公認心理師 2024-70

事例状況を踏まえ、刑事施設が特別調整の中で優先的に連携する機関を選択する問題です。

各機関の特徴を掴んでおきましょう。

問70 67歳の男性A、刑事施設に入所中。Aは、軽度の知的障害があることが分かっている。若い頃から窃盗を繰り返しており、最近も執行猶予中にもかかわらず、スーパーマーケットから食料品等を万引きし、その結果、懲役1年の刑に処せられた。家族や親族はAの受け入れを拒否しており、Aの社会的自立は困難と予想されている。
 このような場合、今後、Aが出所して社会生活に戻る際に、刑事施設が特別調整の中で優先的に連携する機関として、最も適切なものを1つ選べ。
① 福祉事務所
② ハローワーク
③ 精神保健福祉センター
④ 就労継続支援A型事業所
⑤ 地域生活定着支援センター

選択肢の解説

⑤ 地域生活定着支援センター

高齢者・障害者の再犯防止のための施策として、総合対策の策定前の平成21年度から、法務省と厚生労働省の連携により、特別調整が実施されています。

特別調整とは、高齢又は障害を有し、かつ、適当な帰住先のない受刑者や少年院在院者に対して、釈放後速やかに福祉関係機関等による適切な介護、医療、年金等の福祉サービスを受けることができるようにするための特別の手続です。

この取組では、福祉関係機関等との効果的な連携が求められるところ、その中心となるのは、厚生労働省の地域生活定着促進事業により整備が進められた地域生活定着支援センターであり、この取組によって司法と福祉との多機関連携による支援が行われています。

この取組を通じて、刑事施設、少年院、保護観察所、地域生活定着支援センター等の多機関連携の体制が整えられ、出所者等の受皿の幅も広がりつつあります。

27年度においては、特別調整が終結した人員(少年を含む)は730人であり、その内訳(重複計上による)は、高齢者389人、知的障害者214人、精神障害者196人、身体障害者107人でした。

また、特別調整の結果、福祉施設等につながった人員は479人(取下げ及び死亡を除く終結人員中の71.2%)であり、その主な内訳は、民間住宅(83人)、障害者入所施設(77人)、医療機関(53人)、保護施設(53人)、介護保険施設(23人)などでした。

さて、上記からもわかる通り、本問のような状況において「刑事施設が特別調整の中で優先的に連携する機関」とは地域生活定着支援センターになるわけですが、この機関について詳しく述べていきましょう。

刑又は保護処分の執行のため矯正施設(刑務所、少年刑務所、拘置所及び少年院)に収容されている人のうち、高齢又は障害のため釈放後直ちに福祉サービスを受ける必要があるものの釈放後の行き場のない人等は、釈放後に必要な福祉サービスを受けることが困難です。

そのため、平成21年度から地域生活定着支援事業(現在は地域生活定着促進事業)が開始されました。

この事業では、高齢又は障害により、福祉的な支援を必要とする犯罪をした人等に対し、各都道府県の設置する地域生活定着支援センターが、保護観察所、矯正施設、留置施設、検察庁及び弁護士会といった刑事司法関係機関、地域の福祉関係機関等と連携・協働しつつ、刑事上の手続又は保護処分による身体の拘束中から釈放後まで一貫した相談支援を実施することにより、その社会復帰及び地域生活への定着を支援しています。

地域生活定着支援センターの主な業務については、次のとおりです。

  1. コーディネート業務:矯正施設を退所する予定の人の帰住地調整支援を行います。
  2. フォローアップ業務:矯正施設を退所した人を受け入れた施設等への助言等を行います。
  3. 被疑者等支援業務:被疑者、被告人の福祉サービス等の利用調整や釈放後の継続的な援助等を行います。
  4. 相談支援業務:犯罪をした人・非行のある人等への福祉サービス等についての相談支援を行います。
  5. 上記の業務を円滑かつ効果的に実施するための業務:関係機関等との連携及び地域における支援ネットワークの構築等

