公認心理師 2021-146

いじめ対応の基本を踏まえた事例対応に関する問題です。

ちなみに私はこの問題、間違えましたし、その間違えた理由とこの問題に関する印象は解説で述べています。

問146 30歳の女性A、小学4年生の担任教師。Aは、2学期開始から10日後、同じ小学校のスクールカウンセラーである公認心理師Bに次のように相談した。Aが担任をしている学級では、1学期の終わり頃から児童Cが悪口を言われており、休むこともあったという。2学期になっても、C への悪口が続いており、登校しづらくなっている。
 いじめ対応の基本を踏まえて、Bが最初に確認することとして、最も適切なものを1つ選べ。
① 学級経営の方針
② Cの合計欠席日数
③ 小学校周辺の地域の状況
④ Aの児童全般への関わり方
⑤ 学級における児童全体の様子

解答のポイント

いじめ対応の基本とは何かを考える。

その上で、正しいと思うものを選択する。

選択肢の解説

③ 小学校周辺の地域の状況

本問の解説では、いじめ対応と遠いところから解説していきましょう。

まず学校で起こっているいじめ問題について「小学校周辺の地域の状況」から確認していくというのは迂遠な感じを受ける人が多いだろうと思いますし、事実その通りだと思います。

わざわざ「小学校周辺の地域の状況」という選択肢が入っている理由の一つとして、「チーム学校:チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申)」があると思います。

この中では「社会に開かれた教育課程において地域との関係性に触れている」「「チームとしての学校」の範囲として地域を含めている」ということが見られ、地域と一緒になって学校を作っていくという視点があります。

こうした点から、いじめ対応についても「小学校周辺の地域の状況」を踏まえるということはわからなくもないのですが、本事例の状況ではもっと切羽詰まった状態と見なすべきです。

「小学校周辺の地域の状況」に関する見立てや確認については、第1次予防のレベルで行うべきことであると考えられます。

具体的には、新興住宅地が近くにある場合、住民間の人間関係が希薄であったり、文化の違う地域から流れてきているということから、親の人間関係・子どもの人間関係に影響が出てくることがあります(実感として、新しい住宅地があると、いろいろな問題が出やすい傾向があります)。

少なくとも、本事例の状況で行う対応とは言えなさそうですね。

もう少し詳しい資料も見ていきましょう。

文部科学省の「学校におけるいじめ問題に関する基本的認識と取組のポイント」では「家庭・地域社会との連携」が以下のように定められています。

  1. いじめの問題については、学校のみで解決することに固執してはならないこと。学校においていじめを把握した場合には、速やかに保護者及び教育委員会に報告し、適切な連携を図ること。保護者等からの訴えを受けた場合には、まず謙虚に耳を傾け、その上で、関係者全員で取組む姿勢が重要であること。
  2. 学校におけるいじめへの対処方針、指導計画等の情報については、日頃より、積極的に公表し、保護者等の理解や協力を求めるとともに、各家庭でのいじめに関する取組のための具体的な資料として役立ててもらえるような工夫が必要であること。
  3. いじめ等に関して学校に寄せられる情報に対し、誠意を持って対応すること。
    また、いじめの問題に関し学校と保護者や地域の代表者との意見交換の機会を設ける、特にPTAと学校との実質的な連絡協議の場を確保するなどにより、家庭・地域社会との連携を積極的に図る必要があること。
  4. 実際にいじめが生じた際には、個人情報の取扱いに留意しつつ、正確な情報提供を行うことにより、保護者や地域住民の信頼を確保することが重要であり、事実を隠蔽するような対応は許されないこと。

このように、いじめに関しての地域社会との連携では、情報を共有すること、普段からいじめの取組について協力してもらうこと、いじめの情報に対応すること、いじめがあった場合は正確な情報提供を行うこと、が示されています。

これらを見ても、地域社会との連携については、いじめが生じたときの各児童への対応の中で語られるよりも、予防や普段の関わり、正確な情報提供という枠組みで語られることが多いです。

以上より、小学校周辺の地域の状況を確認するのは対応としては優先度が低いと考えられます。

よって、選択肢③は不適切と判断できます。

① 学級経営の方針

新学習指導要領における学級経営の位置づけとして注目されるのが「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」です。

