公認心理師 2020-108

労働基準法に基づく年次有給休暇に関しての理解を問う内容になっています。

労働者の支援にあたっては基本の知識となるでしょうし、私たち自身も労働者ですから理解しておきたいところですね。

問108 労働基準法に基づく年次有給休暇について、正しいものを1つ選べ。

① 雇入れの日から3か月間継続勤務した労働者に対して付与される。

② 原則として、法定休日を除き連続して4日間以上の年次有給休暇の取得は認められていない。

③ 週所定労働日数及び週所定労働時間によって、付与される年次有給休暇の日数が異なる場合がある。

④ パートタイム労働者への年次有給休暇の付与は、法による定めはなく、各事業者の方針によって決定される。

⑤ 事業の正常な運営が妨げられる場合においても、労働者は希望した日に年次有給休暇を取得することができる。

解答のポイント

労働基準法第39条(年次有給休暇)の内容を把握している。

選択肢の解説

① 雇入れの日から3か月間継続勤務した労働者に対して付与される。

本選択肢は労働基準法第39条①の内容になっていますね。

使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

このように、労働者の雇入れ日から「6か月」継続し、全労働日の8割以上の日数に出勤した場合は必ず10日間の有給休暇を付与しなければならないとされています。

基本的な計算式は「出勤率=出勤日数÷全労働日」となります。

なお「継続勤務」とは、事業場における在籍期間を意味し、勤務の実態に即して実質的に判断されます。

例えば、定年退職者を嘱託社員として再雇用した場合などは、継続勤務として扱う必要があります。

また、出勤率算定に当たっての留意点として、業務上の怪我や病気で休んでいる期間や法律上の育児休業や介護休業を取得した期間は、出勤したものとみなして取り扱う必要があります。

さらに、会社都合の休業期間などは、原則として、全労働日から除外する必要があります。

以上より、本選択肢は雇入れからの勤務期間が間違っていることがわかりますね。

よって、選択肢①は誤りと判断できます。

② 原則として、法定休日を除き連続して4日間以上の年次有給休暇の取得は認められていない。
⑤ 事業の正常な運営が妨げられる場合においても、労働者は希望した日に年次有給休暇を取得することができる。

こちらは労働基準法第39条⑤の内容になっていますね。

使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

一般に、有給休暇の取得は労働者の権利なので雇用者による制限は原則として認められません。

取得時期についても基本的に労働者の希望で決めることができますが、労働者の希望する時季が著しい会社運営の妨げになる場合、時季についてのみ会社が変更指定することが可能であり、それを定めたのが上記になります。

いわゆる「時季変更権」というものであり、たとえば年度末で繁忙期に有給休暇の請求があった場合や、多くの労働者から同時期に有給休暇申請が集中したケースなどに時季変更権が認められることがあります。

具体的には「事業所の規模や業務内容」「有給休暇を申請した従業員の担当している職務内容や職務の性質」「職務の繁閑」「代替要員確保の配置の難易、同時季に有給休暇を指定した員数」「これまでの労働慣行」などを勘案して決定することになります。

こうした「時季変更権」については、それを濫用することで不当に労働者に休ませないということも不可能ではありません。

そのため、労働基準法第119条では罰則が設けられており、これに違反した場合は「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」となります。

続いて、選択肢②の内容についても考えていきましょう。

年次有給休暇に関しては、労働者に認められた権利ですので、その取得を制限することは原則として不可能です。

しかし、上記の条項のように「時季変更権」が認められることはあり得ます。

極端な話ですが、例えば業務の繁忙期に「明日から20日間の有給休暇を取らせてください」という申し出があった場合などは「時季変更権」が認められる可能性があると言えますね。

以上より、選択肢②および選択肢⑤は誤りと判断できます。

なお、上記の内容と少し絡んできそうなのが、労働基準法第39条の⑧の「年次有給休暇の時季指定義務」になります。

前項の規定にかかわらず、第五項又は第六項の規定により第一項から第三項までの規定による有給休暇を与えた場合においては、当該与えた有給休暇の日数(当該日数が五日を超える場合には、五日とする)分については、時季を定めることにより与えることを要しない。

一般に年次有給休暇は労働者の申出による取得が原則ですが、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対しては、年次有給休暇の日数のうち年5日について、使用者が時季を指定して取得させることが必要だということです。

ただし、使用者は、時季指定に当たっては労働者の意見を聴取し、その意見を尊重するよう努めなければなりません。

このこともついでに覚えておくと良いでしょう。

③ 週所定労働日数及び週所定労働時間によって、付与される年次有給休暇の日数が異なる場合がある。
④ パートタイム労働者への年次有給休暇の付与は、法による定めはなく、各事業者の方針によって決定される。

こちらは労働基準法第39条③の内容になっていますね。

次に掲げる労働者(一週間の所定労働時間が厚生労働省令で定める時間以上の者を除く)の有給休暇の日数については、前二項の規定にかかわらず、これらの規定による有給休暇の日数を基準とし、通常の労働者の一週間の所定労働日数として厚生労働省令で定める日数(第一号において「通常の労働者の週所定労働日数」という)と当該労働者の一週間の所定労働日数又は一週間当たりの平均所定労働日数との比率を考慮して厚生労働省令で定める日数とする。

  1. 一週間の所定労働日数が通常の労働者の週所定労働日数に比し相当程度少ないものとして厚生労働省令で定める日数以下の労働者
  2. 週以外の期間によつて所定労働日数が定められている労働者については、一年間の所定労働日数が、前号の厚生労働省令で定める日数に一日を加えた日数を一週間の所定労働日数とする労働者の一年間の所定労働日数その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める日数以下の労働者

嚙み砕いて言えば、1週間の労働日数や労働時間によって、その比率を考慮して年次有給休暇の日数が変わってきますよ、ということです。

詳しい日数は労働基準法施行規則第23条の3によって、以下の通り定められています。

上記の通り、週所定労働日数や労働時間によって、付与される年次有給休暇の日数が異なってくることがわかりますね。

これらの規定はパートタイム労働者を念頭に置いて作られているのは自明のことであろうと思います。

当然、パートタイム労働者の年次有給休暇は「各事業者の方針」ではなく、上記の「法による定め」によって決定されるものですね。

以上より、選択肢④は誤りと判断でき、選択肢③は正しいと判断できます。

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