医に提供することになります。

また、選択肢③の「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」については、こちらのパンフレットが役立ちます。

こちらによると以下のような事柄が示されています。

  1. 不合理な待遇差の禁止
    同一企業内において、正社員と非正規雇用労働者との間で、基本給や賞与などのあらゆる待遇について、不合理な待遇差を設けることが禁止されます。ガイドライン(指針)において、どのような待遇差が不合理に当たるかを例示します。
  2. 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
    非正規雇用労働者は、「正社員との待遇差の内容や理由」などについて、事業主に説明を求めることができるようになります。事業主は、非正規雇用労働者から求めがあった場合は、説明をしなければなりません。
  3. 裁判外紛争解決手続(行政ADR) の整備
    都道府県労働局において、無料・非公開の紛争解決手続きを行います。「均衡待遇」や「待遇差の内容・理由」に関する説明についても、行政ADRの対象となります。

特に不合理な待遇差をなくすための規定の整備としては、裁判の際に判断基準となる「均衡待遇」「均等待遇」をパート・有期・派遣で統一的に整備し、また、事業主が労働者に対して説明しなければならない内容を、パート・有期・派遣で統一的に整備されています。

続いて、選択肢⑤の「個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方がしやすい環境整備」については、上記の「フレックスタイム制」の拡充が該当しますね。

具体的には、労働時間の調整が可能な期間(清算期間)を延長(1か月→3か月)するなどし、子育て・介護しながらでもより働きやすい状況を作っていくことになります。

清算期間が3か月になると、例えば、6月に働いた時間分を、8月の休んだ分に振り替えることなどが可能になり、「6~8月の3か月」の中で労働時間の調整が可能となるため、子育て中の親が8月の労働時間を短くすることで、夏休み中の子どもと過ごす時間を確保しやすくなります。

このように、選択肢①の「健康経営の推進」は、働き方改革関連法で規定されている内容にはなっていません。

「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。

企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されます。

健康経営は、日本再興戦略、未来投資戦略に位置づけられた「国民の健康寿命の延伸」に関する取り組みの一つです。

経済産業省では、健康経営に係る各種顕彰制度を通じて、優良な健康経営に取り組む法人を「見える化」し、社会的な評価を受けることができる環境を整備しています。

具体的には、2014年度から上場企業を対象に「健康経営銘柄」を選定しており、2016年度からは「健康経営優良法人認定制度」を推進しています。

大規模法人部門の上位層には「ホワイト500」、中小規模法人部門の上位層には「ブライト500」の冠を付加しています。

こうした「健康経営」自体は、従業員の健康維持や回復において重要な取り組みであり、実践することで企業の将来的な利益率アップが見込まれるため推進されておりますが、法的な義務として設定されているものではありません。

以上より、選択肢②、選択肢③、選択肢④および選択肢⑤は働き方改革関連法で規定された事項であると判断でき、除外することになります。

また、選択肢①が働き方改革関連法で規定されていない内容であると判断でき、こちらを選択することになります。

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