公認心理師 2021-45

犯罪被害者等基本法に関する問題です。

ひねりもなく、条項の把握が大切になっている問題です。

問45 犯罪被害者等基本法に関する記述として、誤っているものを1つ選べ。
① 犯罪被害者等のための施策は、犯罪被害者等が被害を受けたときから3年間までの間に講ぜられる。
② 犯罪被害者等が心理的外傷から回復できるよう、適切な保健医療サービスや福祉サービスを提供する。
③ 犯罪被害者等のための施策は、国、地方公共団体、その他の関係機関、民間の団体等との連携の下、実施する。
④ 刑事事件の捜査や公判等の過程における犯罪被害者等の負担が軽減されるよう、専門的知識や技能を有する職員を配置する。
⑤ 教育・広報活動を通じて、犯罪被害者等が置かれている状況や、犯罪被害者等の名誉や生活の平穏への配慮について国民の理解を深める。

解答のポイント

犯罪被害者等基本法の基本的な内容を把握している。

選択肢の解説

各選択肢の解説に入る前に、せっかく「犯罪被害者等基本法」について出題されたわけですから、大切な第1条および第2条を見ておきましょう。


第1条(目的) この法律は、犯罪被害者等のための施策に関し、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体及び国民の責務を明らかにするとともに、犯罪被害者等のための施策の基本となる事項を定めること等により、犯罪被害者等のための施策を総合的かつ計画的に推進し、もって犯罪被害者等の権利利益の保護を図ることを目的とする。

第2条(定義) この法律において「犯罪等」とは、犯罪及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす行為をいう。
2 この法律において「犯罪被害者等」とは、犯罪等により害を被った者及びその家族又は遺族をいう。
3 この法律において「犯罪被害者等のための施策」とは、犯罪被害者等が、その受けた被害を回復し、又は軽減し、再び平穏な生活を営むことができるよう支援し、及び犯罪被害者等がその被害に係る刑事に関する手続に適切に関与することができるようにするための施策をいう。


これらの内容は、法律を読んでいくうえでの基本知識となりますので、きちんと押さえておきましょう。

それでは、選択肢の解説に入っていきます。

① 犯罪被害者等のための施策は、犯罪被害者等が被害を受けたときから3年間までの間に講ぜられる。

こちらは第3条(基本理念)の規定を見ていきましょう。


  1. すべて犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する。
  2. 犯罪被害者等のための施策は、被害の状況及び原因、犯罪被害者等が置かれている状況その他の事情に応じて適切に講ぜられるものとする。
  3. 犯罪被害者等のための施策は、犯罪被害者等が、被害を受けたときから再び平穏な生活を営むことができるようになるまでの間、必要な支援等を途切れることなく受けることができるよう、講ぜられるものとする。

本選択肢は上記の第3号をもとに作られていると考えられますね。

犯罪被害者等への施策は「犯罪被害者等が、被害を受けたときから再び平穏な生活を営むことができるようになるまでの間、必要な支援等を途切れることなく受けることができるよう、講ぜられるもの」とされていますね。

ですから、本選択肢の「3年間」という限定は正しくないことがわかります。

犯罪の規模や衝撃によって、被害者等が「再び平穏な生活を営むことができるようになるまで」の期間を一概に述べることはできませんが、少なくとも3年間というのは短すぎますし、そもそも支援は途切れることなく続けられることが必要であることは言うまでもありませんね。

よって、選択肢①が誤りと判断でき、こちらを選択することになります。

② 犯罪被害者等が心理的外傷から回復できるよう、適切な保健医療サービスや福祉サービスを提供する。

こちらは第14条(保健医療サービス及び福祉サービスの提供)を見ていきましょう。


国及び地方公共団体は、犯罪被害者等が心理的外傷その他犯罪等により心身に受けた影響から回復できるようにするため、その心身の状況等に応じた適切な保健医療サービス及び福祉サービスが提供されるよう必要な施策を講ずるものとする。


