公認心理師 2024-119

再犯の防止等の推進に関する法律に関する問題です。

これは知らないと解けない内容になっていますね。

問119 再犯の防止等の推進に関する法律において、国が講ずるとされている施策に該当しないものを1つ選べ。
① 街頭補導
② 就労支援
③ 住居の確保
④ 更生保護施設に対する援助
⑤ 保健医療サービス及び福祉サービスの提供

選択肢の解説

① 街頭補導
② 就労支援
③ 住居の確保
④ 更生保護施設に対する援助
⑤ 保健医療サービス及び福祉サービスの提供

「再犯の防止等の推進に関する法律」は公認心理師試験で初めて出題される法律ですから、目的などから確認しておきましょう。

この法律は「国民の理解と協力を得つつ、犯罪をした者等の円滑な社会復帰を促進すること等による再犯の防止等が犯罪対策において重要であることに鑑み、再犯の防止等に関する施策に関し、基本理念を定め、国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、再犯の防止等に関する施策の基本となる事項を定めることにより、再犯の防止等に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民が犯罪による被害を受けることを防止し、安全で安心して暮らせる社会の実現に寄与すること」を目的としています(第1条より)。

そして、言葉の定義としては以下のようにしています。

  • 犯罪をした者等:犯罪をした者又は非行少年若しくは非行少年であった者。
  • 再犯の防止等:犯罪をした者等が犯罪をすることを防ぐこと(非行少年の非行をなくすこと及び非行少年であった者が再び非行少年となることを防ぐことを含む)。

この辺は一般的に用いられている意味とほぼ同じと考えて良さそうですね。

さて、この法律において国が講ずるとされている施策に関しては以下の通りになります(「第二章 基本的施策 第一節 国の施策」に載っている条項になります)。


(特性に応じた指導及び支援等)
第十一条 国は、犯罪をした者等に対する指導及び支援については、矯正施設内及び社会内を通じ、指導及び支援の内容に応じ、犯罪をした者等の犯罪又は非行の内容、犯罪及び非行の経歴その他の経歴、性格、年齢、心身の状況、家庭環境、交友関係、経済的な状況その他の特性を踏まえて行うものとする。
2 国は、犯罪をした者等に対する指導については、犯罪の責任等の自覚及び被害者等の心情の理解を促すとともに、円滑な社会復帰に資するものとなるように留意しなければならない。

(就労の支援)
第十二条 国は、犯罪をした者等が自立した生活を営むことができるよう、その就労を支援するため、犯罪をした者等に対し、その勤労意欲を高め、これに職業上有用な知識及び技能を習得させる作業の矯正施設における実施、矯正施設内及び社会内を通じた職業に関する免許又は資格の取得を目的とする訓練その他の効果的な職業訓練等の実施、就職のあっせん並びに就労及びその継続に関する相談及び助言等必要な施策を講ずるものとする。

(非行少年等に対する支援)
第十三条 国は、少年が可塑性に富む等の特性を有することに鑑み、非行少年及び非行少年であった者が、早期に立ち直り、善良な社会の一員として自立し、改善更生することを助けるため、少年院、少年鑑別所、保護観察所等の関係機関と学校、家庭、地域社会及び民間の団体等が連携した指導及び支援、それらの者の能力に応じた教育を受けられるようにするための教育上必要な支援等必要な施策を講ずるものとする。

(就業の機会の確保等)
第十四条 国は、国を当事者の一方とする契約で国以外の者のする工事の完成若しくは作業その他の役務の給付又は物品の納入に対し国が対価の支払をすべきものを締結するに当たって予算の適正な使用に留意しつつ協力雇用主(犯罪をした者等の自立及び社会復帰に協力することを目的として、犯罪をした者等を雇用し、又は雇用しようとする事業主をいう。第二十三条において同じ。)の受注の機会の増大を図るよう配慮すること、犯罪をした者等の国による雇用の推進その他犯罪をした者等の就業の機会の確保及び就業の継続を図るために必要な施策を講ずるものとする。

(住居の確保等)
第十五条 国は、犯罪をした者等のうち適切な住居、食事その他の健全な社会生活を営むために必要な手段を確保することができないことによりその改善更生が妨げられるおそれのある者の自立を支援するため、その自助の責任を踏まえつつ、宿泊場所の供与、食事の提供等必要な施策を講ずるとともに、犯罪をした者等が地域において生活を営むための住居を確保することを支援するため、公営住宅(公営住宅法(昭和二十六年法律第百九十三号)第二条第二号に規定する公営住宅をいう。)への入居における犯罪をした者等への特別の配慮等必要な施策を講ずるものとする。

(更生保護施設に対する援助)
第十六条 国は、犯罪をした者等の宿泊場所の確保及びその改善更生に資するよう、更生保護施設の整備及び運営に関し、財政上の措置、情報の提供等必要な施策を講ずるものとする。

(保健医療サービス及び福祉サービスの提供)
第十七条 国は、犯罪をした者等のうち高齢者、障害者等であって自立した生活を営む上での困難を有するもの及び薬物等に対する依存がある者等について、その心身の状況に応じた適切な保健医療サービス及び福祉サービスが提供されるよう、医療、保健、福祉等に関する業務を行う関係機関における体制の整備及び充実を図るために必要な施策を講ずるとともに、当該関係機関と矯正施設、保護観察所及び民間の団体との連携の強化に必要な施策を講ずるものとする。