こちらで示されている「学級」の主な役割としては…

  • 子供たちが様々な体験活動を通じて、生命の有限性や自然の大切さ、自分の価値を認識しつつ他者と協働することの重要性などを、実感しながら理解できるようにする
  • 全ての学校や学級に、発達障害を含めた障害のある子供たちが在籍する可能性があることを前提に、子供たち一人一人の障害の状況や発達の段階に応じて、その力を伸ばしていく
  • 教科書や教員の説明、様々な資料等から新たな知識を得たり、事象を観察して必要な情報を取り出したり、自分の考えをまとめたり、友達の思いを受け止めながら自分の思いを伝えたり、学級で目的を共有して協働したりすることができる

…などが示されています。

学級経営とは、こうした学級の役割を踏まえ、学級における教育活動の目標を最も有効に展開し実現するため、教師が教育活動全般の計画を立案・運営していくことを指します。

また学級は児童・生徒の人間的な成長の場でもあることから、学級経営は授業を中心とした教育活動目標達成のための条件整備だけでなく、学級でのすべての活動を包括したものと言えます。

また、文部科学省の「学校におけるいじめ問題に関する基本的認識と取組のポイント」では「いじめを許さない学級経営等」が以下のように定められています。

  1. 児童生徒の成長にとって必要な場合もあるといった考えは認められないものであり、個々の教師がいじめの問題の重大性を正しく認識し、危機意識を持って取り組まなければならないこと。
    また、教師の何気ない言動が児童生徒に大きな影響力を持つことに十分留意すし、いやしくも、教職員自身が児童生徒を傷つけたり、他の児童生徒によるいじめを助長したりするようなことがないよう留意すること。
  2. グループ内での児童生徒の人間関係の変化を踏まえ、学級経営やグループ指導の在り方、わけても班別指導について不断の見直しや工夫改善を行う必要があること。
  3. いじめが解決したと見られる場合でも、教職員の気づかないところで陰湿ないじめが続いていることも少なくないことを認識し、そのときの指導により解決したと即断することなく、当該児童生徒が卒業するまで、継続して十分な注意を払い、折に触れて必要な指導を行うこと。

このように、いじめ対応において、学級経営は重要なものであることが窺えますね。

このように見れば、学級経営の中にいじめの対応は大枠では含まれていると見なすことができます。

ですが、選択肢③と同じく、本事例の時点で学級経営の方針を聞くというのは、最初に確認することとしては迂遠だと考えられ、もっとCの支援に直接的に関わるような動きが必要だと考えられます。

上記からもわかる通り、学級経営は、普段からいじめが生じにくいような学級風土を形成する等の視点において重要であろうと考えられ、その点から第1次予防に属するような事柄だろうと考えられます。

以上より、選択肢①は不適切と判断できます。

④ Aの児童全般への関わり方

担任であるAの「児童全般への関わり方」を確認するということは、特にいじめ状況に限らず、Aが児童に対してどのように関わっていたかをざっくりと聞くということになるでしょう。

もちろん、普段のAの関わりの中にいじめを助長するような言動があったり、いじめを見逃すようなことがあったなら、それは問題であると言えますし、改善すべきと言えます。

ですが、本選択肢の「児童全般への関わり方」という表現だと、そうしたいじめに関する確認ではないということですから、既にいじめが行われている確率が高い本問の状況では、やや的外れな確認事項であると言えそうです。

Aは「1学期の終わり頃から児童Cが悪口を言われており、休むこともあったという。2学期になっても、C への悪口が続いており、登校しづらくなっている」ということを認知していたにも関わらず、SCへの相談が「2学期開始から10日後」とあり、かなり対応が遅いと言えますし、その点は改善を促していくことも考えねばなりません。

担任として、もう少し危機感を以って対応してほしいというのが正直なところですが、それを本事例の時点で言ってもCのサポートになるわけではありませんし、これからいじめ状況に対応してもらうだろうAの士気を落としすぎるのも考えものです。

何より、こうしたAのいじめ対応に関する稚拙さは、SCではなく管理職から行われるべきものですから、この時点でAの過去の対応に関して話題にするというのは得策ではないでしょう。