このように、本選択肢の内容がそのまま記載されていることがわかりますね。

よって、選択肢②は正しいと判断でき、除外することになります。

③ 犯罪被害者等のための施策は、国、地方公共団体、その他の関係機関、民間の団体等との連携の下、実施する。

こちらについては、まず前文の最後に以下のような記載があります。


犯罪被害者等のための施策の基本理念を明らかにしてその方向を示し、国、地方公共団体及びその他の関係機関並びに民間の団体等の連携の下、犯罪被害者等のための施策を総合的かつ計画的に推進するため、この法律を制定する。


こちらがそもそもの本法律の制定理念ということになりますね。

このほか、本選択肢と関連がありそうな箇所を抜き出しておきましょう。


第4条(国の責務)国は、前条の基本理念(次条において「基本理念」という。)にのっとり、犯罪被害者等のための施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

第5条(地方公共団体の責務)地方公共団体は、基本理念にのっとり、犯罪被害者等の支援等に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

第7条(連携協力)国、地方公共団体、日本司法支援センター(総合法律支援法第十三条に規定する日本司法支援センターをいう)その他の関係機関、犯罪被害者等の援助を行う民間の団体その他の関係する者は、犯罪被害者等のための施策が円滑に実施されるよう、相互に連携を図りながら協力しなければならない。


本選択肢の内容は、これらの条項を踏まえて作成されたものであると考えられます。

本選択肢の内容と矛盾がないことがわかりますね。

よって、選択肢③は正しいと判断でき、除外することになります。

④ 刑事事件の捜査や公判等の過程における犯罪被害者等の負担が軽減されるよう、専門的知識や技能を有する職員を配置する。

こちらは第19条(保護、捜査、公判等の過程における配慮等)を見ていきましょう。


国及び地方公共団体は、犯罪被害者等の保護、その被害に係る刑事事件の捜査又は公判等の過程において、名誉又は生活の平穏その他犯罪被害者等の人権に十分な配慮がなされ、犯罪被害者等の負担が軽減されるよう、犯罪被害者等の心身の状況、その置かれている環境等に関する理解を深めるための訓練及び啓発、専門的知識又は技能を有する職員の配置、必要な施設の整備等必要な施策を講ずるものとする。


このように、本選択肢の内容が記載されていることがわかりますね。

よって、選択肢④は正しいと判断でき、除外することになります。

⑤ 教育・広報活動を通じて、犯罪被害者等が置かれている状況や、犯罪被害者等の名誉や生活の平穏への配慮について国民の理解を深める。

こちらは第20条(国民の理解の増進)を見ていきましょう。


国及び地方公共団体は、教育活動、広報活動等を通じて、犯罪被害者等が置かれている状況、犯罪被害者等の名誉又は生活の平穏への配慮の重要性等について国民の理解を深めるよう必要な施策を講ずるものとする。


このように、選択肢の内容が記載されていることがわかりますね。

よって、選択肢⑤は正しいと判断でき、除外することになります。

2件のコメント

  1. いつもお世話になっております。

    「すべて犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する。」
    これは大切なことだと思います。
    一方、冤罪被害者の扱いはどうでしょうか。何十年も獄中に居られて、やっと無実とされる方が居られます。
    https://www.nichibenren.or.jp/activity/criminal/deathpenalty/q12/enzaiex.html

    冤罪は、ある意味では国家による犯罪の面もあるかと思います。
    しかし、無実が証明されるだけで「犯罪被害者等基本法」の対象にはならないという理解で宜しいでしょうか。

    1. コメントありがとうございます。

      >冤罪は、ある意味では国家による犯罪の面もあるかと思います。しかし、無実が証明されるだけで「犯罪被害者等基本法」の対象にはならないという理解で宜しいでしょうか。

      これに対する解答は明快で、あくまでも「犯罪被害者等基本法」に基づくのみです。
      第二条 この法律において「犯罪等」とは、犯罪及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす行為をいう。
      2 この法律において「犯罪被害者等」とは、犯罪等により害を被った者及びその家族又は遺族をいう。

      >冤罪は、ある意味では国家による犯罪の面もあるかと思います。
      試験において「ある意味」のように独自の解釈によって解き進めることに価値はありません。
      法律が定める「定義」に基づき、解いていくだけです。
      本問においては、あくまでも「犯罪被害者等基本法」の定義に基づいて考えていくだけで良いと思います。

      試験とは切り離した形で、ご提示の事柄について思索される分には大切なことでしょう。
      お返事になっていれば幸いです。

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