公認心理師 2020-49

高齢者の犯罪に関する問題です。

犯罪白書をもとに解いていくことになります。

ちなみに2020年の試験に、2018年の資料に基づいた問題が出題されたということになりますから、今後は直近3年くらいの資料を把握しておくと良いのかもしれません。

問49 2018年(平成30年)の高齢者による犯罪について、誤っているものを1つ選べ。

① 刑務所入所時点で65歳以上である女性の罪名の80%以上が窃盗である。

② 刑法犯による検挙人員中に占める65歳以上の者の比率は、約10%である。

③ 刑法犯による検挙人員中に占める65歳以上の者の比率を男女別で比較した場合、男性よりも女性の方が大きい。

④ 窃盗による検挙人員の人口に占める比率を、20歳以上65歳未満と65歳以上とで比較した場合、後者の方が大きい。

解答のポイント

犯罪白書で示されている高齢者犯罪の傾向について把握していること。

必要な知識・選択肢の解説

本問は毎年政府から刊行されている「犯罪白書」をもとに作成されています。

犯罪白書は、犯罪の防止と犯罪者の改善更生を願って刑事政策の策定とその実現に資するため、それぞれの時代における犯罪情勢と犯罪者処遇の実情を報告し、特に刑事政策上問題となっている事柄を紹介する白書です。

犯罪白書は毎年副題があり、2018年は「進む高齢化と犯罪」についてまとめられています。

ちなみに当たり前ではありますが、2018年の犯罪白書でまとめられている結果は、その前年の犯罪について検証したものになっています(以下の記述で「2017年の~」という表現が多いと思いますので、念のため)。

過去の副題は以下の通りとなっています。

  • 2020年(令和2年):薬物犯罪
  • 2019年(令和元年):平成の刑事政策
  • 2018年(平成30年):進む高齢化と犯罪
  • 2017年(平成29年):更生を支援する地域のネットワーク
  • 2016年(平成28年):再犯の現状と対策のいま

これらは法務省のページから見ることができますので、目を通しておきましょう

以上を踏まえ、各選択肢の解説に入っていきます。

① 刑務所入所時点で65歳以上である女性の罪名の80%以上が窃盗である。

まずは犯罪白書に示されている以下の資料を見ていきましょう。

これは2017年における高齢者の刑法犯検挙人員の罪名別構成比を総数・男女別に見るとともに、これを年齢層別にまとめた資料です。

高齢者は、男女別、年齢層別のいずれの区分においても窃盗が過半数を占めています(ちなみに、非高齢者総数では45.0%)。

なお、窃盗は「万引き」と「万引き以外の窃盗」を合わせたものの呼称です。

特に女性は、万引きの割合が極めて高く、65歳~69歳の女性で69.5%(窃盗全体では86.7%)、70歳以上の女性では82.5%(窃盗全体では93.1%)を占めています。

選択肢①で問われている65歳以上の女性の罪名ですが、窃盗が80%を超えていることがわかりますね。

ただし、万引きだけで言えば65歳~69歳の女性で69.5%となっていますから、細やかに把握しておかねば混乱してしまいかねませんね(万引きだけで覚えている、などだと取りこぼす可能性がある)。

以上より、選択肢①は正しいと判断でき、除外することになります。

② 刑法犯による検挙人員中に占める65歳以上の者の比率は、約10%である。

年齢層別の刑法犯検挙人員及び高齢者率(総数及び女性の各刑法犯検挙人員に占める高齢者の比率)の推移(最近20年間)を総数・女性別に見ると以下のとおりになります。

この資料によると、刑法犯のうち高齢者が占める割合は21.5%であることがわかりますね。

1998年以降の高齢者の検挙人員は毎年増加して、2008年にピーク(4万8,805人)を迎え、その後は高止まりの状況にあって、2017年に4万6,264人(前年比1.5%減)となり1998年(1万3,739人)から約3.4倍に増加しています。

なお、このうち70歳以上の者は、2011年以降高齢者の検挙人員の65%以上を占めるようになって、2017年には68.4%に相当する3万1,636人(前年比0.1%増)となり1998年(6,840人)と比べて約4.6倍に増加しています。

このように、本選択肢にある「刑法犯による検挙人員中に占める65歳以上の者の比率は、約10%」は少なすぎる数字であることがわかりますね。

以上より、選択肢②は誤りと判断でき、こちらを選択することになります。

③ 刑法犯による検挙人員中に占める65歳以上の者の比率を男女別で比較した場合、男性よりも女性の方が大きい。

刑法犯検挙人員の人口比の推移(最近20年間)を総数・女性別に見るとともに、これを年齢層別に見ると以下の資料の通りになります。

総数における高齢者の刑法犯検挙人員の人口比は1998年以降、65~69歳の者では2006年まで、70歳以上の者では2007年まで、それぞれ上昇し、それ以後は、65~69歳の者では緩やかに低下し、70歳以上の者ではおおむね横ばいであり、高齢者の検挙人員が2006~2007年頃までは、これらの年齢層の人口の増加を上回る勢いで増加していたことが読み取れます。

1998年と比べると2017年には65~69歳の者が約1.5倍の147.4、70歳以上の者が約2.5倍の125.4にそれぞれ上昇したが、それでも20~64歳の者の202.1と比較すると低く、1998年以降20~64歳の者よりも低い傾向で推移しています。

しかし、女性高齢者の人口比は同様に1998年と比べると、2017年には65~69歳の女性が約1.3倍の75.2、70歳以上の女性が約2.5倍の77.2にそれぞれ上昇したが、65~69歳の者の人口比は2001年に、70歳以上の者の人口比は2012年に、それぞれ20~64歳の者の人口比を上回っており2017年も同年齢層の人口比(73.8)よりも高い状況にあります。

さて、本選択肢と関わる部分を抜き出してみていきましょう。

まず65歳~69歳の男女全体では147.4であるのに対し、女性だけで75.2に達しております。

また、70歳以上の男女全体では125.4であるのに対し、女性だけで77.2になっております。

いずれも女性が全体の半分を超えていることがわかりますから、本選択肢の「刑法犯による検挙人員中に占める65歳以上の者の比率を男女別で比較した場合、男性よりも女性の方が大きい」は、正しい内容であることがわかります。

よって、選択肢③は正しいと判断でき、除外することになります。

④ 窃盗による検挙人員の人口に占める比率を、20歳以上65歳未満と65歳以上とで比較した場合、後者の方が大きい。

選択肢①でも示したように、高齢者の犯罪で窃盗の割合はとても高いものになっています(男性であっても半分以上であることが、選択肢①で示した資料からわかります)。

高齢者の刑法犯検挙人員中の初犯者・再犯者人員及び再犯者率の推移(最近20年間)を主な罪名別に見るとともに、これを年齢層別に見られる資料が以下のものになります。

本選択肢で問われているのは「窃盗」についてですから、資料の④窃盗を見てみましょう。

20歳~64歳が85.9であるのに対し、65歳~69歳で91.1であり、70歳状になると96.2に達しています(ちなみに数字は、各年齢層10万人当たりの検挙人数です)。

つまり、窃盗での検挙人数を見たときに、65歳以上の検挙割合は、それよりも若年層のそれよりも高いことがわかります。

よって、選択肢④は正しいと判断でき、除外することになります。

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