公認心理師 2020-25

心理教育的援助サービスに関する問題です。

過去問でも類似の内容が出題されていますし、第1回の試験からテーマになりやすい領域であると言えますね。

問25 学校心理学における心理教育的援助サービスの考え方について、最も適切なものを1つ選べ。

① 心理面の援助を中心に行う。

② スクールカウンセラーが単独で援助する。

③ スクールカウンセラーに援助を求める子どもを対象とする。

④ 非行をする子どもなど、援助ニーズの高い子どもを対象とする。

⑤ スクールカウンセリング活動は、学校教育の一環として位置づけられる。

解答のポイント

心理教育的援助サービスの基本的事項(対象、内容、担い手など)を理解していること。

選択肢の解説

① 心理面の援助を中心に行う。
② スクールカウンセラーが単独で援助する。
⑤ スクールカウンセリング活動は、学校教育の一環として位置づけられる。

石隈は、学校における教育相談を学校教育の一環としての「心理教育的援助サービス」と捉えています。

心理教育的援助サービスとは、一人ひとりの児童生徒の学習面、心理・社会面、進路面及び健康面における問題状況の解決を援助し、児童生徒の成長を促進することを目指すものです。

これらについて詳しく述べると以下の通りです。

  1. 学習面
    学習面での援助サービスとは、児童生徒の学習面における問題解決の援助です。学習意欲の促進、児童生徒の学習状況(学習習慣、学力、学習スタイルなど)の理解、学習スキルの獲得、学習計画の立案の援助、基礎学力の獲得などが含まれます。学習は個人的な経験であると同時に、教師や級友とのかかわり合いがある社会的な経験でもあります。学習面での問題は、心理・社会面・進路面・健康面との関係も深いため、児童生徒への援助として欠かせません。
  2. 心理・社会面
    心理・社会面での援助サービスとは、児童生徒の感情・認知・行動や自尊感情に関する援助、児童生徒の友人・教師・家族との関係や学級などの集団への適応といった他者との関わりにかんする援助を指します。
    心理面では、児童生徒の情緒的な苦悩の軽減、自己理解の促進、自己に対する効力感の獲得・向上、ストレスへの対処と対処法の獲得について援助します。
    社会面では、友人や学級、学校への適応の促進、人間関係の理解、対人関係の問題の解決、対人関係スキルの獲得などについて援助していきます。
  3. 進路面
    進路面での援助サービスとは、進学先などの決定の基盤になる生き方や生きる方向の選択の援助のことを指します。進路面の代表的な教育課題として「学習や遊び場面で自分の行動について選択する・自分の得意なものや楽しめるものを見つける・学級活動を通して役割をもつ意味を知る・進学について決定する」が挙げられており、これらの取り組みの状況に応じて援助を行っていきます。児童生徒の好きなこと・ものや趣味などの興味・関心、価値観、得意なことなどについての情報を集め、検討し援助していきます。
  4. 健康面
    健康面での援助サービスとは、児童生徒の心身の健康の状況についての理解の促進や、健康問題の解決の援助を指します。心理・社会的な問題が身体的な問題として表れることも当然あり得ます(心身相関の考え方からすれば自明)。

児童生徒の発達を援助する学校教育活動の基盤となる学校心理学は、心理学と学校教育を統合し、双方の領域にかかわる多くの分野の理論・モデル、知識、方法によって支えられています。

この「心理教育的援助サービス」の担い手として挙げられるのは、学級担任、心理教育的援助サービスの役割をもつ教師やそれに関連する者、そしてスクールカウンセラーの3つの職種となります。

学級担任は、児童生徒の学校の問題を援助することが求められています。

学級の責任者である学級担任は、学級運営や教科指導、学級活動の促進を通して、子どもの学習面、心理・社会面、健康面、進路面の問題を援助します。

教師は子どもに起こるほぼすべてのことに対応することが求められているため、問題が起きたときにはしばしば保護者と連絡を取り、どのようなサポートをするかという計画を立てる必要があります。

また、学校には役割上、心理教育的援助サービスを中心的に行うことが期待されている教師がいます。

特に、教育相談、生徒指導、進路指導の部門に所属する教師は、学校内で心理教育的援助サービスを提供することが求められています(例えば、教育相談は「生徒指導部会」の中に含まれていることが多いですね)。

