公認心理師 2022-20

職場におけるメンタルヘルス対策の中でも、二次予防に該当するものを選択する問題です。

公衆衛生における一次予防~三次予防は有名ですが、これは学校・産業・医療などで様々な形で実施されています。

各領域における実施内容も理解しておくと良いですね。

問20 職場におけるメンタルヘルス対策として、G.Caplanの予防モデルに基づく二次予防に該当するものを1つ選べ。
① 職場復帰支援プランの作成
② 高ストレス者への医師による面接指導
③ メンタルヘルスケアに関する研修の実施
④ 過重労働対策としての労働時間の上限設定
⑤ 疾病を抱える労働者への治療と仕事の両立支援

関連する過去問

公認心理師 2018-29

公認心理師 2019-131

解答のポイント

一次予防~三次予防の内容と、各領域における具体的な実施内容を理解している。

選択肢の解説

① 職場復帰支援プランの作成
② 高ストレス者への医師による面接指導
③ メンタルヘルスケアに関する研修の実施
④ 過重労働対策としての労働時間の上限設定
⑤ 疾病を抱える労働者への治療と仕事の両立支援

公衆衛生では、予防はその目的から第一次予防、第二次予防、第三次予防の3つのレベルに分けて考えられています。

一次予防とは、生活習慣の改善、健康教育、予防接種などの病にかからないように施す処置や指導のことです。

二次予防とは、早期発見、早期治療を促して病が重症化しないように行われる処置や指導のことを指し、各種健康診断などが二次予防に該当します。

三次予防とは、治療過程において保健指導やリハビリテーションを行うことにより社会復帰を促したり、再発を防止したりする取り組みのことを指します。

こうした公衆衛生の考えを精神医療の分野に取り入れたのがCaplan(1964)です。

精神医療における第一次予防とは、ある一定の集団において、あらゆる種類の精神障害の発生を未然に防ぐこと、すなわち、その集団における精神障害の発生率を低下させることを言います

この集団とは、地域社会全体のこともあるし、一定の年齢のすべての人々という場合もあるし、ある特定の精神障害に脆弱な集団でもあり得ます。

とにかく、それらの人々に対して障害が発生する以前に何らかの働きかけを行って、その発生を防ぐことが第一次予防です。

精神医療における第二次予防の目的は、早期発見と早期治療によって精神障害の罹患期間を短縮し、慢性化を防ぐことです。

第二次予防プログラムの実施において重要なのは、明確な症状を呈していない人々や援助を求めない人々を如何にして早期に発見するかということです。

その方法は、その問題の質や集団によって異なってくるでしょう。

精神医療における第三次予防は、長期の入院生活や精神障害自体によって、生活上何らかの不都合を感じている人を減らすこと、すなわち入院経験のある障害者や自宅療養中の障害者が地域社会の中で効果的に機能できるよう復帰させることを目的としています。

よって、その対象は障害に陥ってそのご回復したか現在回復しつつある人を対象にし、そういう対象にリハビリテーションを援助することが第三次予防にあたります

では、これらを下地にしつつ「労働者の心の健康の保持増進のための指針」も参照しながら解説をしていきましょう。

労働者の心の健康の保持増進のための指針」には、以下のような記述があります。

その実施に当たってはストレスチェック制度の活用や職場環境等の改善を通じて、メンタルヘルス不調を未然に防止する「一次予防」、メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な措置を行う「二次予防」及びメンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰を支援等を行う「三次予防」が円滑に行われるようにする必要がある

これらをまとめると以下になりますね。

  1. 一次予防:ストレスチェック制度の活用や職場環境等の改善を通じて、メンタルヘルス不調を未然に防止する。
  2. 二次予防:メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な措置を行う。
  3. 三次予防:メンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰を支援等を行う。

こちらを各選択肢の内容と合わせながら見ていきましょう。

「選択肢③ メンタルヘルスケアに関する研修の実施」および「選択肢④ 過重労働対策としての労働時間の上限設定」に関しては、メンタルヘルス不調が起こらないようにするため、すなわち、未然に防ぐために行っている活動になりますから「一次予防」に該当します。

「選択肢② 高ストレス者への医師による面接指導」は、メンタルヘルス不調を早期に発見して(高ストレス者と認定しているところですね)、適切な処置(医師による面接指導)を行っていますから「二次予防」に該当します。

「選択肢① 職場復帰支援プランの作成」および「選択肢⑤ 疾病を抱える労働者への治療と仕事の両立支援」に関しては、既にメンタルヘルス不調になっている労働者への対応であり、職場復帰や病気を抱えつつも職場に定着できるような支援になりますから「三次予防」に該当します。

読んでもらえればわかると思いますが、一次予防~三次予防というのは直線状に置かれる概念ではなく、円環の中に位置づけられる概念です。

すなわち、適切な三次予防は未来の一次予防につながっているというのがわかると思います。

適切な三次予防がなされているという在り様は、労働者に安心感を与え、それ自体がメンタルヘルスに良い効果を与えることになるでしょう。

以上のように、選択肢③および選択肢④は一次予防、選択肢①と選択肢⑤は三次予防なので除外することになり、選択肢②が二次予防に該当するのでこちらを選択することになります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です