公認心理師 2018-37

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章(以下、憲章)についての設問です。
内閣府のホームページから詳しい内容を見ることができます。
そこに示されている内容は以下の通りです。

「誰もがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たす一方で、子育て・介護の時間や、家庭、地域、自己啓発等にかかる個人の時間を持てる健康で豊かな生活ができるよう、今こそ、社会全体で仕事と生活の双方の調和の実現を希求していかなければならない

仕事と生活の調和と経済成長は車の両輪であり、若者が経済的に自立し、性や年齢などに関わらず誰もが意欲と能力を発揮して労働市場に参加することは、我が国の活力と成長力を高め、ひいては、少子化の流れを変え、持続可能な社会の実現にも資することとなる」

「そのような社会の実現に向けて、国民一人ひとりが積極的に取り組めるよう、ここに、仕事と生活の調和の必要性、目指すべき社会の姿を示し、新たな決意の下、官民一体となって取り組んでいくため、政労使の合意により本憲章を策定する

以下で、選択肢ごとの解説を行っていきます。

解答のポイント

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章を把握していること。

選択肢の解説

『①働く人々の健康が保持され、家族・友人との時間、社会参加のための時間を持てる社会を目指す』

憲章の「仕事と生活の調和が実現した社会の姿」では以下のように記載されています。

「仕事と生活の調和が実現した社会とは、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」である」

そしてこの具体的な内容として以下のように掲げています。

  1. 就労による経済的自立が可能な社会
    経済的自立を必要とする者とりわけ若者がいきいきと働くことができ、かつ、経済的に自立可能な働き方ができ、結婚や子育てに関する希望の実現などに向けて、暮らしの経済的基盤が確保できる。
  2. 健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会
    働く人々の健康が保持され、家族・友人などとの充実した時間、自己啓発や地域活動への参加のための時間などを持てる豊かな生活ができる
  3. 多様な働き方・生き方が選択できる社会
    性や年齢などにかかわらず、誰もが自らの意欲と能力を持って様々な働き方や生き方に挑戦できる機会が提供されており、子育てや親の介護が必要な時期など個人の置かれた状況に応じて多様で柔軟な働き方が選択でき、しかも公正な処遇が確保されている。
以上のように、選択肢①の内容は正しいため、除外することができます。

『②能力や成果に応じて報酬が配分されることによって、就労による経済的自立が可能な社会を目指す』

後半部分の「就労による経済的自立が可能な社会」については、①で引用した箇所が該当します。

  1. 就労による経済的自立が可能な社会
    経済的自立を必要とする者とりわけ若者がいきいきと働くことができ、かつ、経済的に自立可能な働き方ができ、結婚や子育てに関する希望の実現などに向けて、暮らしの経済的基盤が確保できる。
前半部分の「能力や成果に応じて報酬が配分される」は、いわゆる成果主義の説明になっています。
企業において、業務の成果、それに至るまでの過程によって評価し、報酬や人事を決定することを指しますが、合理性に欠けている、従業員の企業への信頼が薄くなるなどの指摘があるようです(こちらなど)。
例えば「賞与」、いわゆるボーナスは成果配分としての性格が強いため、企業の業績や個人の評価に応じて、支給額が変動することがあります。
これらから、前半部分はワーク・ライフ・バランスの考え方と逆と言ってよいと思われます。
よって、選択肢②は誤りであり、こちらを選択することが求められます。

『③仕事と生活の調和推進のための行動指針では数値目標を設定し、政策への反映を図ることとしている』

内閣府ホームページから確認できる「仕事と生活の調和推進のための行動指針」によると、以下のような数値目標に関する記述がなされている。

「仕事と生活の調和した社会の実現に向けた企業、働く者、国民、国及び地方公共団体の取組を推進するための社会全体の目標として、政策によって一定の影響を及ぼすことができる項目について数値目標を設定する

この数値目標は、社会全体として達成することを目指す目標であり、個々の個人や企業に課されるものではない

「2020年の目標値は、取組が進んだ場合に達成される水準(<1>個人の希望が実現した場合を想定して推計した水準、又は、<2>施策の推進によって現状値や過去の傾向を押し上げた場合を想定して推計した水準等)を設定する」

なお、詳しい数値目標内容についてはこちらを参照してください。

以上のように、選択肢③は正しいため、除外することができます。

『④性や年齢にかかわらず、誰もが自らの意欲と能力を持って、多様な働き方・生き方が選択できる社会を目指す』

最初にも記した通り、憲章のはじめの部分には以下のような記載があります。

「仕事と生活の調和と経済成長は車の両輪であり、若者が経済的に自立し、性や年齢などに関わらず誰もが意欲と能力を発揮して労働市場に参加することは、我が国の活力と成長力を高め、ひいては、少子化の流れを変え、持続可能な社会の実現にも資することとなる」

また先述した「仕事と生活の調和が実現した社会の姿」の中でも以下のように記載されています。

  • 多様な働き方・生き方が選択できる社会
    性や年齢などにかかわらず、誰もが自らの意欲と能力を持って様々な働き方や生き方に挑戦できる機会が提供されており、子育てや親の介護が必要な時期など個人の置かれた状況に応じて多様で柔軟な働き方が選択でき、しかも公正な処遇が確保されている

他にも「仕事と生活の相克と家族と地域・社会の変貌」の項目においては、より具体的に以下のように示されています。

「人口減少時代にあっては、社会全体として女性や高齢者の就業参加が不可欠であるが、働き方や生き方の選択肢が限られている現状では、多様な人材を活かすことができない

多様な選択肢という点については以下のような記載がされています。

「いま、我々に求められているのは、国民一人ひとりの仕事と生活を調和させたいという願いを実現するとともに、少子化の流れを変え、人口減少下でも多様な人材が仕事に就けるようにし、我が国の社会を持続可能で確かなものとする取組である」

「働き方や生き方に関するこれまでの考え方や制度の改革に挑戦し、個々人の生き方や子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な働き方の選択を可能とする仕事と生活の調和を実現しなければならない

以上から、選択肢④の内容は正しく、除外することができます。

『⑤国民一人ひとりが仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、多様な生き方が選択・実現できる社会を目指す』

憲章の「仕事と生活の調和が実現した社会の姿」では以下のように記載されています。

「仕事と生活の調和が実現した社会とは、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」である」

この実現のために「関係者が果たすべき役割」としては以下のように記載されています。

このような社会の実現のためには、まず労使を始め国民が積極的に取り組むことはもとより、国や地方公共団体が支援することが重要である。既に仕事と生活の調和の促進に積極的に取り組む企業もあり、今後はそうした企業における取組をさらに進め、社会全体の運動として広げていく必要がある」

「そのための主な関係者の役割は以下のとおりである。また、各主体の具体的取組については別途、「仕事と生活の調和推進のための行動指針」で定めることとする」

「取組を進めるに当たっては、女性の職域の固定化につながることのないように、仕事と生活の両立支援と男性の子育てや介護への関わりの促進・女性の能力発揮の促進とを併せて進めることが必要である」

上記に続く形で、企業と働く者、国、国民、地方公共団体の役割が記載されています。
以上のように、選択肢⑤の内容は正しく、除外することができます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です