公認心理師 2019-43

問43は教育基本法に規定されている教育の目標についての内容です。
教育とはどういった営みなのか、に関する法律上の規定ということですね。
教育とは何ぞやということに関しては、学校で勤務する全ての人が考えておかねば(考え続けなければ)ならないテーマです。

問43 教育基本法第2条に規定される教育の目標として、誤っているものを1つ選べ。
①勤労を重んずる態度を養う。
②自主及び自律の精神を養う。
③豊かな情操と道徳心を養う。
④個性に応じて進路を選択する能力を養う。
⑤他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う。

教育の目標について考えるとき、どうしても「なぜ学ぶのか」ということも考えることになります。
これらに対する自分なりの回答をもっているか否かは、子どもたちへの支援の在り方の基盤になってきます。

こうした回答を考えていく上でのポイントは「子どもに理解できるような単純な論理であってはならない」ということです。
「なぜ学ぶのか」について子どもに理解できるように伝えられる論理を使えば、間違いなくその子どもの学びへの意欲は下がります。
その理路は長くなるので省きますが「そういうもの」なのです。

解答のポイント

教育基本法に規定されている教育の目標を把握していること。
各領域の根拠法における「目的」「目標」に規定されている内容を基にして、自身の臨床活動の基盤となる考え方を養う習慣を持っていること。

教育基本法第2条の「教育の目標」

教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。

  1. 幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。
  2. 個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと
  3. 正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
  4. 生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。
  5. 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。

選択肢の解説

①勤労を重んずる態度を養う。
②自主及び自律の精神を養う。
③豊かな情操と道徳心を養う。
⑤他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う。

上記の通り、これらについては規定されていることが確認できます。
「培う」が「養う」になっていることくらいは問題のない範囲と見てよいですよね。

このようなことがなぜ重要なのか、おそらく多くの大人は細やかに説明できないと思いますし、それで良いのです。
大人(本当の意味での大人)に求められることは、これらを「論理的に説明すること」ではなく「これらの大切さを知っていること」です。

以上より、選択肢①、選択肢②、選択肢③および選択肢⑤は正しいと判断できるので、除外することが求められます。

④個性に応じて進路を選択する能力を養う。

上記の通り、こちらについては規定されていないことがわかります。
明らかにこの選択肢だけ「進路を選択する能力」という「具体的な目標」であることがわかりますね。
具体的な目標が、子どもたちが大人になっていく上で欠かせない「教育の全体的目標」になりにくいことは多くの方が納得できると思います。

ではこの選択肢がどこから引用されてのか調べてみましょう。
学校教育法第21条には「義務教育として行われる普通教育は、教育基本法(平成十八年法律第百二十号)第五条第二項に規定する目的を実現するため、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする」とされ、以下の各号が規定されています。

  1. 学校内外における社会的活動を促進し、自主、自律及び協同の精神、規範意識、公正な判断力並びに公共の精神に基づき主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
  2. 学校内外における自然体験活動を促進し、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこと。
  3. 我が国と郷土の現状と歴史について、正しい理解に導き、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度を養うとともに、進んで外国の文化の理解を通じて、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
  4. 家族と家庭の役割、生活に必要な衣、食、住、情報、産業その他の事項について基礎的な理解と技能を養うこと。
  5. 読書に親しませ、生活に必要な国語を正しく理解し、使用する基礎的な能力を養うこと。
  6. 生活に必要な数量的な関係を正しく理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。
  7. 生活にかかわる自然現象について、観察及び実験を通じて、科学的に理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。
  8. 健康、安全で幸福な生活のために必要な習慣を養うとともに、運動を通じて体力を養い、心身の調和的発達を図ること。
  9. 生活を明るく豊かにする音楽、美術、文芸その他の芸術について基礎的な理解と技能を養うこと。
  10. 職業についての基礎的な知識と技能、勤労を重んずる態度及び個性に応じて将来の進路を選択する能力を養うこと。

これら各号の基盤となっている教育基本法第5条第2項は「義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする」というものです。
このように本選択肢の内容は、学校教育法で定められている義務教育の目標と言えますね。


ちなみに、教育基本法は「教育とはこういうものである」という理念について定めたものであり、学校教育法は「学校はどのように教育するか」ということについて述べてあります
ですから、学校教育法の方がやや具体的な内容に踏み込んでいると言えるでしょう。
学校教育法になると学校の設置基準や授業料などにも言及しており、社会的にこのような組織であるということが示されています。
これらの違いを知っておくだけで、実は本問は正解を導くことが可能ですね。

以上より、選択肢④が誤りと判断でき、こちらを選択することが求められます。

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