このように、本事例の時点で「Aの児童全般への関わり方」を確認するのは、Cへのサポートにはなりにくいと考えられます。

よって、選択肢④は不適切と判断できます。

⑤ 学級における児童全体の様子

さて、この辺から本格的にいじめ対応と関連する選択肢に入ってきました(この前までの選択肢は、いじめ対応としてCのサポートになり得ないものばかりでしたね)。

ここではまず、本問の条件として据えられている「いじめ対応の基本を踏まえて」という表現の意味について考えてみましょう。

まず「学校におけるいじめ問題に関する基本的認識と取組のポイント」で示されている「いじめ問題に関する基本的認識」を参照にします。

  1. 「弱いものをいじめることは人間として絶対に許されない」との強い認識を持つこと。
    どのような社会にあっても、いじめは許されない、いじめる側が悪いという明快な一事を毅然とした態度で行きわたらせる必要がある。いじめは子どもの成長にとって必要な場合もあるという考えは認められない。また、いじめをはやし立てたり、傍観したりする行為もいじめる行為と同様に許されない。
  2. いじめられている子どもの立場に立った親身の指導を行うこと。
    子どもの悩みを親身になって受け止め、子どもの発する危険信号をあらゆる機会を捉えて鋭敏に感知するよう努める。自分のクラスや学校に深刻ないじめ事件が発生し得るという危機意識を持つ。なお、いじめの件数が少ないことのみをもって問題なしとすることは早計である。
  3. いじめは家庭教育の在り方に大きな関わりを有していること。
    いじめの問題の解決のために家庭が極めて重要な役割を担う。いじめの問題の基本的な考え方は、まず家庭が責任を持って徹底する必要がある。家庭の深い愛情や精神的な支え、信頼に基づく厳しさ、親子の会話や触れ合いの確保が重要である。
  4. いじめの問題は、教師の児童生徒観や指導の在り方が問われる問題であること。
    個性や差異を尊重する態度やその基礎となる価値観を育てる指導を推進する。道徳教育、心の教育を通してかけがえのない生命、生きることの素晴らしさや喜びなどについて指導することが必要である。
  5. 家庭・学校・地域社会など全ての関係者がそれぞれの役割を果たし、一体となって真剣に取り組むことが必要であること。
    いじめの解決に向けて関係者の全てがそれぞれの立場からその責務を果たす必要がある。地域を挙げた取組も急務である。

本問と関わる上では2の「いじめられている子どもの立場に立った親身の指導を行うこと」が、「いじめ対応の基本」である可能性がありますが、この資料には「いじめ対応の基本」と明確に表現した箇所は存在しません。

他にも「いじめの防止等のための基本的な方針(平成25年10月11日文部科学大臣決定(最終改定 平成29年3月14日))」を見ておきましょう。

上記の資料にも、明確に「いじめ対応の基本」と記載された箇所はありませんが、重大事態に関する事柄が載っていますので、そちらを述べておきましょう。

  • いじめにより児童生徒の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき:児童生徒が自殺を企図した場合等
  • いじめにより児童生徒が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき:不登校の定義を踏まえ年間30日を目安とし、一定期間連続して欠席しているような場合などは、迅速に調査に着手
    ※ 児童生徒や保護者からいじめられて重大事態に至ったという申立てがあったとき:重大事態が発生したものとして報告・調査等にあたる

これらは概要であり、詳しくは「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」に載っています。

そもそも上記の重大事態に関しては、いじめ防止対策推進法の第28条に規定された内容で、詳しくは以下の通りです。


いじめの重大事態の定義は「いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき」(同項第1号。以下「生命心身財産重大事態」という)、「いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき」(同項第2号。以下「不登校重大事態」という)とされている。改めて、重大事態は、事実関係が確定した段階で重大事態としての対応を開始するのではなく、「疑い」が生じた段階で調査を開始しなければならないことを認識すること。


