公認心理師 2022-133

2006年の教育基本法改正で新設された条項に関する問題です。

教育に関する基本的な事項をまとめたのが教育基本法であり、より詳しい制度や仕組みなどについては学校教育法でまとめられていますね。

問133 2006年(平成18年)に改正された教育基本法で、新たに規定された事項として、正しいものを2つ選べ。
① 社会教育
② 政治教育
③ 教育の機会均等
④ 生涯学習の理念
⑤ 学校、家庭及び地域住民等の相互の連携教育

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解答のポイント

2006年の教育基本法改正で新設された条項を把握している。

選択肢の解説

① 社会教育
② 政治教育
③ 教育の機会均等

教育基本法は、その名のとおり、日本の教育に関する根本的・基礎的な法律です。

教育に関するさまざまな法令の運用や解釈の基準となる性格を持つことから「教育憲法」と呼ばれる場合もあります。

2006年(平成18年)12月22日に公布・施行された現行の教育基本法は、1947年(昭和22年)公布・施行の教育基本法(昭和22年法律第25号)の全部を改正したものになります。

ここで挙げた選択肢については、2006年の教育基本法改正前から規定されていた内容になります。


(教育の機会均等)
第四条 すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。
2 国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。
3 国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない。

(社会教育)
第十二条 個人の要望や社会の要請にこたえ、社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない。
2 国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館その他の社会教育施設の設置、学校の施設の利用、学習の機会及び情報の提供その他の適当な方法によって社会教育の振興に努めなければならない。

(政治教育)
第十四条 良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない。
2 法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。


これらは元々規定されていた事項になります。

まず「教育の機会均等」ですが、こちらは憲法の「第14条第1項:すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」および「第26条第1項:すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」を具現化したものになります。

そして「社会教育」ですが、こちらは教育基本法第2条(教育の目標)を受け、学校のみならず、社会のあらゆる場所で教育が実施されうるようにする必要があるとする趣旨から、社会教育が重要であることを前提として、一般に社会において行われる教育を尊重し、国及び地方公共団体がこれを積極的に奨励する方策を講ずべきこと(第1項)、及び国及び地方公共団体が自ら社会教育を行う場合の方法を示した(第2項)ものになります。

「政治教育」の状況ですが、第1項は民主主義を実現するためには、国民の政治的教養と政治道徳の向上が必要であることを踏まえ、政治教育において最も尊重されるべき事項を規定するものであり、 第2項は学校教育における政治教育の限界を示し、特定の党派的政治教育を禁止することにより、教育の政治的中立を確保しようとするものになります。

なお、18歳が選挙権を有するようになった際、高校での政治教育をどうするかは難しいところだと感じました。

彼ら・彼女らの「政治的成熟」を目指していくことがより喫緊の課題として示されたことになるわけですが、肝心の教師側が「自身の政治的立場を明らかにすることはできない」という縛りが教育基本法にはあるわけです。

もちろん、教育が政治的中立を保つことは大切ですから、この中立性を保つという縛りの中でどう工夫するかが教員に求められる事項と言えるでしょうね。

宗教と政治は家庭の話題としてそぐわないことも多いので、子どもたちがどこで政治的成熟を深めていくのか難しい課題だと思っています。

いずれにせよ、ここで挙げた事項については、2006年の教育基本法改正前から規定されていた内容になります。

よって、選択肢①、選択肢②および選択肢③は誤りと判断できます。

④ 生涯学習の理念
⑤ 学校、家庭及び地域住民等の相互の連携教育

これらについては2006年の教育基本法改正で新たに規定された事項になります。


(生涯学習の理念)
第三条 国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。

(学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力)
第十三条 学校、家庭及び地域住民その他の関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに、相互の連携及び協力に努めるものとする。


これら以外にも新設された条項はあり、「大学:第7条」「私立大学:第8条」「家庭教育:第10条」「幼児期の教育:第11条」「教育振興基本計画:第17条」などになります。

もちろん、元々あった条項の内容が修正されている、追加されているというのもありますが、それらは省くことにしましょう。

詳しい内容については、文部科学省のこちらのページをご参照ください。

「生涯学習の理念」については、科学技術の進歩や社会構造の変化,高齢化や自由時間の増大などに伴って重要となっているということで新たに規定されたという経緯があります。

また「学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力」については、子どもに関わる教育は、学校や家庭での教育だけではなく、社会の様々な世代の様々な主体が、多様な形で教育に関わることで、働くことや自立すること、社会への参画、文化の伝承など、多様な姿を子どもたちに示すことができ、「生きる力」が高められていくとして設けられました。

細かいことを言うようですが、おそらく選択肢⑤の「学校、家庭及び地域住民等の相互の連携教育」というのは「学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力」の誤植だと思います(「受傷機転or起点」もありましたね)。

以上より、選択肢④および選択肢⑤が2006年の教育基本法改正で新たに規定された事項として正しいと判断できます。

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