加えて、特別支援教育を担当する教師や養護教諭も教育職として、その業務の中で心理教育的援助サービスを行うことを強く求められています。

具体的に各役割で行うことを挙げていきましょう。

生徒指導や教育相談を担当する教師は、児童生徒に対してガイダンスや教育相談を積極的に行うことが求められています。

進路指導を担当する教師は、児童生徒や学級担任に進路の情報を提供することが求められています。

そして、学級担任は児童生徒の進路選択を話し合うために一人ひとりの児童生徒と面談します。

特別支援教育担当の教師は、特別支援教育クラスを担任すると同時に、発達障害を有する児童生徒で通常学級に在籍する子どもを援助するため、通常学級の教師と話し合いを持つことがあります。

養護教諭は、児童生徒が心身の健康上の問題に取り組むことを援助します。

最後にスクールカウンセラーの役割について述べましょう。

スクールカウンセラーの業務として挙げられているのが、児童生徒のカウンセリング、教師や保護者へのコンサルテーション、教師の研修などのサービスです。

実際のスクールカウンセラーの業務は、そのスクールカウンセラーが受けてきたトレーニングや経験、学校がスクールカウンセラーに求める事項によって、スクールカウンセラーの提供するサービスは心理教育的援助から治療的援助までさまざまということになります。

スクールカウンセラー事業は2001年度から政府の補助金のもと、地方自治体が中心となって始まりました。

すなわち、日本における学校の心理教育的サービスは、教師を中心に長く行われてきたところに、近年になってスクールカウンセラーが加わったということになりますね。

以上のように、心理教育的援助サービスでは「一人ひとりの児童生徒の学習面、心理・社会面、進路面及び健康面における問題状況の解決を援助し、児童生徒の成長を促進することを目指す」ことになります。

この内容の幅広さを見ればわかるとおり、心理教育的援助サービスは学校教育の一環として行われていることが明白です。

そして、この担い手は「学級担任、心理教育的援助サービスの役割をもつ教師やそれに関連する者、そしてスクールカウンセラーの3つの職種」ということになります。

よって、選択肢①および選択肢②が不適切と判断できます。

また、選択肢⑤が適切と判断できます。

③ スクールカウンセラーに援助を求める子どもを対象とする。
④ 非行をする子どもなど、援助ニーズの高い子どもを対象とする。

本選択肢は、心理教育的援助サービスにおける一次的援助サービス~三次的援助サービスの3段階に関する理解が問われています。

以下に詳しく述べていきましょう。

一次的援助サービスとは「すべての子ども」を対象に行われる発達促進的、予防的援助サービスを指します。

予防的援助サービスは、ある場面で多くの生徒が出会う問題を予測して前もって援助することを指し、発達促進的サービスは、生徒の一般的な適応能力(学習スキル、対人関係能力等)野発達を促進するサービスを指します。

分かる授業づくり、安心して安全に過ごせる学級づくり、SST、ストレスマネジメント学習、自殺予防プログラムなどの心の健康教育などです。

一次的援助サービスの主役は教師であり、SCはコンサルテーションを通して教師を援助することになります。

二次的援助サービスは、登校しぶり、学習意欲の低下、孤立など、学校生活で苦戦している、もしくは転校生などの苦戦する可能性が高い「一部の子ども」を対象に行います。

ここでは、早期発見・早期対応が鍵となります。

二次的援助サービスでも教師が重要になってきますが、SCはコンサルテーションを行ったり、必要に応じてその生徒の援助チームを結成するように勧めます。

重篤化を予防する支援をこれらの援助チームと共に行います。

三次的援助サービスは、不登校、いじめ、非行、虐待などの問題状況によって特別な援助ニーズを持つ「特定の子ども」を対象に行われます。

一人ひとりの子どもの問題状況は異なるため、それぞれの子どもの状況について心理アセスメントを行い、具体的な援助を組み立てながら問題の解決にあたります。

教育・援助目標(長期の目標、短期の目標)を立ててそれを達成するための教育計画を作り実践していきます。

教師や保護者、SSWなどの他職種によるチーム援助が必要となり、それぞれの立場で力を尽くすことが求められます。

このように、心理教育的援助サービスは「すべての子ども」を対象として行われており(一次的援助サービス)、援助を求めている子どもだけに限定されるものではありません。

心理的問題は、当人にその緊急性が正しく認識されているとは限りませんので「援助を求めている子ども」に支援を限定すると、本当に支援が必要な児童生徒に支援が行き届かない恐れがあります。

また「非行をする子どもなど、援助ニーズの高い子どもを対象とする」のですが(三次援助サービス)、そこだけに限定されるものではないということですね。

よって、選択肢②は不適切であり、選択肢③の内容は誤りではないが不十分ということで適切とは言えないと判断できます。

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