本事例の状況では、上記の「不登校重大事態」に該当する可能性がありますね。

上記の通り、いくつかの資料を見てみましたが、明確に「いじめ対応の基本」について述べたものはありませんでした。

ですから、何をもって「いじめ対応の基本」と捉え、SCが「最初に確認すること」を同定することになるのか不明です。

おそらく、本問の正答が選択肢②であることを踏まえれば、「Cが陥っている状況が、不登校重大事態に該当するか否かを確認せよ」という論理で解答の説明になるのでしょう。

ただ、私はこの考え方に明確に同意できない理由があります(こちらについては次の選択肢の解説で述べます)。

ですから、私は本選択肢を正答と考えております。

ただし、実践の立場からすれば本選択肢も「最初に確認すること」ではないという意見ですから、私にとって本問は「正答なし」ですが、あえて選ぶとするならば「選択肢⑤」になるということです。

公式からの解答が出ているので、本選択肢が不適切であるという現実は変わりませんが、私が本問で設定された選択肢の中で、なぜ本選択肢が「一番マシ」だと感じたかを述べておきましょう。

まず、そもそもの「いじめ対応の基本」という前提ですが、上記の通り、明確な資料がない以上、こちらで暫定的に設定するとしたら「いじめを受けていると思われるCの支援になること」で考えていこうと思います。

私がなぜ本選択肢が最も「いじめの対応として望ましい」と感じたかを述べていきましょう。

中井久夫先生は論文「いじめの政治学」の中で、いじめを人間奴隷化のプロセスと捉え、それが以下の3つの段階を経て完成していくとしました。

  1. 孤立化:いじめの対象を孤立させること。被害者に立ち直るチャンスを与えず、ずっといじめるためには、その子どもを孤立させることが効果的となる。
  2. 無力化:いじめの対象を無力にしていくこと。孤立しただけでは力を失っていない被害者に対して、大幅に力を奪っていく。被害者に「反撃は一切無効だ」と思わせるあらゆる対応が取られる。
  3. 透明化:周囲からいじめが見えなくなること。被害者の世界は加害者の一挙手一投足に支配される。時には被害者が加害者側に加わらされることもあり、被害者が被害者であるというアイデンティティも奪われる。

私が「学級における児童全体の様子」を「Bが最初に確認すること」として挙げたのは、上記のような段階を踏まえたときに、学級ではどういうことが生じているかを確認するためです。

孤立化の段階なのか、無力化の段階なのか、もしかしたら透明化の段階に至っているのか。

そのいずれかによって、Cが置かれている状況や対応の規模もかなり変わってくると言えます。

もしかしたら反論の中に、「そんな一論文の知見を引用して、それが正しいと捉えるのは無理がある」というものがあるかもしれませんが、それは間違いです。

上記の中井先生の「いじめの政治学」は、いじめ自死事件についての優れた報告書として知られる大津市の第三者調査委員会調査報告書で「少年は「透明化」の段階に達していた」と援用されているものです。

私自身もいじめ第三者委員会の責任者の一端を担っておりますが、この大津市の報告書は専門家として一読しておくと良いと思います(大津市のサイトから請求できるはず。有料ですが)。

このような公的な引用もされていますから「多くある知見の一つに過ぎない」と切り捨てることはできないと私は考えていますし、上記のような段階を把握することが、Cのいじめ状況を正しくアセスメントする上で非常に重要なことであるとわかるはずです。

このような知識や理解を以って、私は本選択肢が最も適切なものであると判断したわけです。

とは言え、公式では本選択肢は「不適切」もしくは「最も適切ではない」とされております。

その理由を、次の選択肢の解説で考えていきましょう。

② Cの合計欠席日数

さて、本選択肢が公式発表で正答と確定しております。

私は本選択肢を正答とする理由がよくわからなかったので、「本選択肢が正答であるという前提で、逆引きによって理屈を見つける」ことにしました。

それで出てきたのが、以下の重大事態であるかどうかの判断になります。

  • いじめにより児童生徒の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき:児童生徒が自殺を企図した場合等
  • いじめにより児童生徒が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき:不登校の定義を踏まえ年間30日を目安とし、一定期間連続して欠席しているような場合などは、迅速に調査に着手
    ※ 児童生徒や保護者からいじめられて重大事態に至ったという申立てがあったとき:重大事態が発生したものとして報告・調査等にあたる

特にCの場合、太字にしてある、いわゆる「不登校重大事態」であるか否かの判断が求められます。

Cの欠席については「Aが担任をしている学級では、1学期の終わり頃から児童Cが悪口を言われており、休むこともあったという。2学期になっても、Cへの悪口が続いており、登校しづらくなっている」とあるだけで、具体的な欠席日数については明らかになっていません。

