ワーク・モチベーション研究において人間関係論の基礎となったものとして、正しいものを1つ選ぶ問題です。
ここで示されている理論の他にも、重要なものがあるので一緒に押さえておくと良いでしょう。
- ハーズバーグの動機づけ要因・衛生要因
- アトキンソンの達成動機理論
- ブルームの道具性期待理論
- ロックの目標設定理論
- ローラーの期待・価値理論
- リッカーの同一化理論
解答のポイント
科学的管理法→ホーソン研究という、ワーク・モチベーション研究の初期の流れを把握していること。
ワーク・モチベーションに関する基本的な理論を理解していること。
選択肢の解説
『①A.H.Maslowの欲求階層説』
マズローは、欲求をより基底的なものから上層のものまで分類して、欲求階層説を唱えました。
マズローの示した欲求については以下の通りです。
- 生理的欲求
- 安全・安定の欲求
- 愛情・所属の欲求
- 承認・自尊の欲求
- 自己実現の欲求
『②D.McGregorのX-Y理論』
マクレガーは組織における人間観のモデルとして本理論を提唱しました。
人間は本来怠け者であり、強制され命令されないと働かないと考える「X理論」と、仕事をすることは人間の本性であり、自ら設定した目標のためには進んで働くと考える「Y理論」で構成されています。
X理論では、具体的に以下のように考えます。
- 人間は生まれながら仕事が嫌い。
- 人間は強制・統制されないと企業目標のために力を発揮しない。
- 人間は命令されるのが好きで、責任を回避したがり、野心をもたず、安心を求める
Y理論では、具体的に以下のように考えます。
- 仕事で心身を使うのは人間の本性で、遊びや休息と同じ。
- 強制だけが企業目標達成の手段ではない。自分が進んで身を委ねた目標には、自ら鞭打って働くものである。
- 献身的に目標達成に尽くすかは、達成報酬次第である。
- 問題を解決するために創意工夫する能力は大抵の人に備わっている。
『⑤J.S.Adamsの衡平理論』
人は自己の仕事量や投入に見合う報酬や結果を得たいと願います。
この投入と結果の比が、他者のそれと等しい場合を「衡平(公平)」、等しくない場合は「不衡平(不公平)」と呼びます。
この理論では、不公平の程度が大きいほど、人はより不快になり、その解消へと動機づけられると考えます。
不公平には「不足(報酬が少ない)」と「もらいすぎ(過大報酬)」があるとされ、その解消には以下の方略が示されています。
- 自己の投入を変える:努力量の増大や低下
- 自己の結果を変える:報酬のカットや返却、昇給の要請
- 自己の投入や結果を認知的に歪曲する
- 不快な比較を避け、その場を去る
- 比較他者の投入と結果の比を変える:他者に対して、より多くor少ない努力を要請
- 自己の投入と結果の比と等しい他者を比較の相手に選ぶ
『④F.W.Taylorの科学的管理法』
Taylorの科学的管理法は、職務に必要な要件や作業環境・機材、責任権限などを科学的に明確化(職務分析)し、一連の人事管理(採用~配置・異動~教育・訓練~評価)を確立しました。
テイラーの管理法は、20世紀初頭から1930年代にかけて管理の主流として世界に広まりました。
科学的管理法には、以下のような特徴があります。
- ムリ・ムダ・ムラのない管理法の確立を目指し、「時間研究」および「動作研究」を行った(二つ合わせて「作業研究」と呼ぶ)。
- 作業の単純化・専門化・標準化を目指すあまり、人間性疎外という問題が指摘されている。
- 作業の単純化・専門化・標準化を目指すあまり、人間性疎外という問題が指摘されている。
人間性疎外には物理的なものと精神的なものがあり、精神的なものとして無意味感、無力感、社会的孤立、仕事と自己との関わりが見出せない自己疎隔の4つが指摘されている。
『③E.Mayoのホーソン研究』
ホーソン工場では、科学的管理法の影響下で、照明条件や休憩条件、作業時間などの物理的環境の変化が生産能率にどのような影響を及ぼすかを調べる一連の実験が行われました(途中から研究に加わったMayoが中心人物)。
結果は意外にも、こうした物理的な要因と生産性との対応関係について見出せませんでした。
この研究において重要だったのが、実験に参加した従業員たちの、自分たちが周囲から注目されているという意識でした。
このような現象は後に「ホーソン効果」と呼ばれるようになりました。
ホーソン研究の結果から、テイラーらによる科学的管理法を批判し、組織における人間的側面の重要性を重視し、人間関係論を展開しました。
ここから、リーダーシップ、動機づけ、職務満足感、モラール(集団としてのやる気)、コミュニケーションといった人事管理に主要な領域が出発することになります。
ちなみにホーソン研究により、以下の項目の重要性を指摘しました。
- 職場における「非公式集団」の存在と、帰属意識。
- 集団のもつ「集団規範」
- 「集団出来高払い」の有効性
上記からもわかるとおり、科学的管理法には見られなかった社会心理学的な視点の重要性を見出し、人間関係論の発展を促したということになりますね。