(関係機関における体制の整備等)
第十八条 国は、犯罪をした者等に対し充実した指導及び支援を行うため、関係機関における体制を整備するとともに、再犯の防止等に係る人材の確保、養成及び資質の向上のために必要な施策を講ずるものとする。

(再犯防止関係施設の整備)
第十九条 国は、再犯防止関係施設(矯正施設その他再犯の防止等に関する施策を実施する施設をいう。以下この条において同じ。)が再犯の防止等に関する施策の推進のための重要な基盤であることに鑑み、再犯防止関係施設の整備を推進するために必要な施策を講ずるものとする。

(情報の共有、検証、調査研究の推進等)
第二十条 国は、再犯の防止等に関する施策の効果的な実施に資するよう、関係機関が保有する再犯の防止等に資する情報を共有し、再犯の防止等に関する施策の実施状況及びその効果を検証し、並びに犯罪をした者等の再犯の防止等を図る上で効果的な処遇の在り方等に関する調査及び研究を推進するとともに、それらの結果等を踏まえて再犯の防止等に関する施策の在り方について検討する等必要な施策を講ずるものとする。

(社会内における適切な指導及び支援)
第二十一条 国は、犯罪をした者等のうち社会内において適切な指導及び支援を受けることが再犯の防止等に有効であると認められる者について、矯正施設における処遇を経ないで、又は一定期間の矯正施設における処遇に引き続き、社会内において指導及び支援を早期かつ効果的に受けることができるよう、必要な施策を講ずるものとする。

(国民の理解の増進及び表彰)
第二十二条 国は、再犯の防止等に関する施策の重要性について、国民の理解を深め、その協力を得られるよう必要な施策を講ずるものとする。
2 国は、再犯の防止等の推進に寄与した民間の団体及び個人の表彰に努めるものとする。

(民間の団体等に対する援助)
第二十三条 国は、保護司会及び協力雇用主その他民間の団体又は個人の再犯の防止等に関する活動の促進を図るため、財政上又は税制上の措置等必要な施策を講ずるものとする。


以上が、国が講ずるとされる施策ですが、けっこうな数がありますね。

少しわかりにくいので、上記の施策を内容別に分けてみましょう。

【再犯防止に向けた教育・職業訓練の充実等】
1 特性に応じた指導及び支援等(第11条)
2 就労の支援(第12条)
3 非行少年等に対する支援(第13条)

【社会における職業・住居の確保等】
4 就業の機会の確保等(第14条)
5 住居の確保等(第15条)
6 更生保護施設に対する援助(第16条)
7 保健医療サービス及び福祉サービスの提供(第17条)

【再犯防止推進の人的・物的基盤の整備】
8 関係機関における体制の整備等(第18条)
9 再犯防止関係施設の整備(第19条)

【再犯防止施策推進に関する重要事項】
10 情報の共有、検証、調査研究の推進等(第20条)
11 社会内における適切な指導及び支援(第21条)
12 国民の理解の増進及び表彰(第22条)
13 民間の団体等に対する援助(第23条)

上記の通り、就労支援、住居の確保、更生保護施設に対する援助、保健医療サービス及び福祉サービスの提供は国が講ずるとされている施策に含まれていることがわかります。

ですから、選択肢②、選択肢③、選択肢④および選択肢⑤は該当すると判断でき、除外することになります

なお、選択肢①の街頭補導とは、少年警察活動規則によると「道路その他の公共の場所、駅その他の多数の客の来集する施設又は風俗営業の営業所その他の少年の非行が行われやすい場所において、前条に規定する少年を発見し、必要に応じその場で、これらに第十三条第一項、第十四条第一項、第三十六条第一項、第三十八条第一項又は第三十九条第一項に規定する措置を執る活動」を指します。

上記の内容に含まれている条項は以下の通りです。


第十三条 非行少年については、当該少年に係る事件の捜査又は調査のほか、その適切な処遇に資するため必要な範囲において、時機を失することなく、本人又はその保護者に対する助言、学校その他の関係機関への連絡その他の必要な措置をとるものとする。

第十四条 不良行為少年を発見したときは、当該不良行為についての注意、その後の非行を防止するための助言又は指導その他の補導を行い、必要に応じ、保護者(学校又は職場の関係者に連絡することが特に必要であると認めるときは、保護者及び当該関係者)に連絡するものとする。

第三十六条 被害少年については、適切な助言を行う等必要な支援を実施するものとする。

第三十八条 要保護少年については、児童福祉法第二十五条第一項の規定による児童相談所への通告、同法第三十三条第一項又は第二項の規定による委託を受けて行う一時保護その他これらに類する保護のための措置の適切な実施のため、本人又はその保護者に対する助言、学校その他の関係機関への連絡その他の必要な措置を執るものとする。

第三十九条 児童虐待を受けたと思われる児童については、児童虐待の防止等に関する法律第六条第一項の規定による児童相談所への通告又は児童福祉法第三十三条第一項若しくは第二項の規定による委託を受けて行う一時保護の適切な実施のため、本人又はその保護者に対する助言、学校その他の関係機関への連絡その他の必要な措置を執るものとする。


こうした街頭補導は「再犯の防止等の推進に関する法律」において、国が講ずるとされている施策に該当しないことは前述の通りです。

よって、選択肢①が該当しないと判断でき、こちらを選択することになります。

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