よって、「Cの合計欠席日数」を把握することで、本事例が重大事態であるか否かの判断をすることが「いじめ対応の基本」であると、本問では捉えていると考えられます。

本件が重大事態であると認識されたら、以下のようなことが必要になります。

  • 学校は、重大事態が発生した場合(いじめにより重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき。以下同じ。)、速やかに学校の設置者を通じて、地方公共団体の長等まで重大事態が発生した旨を報告する義務が法律上定められている(法第29条から第32条まで)。この対応が行われない場合、法に違反するばかりでなく、地方公共団体等における学校の設置者及び学校に対する指導・助言、支援等の対応に遅れを生じさせることとなる。
  • 学校が、学校の設置者や地方公共団体の長等に対して重大事態発生の報告を速やかに行うことにより、学校の設置者等により、指導主事、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーをはじめとする職員の派遣等の支援が可能となる。重大事態の発生報告が行われないことは、そうした学校の設置者等による支援が迅速に行われず、事態の更なる悪化につながる可能性があることを、学校の設置者及び学校は認識しなければならない。
  • 重大事態の発生報告を受けた学校の設置者は、職員を学校に派遣するなどして、適切な報道対応等が行われるよう、校長と十分協議を行いながら学校を支援すること。

すなわち、重大事態と認識されれば地方公共団体の長等まで報告する義務が生じるというわけですね。

こうした対応の判断のためにも、本問が重大事態であるか否かを明確にするために「Cの合計欠席日数」を聞いていくということになります。

以上より、選択肢②が適切と判断されるということになります。

上記の説明が、おそらく公式側が想定している解説になるのでしょう。

こうした解説の正当性を理解しつつも、やはり私は「最初に確認すること」として「Cの合計欠席日数」になるのは素直に頷けないところがあります。

その理由を概ね2点挙げておきましょう。

まず1点目。

上述の通り、本選択肢が正解であることを踏まえれば、重大事態であるか否かの判断が重要であると考えられるわけですが、この点について疑問を感じます。

なぜなら本事例の状況は「Aが担任をしている学級では、1学期の終わり頃から児童Cが悪口を言われており、休むこともあったという。2学期になっても、C への悪口が続いており、登校しづらくなっている」という学校側がいじめによってCが休んでいることを明確に認識しているわけです。

もちろん、「30日」「一定期間連続して欠席」「児童生徒や保護者からいじめられて重大事態に至ったという申立て」などの条件が明らかになっていない以上、制度的には重大事態と見なすことができないのかもしれません。

ですが、本事例の状況において、学校がいじめへの対応を迅速に行わないということはあり得ず、「重大事態であるか否か」「学校の設置者や地方公共団体の長等に対して重大事態発生の報告」よりも、Cの現況についてもっと詳しく聞くことが「最初に確認すること」ではないかと思うのです。

続いて2点目で、これは臨床の基本の話です。

私は臨床の基本は「利他の姿勢」「惻隠の情」であると思っています。

「惻隠の情」とは、井戸に落ちそうな子どもを見たときに、はっと身体が動く感じがある、そういうことが自然に起こる、という背景にある心であり、相手の立場に立ってものごとを感じとるという感覚上の自然の性格の発露であるとされています。

本事例において「Cさんは、今どうしてるんですか?」と現況を気にかけるのが支援者として最も自然な反応であると考えられ、私がそういう確認が「最初に確認すること」であると考えていますし、こうした「惻隠の情」をもって関わるというのがいじめも含めたあらゆる支援の基本であろうと思います(だから、本問の前提の「いじめ対応の基本を踏まえて」もこちらに含まれると考えている)。

これはCさんの立場で眺めてみたらわかりやすいと思います。

Cさんから見て、第一声が「Cさんは、今どうしてるんですか?」と本人の安否や状態を気にかけるような声を発する支援者と、第一声が重大事態であるか否かを問う「制度的な確認」である支援者なら、どちらに支援してほしいかは一目瞭然ではないでしょうか。

私は、こういう状況において「クライエントの安否・状態の確認」よりも「制度的な確認」が先に来るというのは、どうしても肌に合いません。

おそらく「制度的な確認」をする人も「欠席状況を確認しながら、Cの状態も併せて確認できる」と反論するでしょうが、クライエントの安否は「ついで」ではダメなんです。

支援者として何を一番先に持ってくるか、何を第一に考えるのか、という根っこの話をしていると私は考えています。

色々述べはしましたが、結局のところ、本問の正答に関する私の違和感の根源はここにあります。

ですから、私が現場で最初に確認するのは、「Cさんは今日、来てるんですか?」「どんな様子なんです?」という今現在のCさんの状態です。

そういう風に体が勝手に動いて、その後で制度的な事柄の確認などが入ってくるというのが、臨床実践の中で染み付いている私の手順ということになります。

このような点から、私はどう考えても選択肢②を正答と見なすことができない気持ちでいます。

私が試験を受けていたら、おそらく選択肢⑤を選んでいたでしょう(これはこれで第一選択ではないのですが、Cの状況を心配するという動機が背景にある感じがする)。

重大事態という視点に思い至っても、つまり、間違えることも覚悟して選択肢②は選ばないということになります。

受験生の皆さんはマネしないように。

4件のコメント

  1. 先生、初めまして。
    Gルートで第4回を受験した、高校の教頭です。初挑戦で、不合格でした。
    各サイトの解答速報や振り返りを見ても、議論百出の問題であり、この先の支援等を考えたら、正直、公式の解答には異議を唱えたいです。本番では2を選んでラッキーだったという感じです。
    しかし、いじめの重大事態を想定した欠席日数の確認は、管理職目線の人が一発で出す答えであり、解答を(問題を)作った人のがそのような目線であったと推察しています。私が教頭としてこの事案を持って来られたら最初に聞くのは2かな、と想像します。

    いじめが発生すると管理職は教育委員会から厳しい追及を受けます。報告書も50ページ以上になるものを提出させられ、疲弊します。その辺の苦労を察しての管理職目線の解答なら世間の理解が進むことが期待できてありがたいのですが、SCが最初に確認する事としては違和感を拭えません。

    公認心理師試験の勉強に対する先生の考え方に深く賛同し、第5回へ向けて勉強しています。詳細な解答作成の労作業に敬服し、感謝いたします。これからもよろしくお願いします。

    1. はじめまして。
      コメントありがとうございます。

      高校の教頭先生なのですね。
      私の本日の勤務校も高校でした。
      ふだん、管理職の先生方とお会いする時間がないほど面接続きですが、非常に好意的に私の活動を捉えていただいており、有難い限りです。

      本問に関しては、さまざまな意見があるところだろうと思います。
      が、私の意見は本解説に集約されています。
      選択肢②が正答であることに異論はありませんが、やはり「正しいけど非人情」という印象が強いです。

      >いじめが発生すると管理職は教育委員会から厳しい追及を受けます。報告書も50ページ以上になるものを提出させられ、疲弊します。
      本当に大変だと思います。
      管理職の先生方もそうですが、我々心理職も組織の危機管理について理解しておく必要があると思います。

      >公認心理師試験の勉強に対する先生の考え方に深く賛同し、第5回へ向けて勉強しています。
      お仕事の傍ら、大変だろうと思いますが頑張ってください。
      私もコツコツと解説をしていきましょう。

      それではまた。

  2. はじめまして。
    第四回試験Gルートで受験しました通級指導教室担当教諭です。
    おかげさまで一発合格できました。
    うまく表現できないのですが,「本サイトの存在なしでは果たせなかった」ことです。心より感謝申し上げます。
    本問の正答について,過去には学級担任として「30歳女性A教諭」と同じような道(私は男性ですが)を通ってきた経験と,現在は通級指導教室の担当者として若手中堅の学級担任の先生方と接する日常から感じることを少々。
    通級指導を受ける児童生徒はしばしば集団生活での対人トラブルを抱えています。彼らが不本意なこととはいえ問題行動を起こす場合もありますし,逆に有形無形の非難を浴びて登校渋りに至る事態も散見されます。本人の問題行動が「ハラスメント」として扱われたり,逆に周囲による非難が「集団いじめ」として扱われたりする場合があり,しばしば水掛け論に発展します。
    さて本問のように,学級担任さんが「いじめ不登校」の問題をどなたかに「相談」した際に,最初に問われることが「学級における児童全体の様子」というのは,「学級経営の実態」を問われているのと実感的に大差ないのではないかという印象を持っております。
    学級担任ごとの個人差はあろうかと思いますが,「いきなりそこを訊かれるか?」とドキドキされる方や的確に説明できない方も少なくないように思います。
    仮に私だったら…ということで考えてみると,最初にお尋ねするのは
    「1.どんな悪口? 一対一?複数?それとも不特定多数?」
    というところから入ってから
    「2.欠席状況は? 今日はどうです?」と続けるかな…と。
    1.のような問いを選択肢⑤ととらえる考え方もあったのかもしれません。私の場合は,結果論ですが1.は「本問の選択肢にない」と判断し,「だったら順位繰り上げで2.選択肢②」と考えたと記憶しています。
    「欠席状況は?」という質問に対しては,相談をしてこられた学級担任の立場やキャリアからすると,あらかじめ出席簿がご準備されていて,「こんな感じなんですけど」という反応が返ってくることが予測できます。そこからさらに「もうちょっと詳しいことを訊いていいですか?」という具合に対話が進展していくイメージがあります。
    というわけで,相談者である学級担任の立場やキャリアを考慮に入れた場合,選択肢②は案外「答えやすい」もので,「最初に確認する」こととしては,悪くないのではないかなと考えました。
    以上,一教諭の私見としてどうぞお笑いください。
    これからも引き続き,本サイトの記事を拝読しながら精進していきたいと思います。

    1. コメントありがとうございます。

      >うまく表現できないのですが,「本サイトの存在なしでは果たせなかった」ことです。心より感謝申し上げます。
      こちらこそ有難いです。

      >最初に問われることが「学級における児童全体の様子」というのは,「学級経営の実態」を問われているのと実感的に大差ないのではないかという印象を持っております。
      学級担任ごとの個人差はあろうかと思いますが,「いきなりそこを訊かれるか?」とドキドキされる方や的確に説明できない方も少なくないように思います。

      解説内でも述べた通り、私は本問の選択肢の中では「学級における児童全体の様子」を問いますし、その理由も解説内で述べた通りです。
      そして、私の臨床では「学級における児童全体の様子」を問うときには、必ずその問いの背景にあること、すなわち孤立化・無力化・透明化についても伝えた上で問うことになります。

      臨床においては「問いかけが相手にどのように解釈されるか」ということまで含めて考えて質問する必要があります。
      ですから、「学級経営の実態」を問われているように感じるという意見に関しては、少なくとも私の実践では当てはまることはありません。
      とは言え、本問は私の実践について述べる場ではないので、あくまでも「制度的に欠席日数を尋ねる」ということに対する忌避感から消去法的に「学級における児童全体の様子」を選択していると思っておいてください。

      そして、言い換えれば「C子への支援」という前提に基づいた質問であれば、様々なものがあり得るだろうと考えています(本問はその前提が崩れているという認識)。
      ご提示いただいた質問もあり得るでしょうし、それ以外の質問もあり得るでしょう。
      どれが最も効果的であるかは状況によって様々ですが、腕が良いほど質問が的確で多くの情報を得るものになるでしょうね。

      >相談者である学級担任の立場やキャリアを考慮に入れた場合,選択肢②は案外「答えやすい」もので,「最初に確認する」こととしては,悪くないのではないかなと考えました。

      その質問が「C子への支援の意欲」が動因としてなされていれば問題ないです。

      解説を読んでもらえればわかると思いますが、私は「欠席日数について問うこと自体」を否定しているわけではありません。
      その質問がC子への支援の感情に基づいてなされていれば、そしてその質問がC子の支援に重要なものであるという見立てに基づいていれば、なされるべき質問であると考えています。

      あくまでも本問において「欠席日数について問うこと」を選ばないのは、それが私の臨床家としての姿勢に起因します。
      試験問題ですから仕方ありませんが、こういう状況で「制度的な確認を最優先」と取られるような対応を解答とすることに、どうしようもない嫌悪感が私にはあるのです。

      お返事になっていれば幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です