まとめると、地域生活定着促進事業は、高齢又は障害により、福祉的な支援を必要とする犯罪をした者等に対し、各都道府県の設置する「地域生活定着支援センター」が、保護観察所、刑務所、少年刑務所、拘置所、少年院、留置施設、検察庁及び弁護士会、地域の福祉関係機関等と連携・協働しつつ、刑事上の手続又は保護処分による身体の拘束中から釈放後まで一貫した相談支援を実施することにより、その社会復帰及び地域生活への定着を支援し、地域共生社会の実現を図るとともに、再犯防止対策に資することを目的としています。

なお、地域生活定着支援センターは、①保護観察所からの依頼に基づき、矯正施設の被収容者を対象として、福祉サービス等に係るニーズの確認等を行い、受入先となる社会福祉施設等のあっせんや福祉サービスの申請支援等を行うコーディネート業務、②そのあっせんにより特別調整対象者を受け入れた社会福祉施設等に対して、福祉サービスの利用等について助言等を行うフォローアップ業務、③刑務所出所者等の福祉サービスの利用等に関して、本人又はその他の関係者からの相談に応じて、助言や必要な支援を行う相談支援業務等を実施しています。

このように、特別調整は「(出院後)障害を有する者で、かつ、適当な帰住先がない受刑者等について、釈放後速やかに、必要な介護、医療、年金等の福祉サービスを受けることができるようにするための取組」ですから、適当な帰住先を確保を含めた取り組みを指しているわけですね。

以上より、事例のような状況において刑事施設が特別調整の中で優先的に連携する機関とは地域生活定着支援センターになります。

よって、選択肢⑤が適切と判断できます。

① 福祉事務所

上記の通り、事例のような状況において刑事施設が特別調整の中で優先的に連携する機関とは地域生活定着支援センターになるわけですが、他の選択肢に関しては機関の概要を解説していくことにしましょう。

福祉事務所とは、社会福祉法第14条に規定されている「福祉に関する事務所」を指します。

福祉六法(生活保護法、児童福祉法、母子及び寡婦福祉法、老人福祉法、身体障害者福祉法及び知的障害者福祉法)に定める援護、育成、更生の措置に関する事務を司る第一線の社会福祉行政機関となります。

1993年(平成5年)4月には老人及び身体障害者福祉分野で、2003年(平成15年)4月には知的障害者福祉分野で、それぞれ施設入所措置事務等が都道府県から町村へ移譲されたことから、都道府県福祉事務所では、従来の福祉六法から生活保護法、児童福祉法、母子及び父子並びに寡婦福祉法の三法を所管することとなりました。

都道府県及び市(特別区を含む)は設置が義務付けられており、町村は任意で設置することができます。

福祉事務所には、社会福祉法第15条に基づいて、次の職員が配置されています。

  • 所長:都道府県知事または市町村長の指揮監督を受けて、所務を掌理する。
  • 指導監督を行う所員(社会福祉主事):所長の指揮監督を受けて、現業事務の指導監督を司る。
  • 現業を行う所員(社会福祉主事):所長の指揮監督を受け、援護、育成、更生の措置を要する者の家庭を訪問、来所者に面接し、本人の資産・環境等を調査し、保護等の措置の必要性の有無及びその種類を判断し、本人に対し生活指導を行う等の事務を司る。
  • 事務を行う所員:所長の指揮監督を受けて、庶務を司る。

具体的には、援護などを必要とする人の家庭を訪問したり、面接によって本人の状況を調査し、保護措置の必要の有無およびその種類を判断したりするほか、生活指導などを行います。

以上より、選択肢①は不適切と判断できます。

② ハローワーク

ハローワーク(公共職業安定所)は、仕事を探している人や求人事業主の方に対して、さまざまなサービスを無償で提供する、国(厚生労働省)が運営する総合的雇用サービス機関です。

令和2年版 犯罪白書」の「就労支援」の項目には、以下の通り記載があります。


法務省は、受刑者等の出所時の就労の確保に向けて、刑事施設及び少年院に就労支援スタッフを配置するとともに、厚生労働省と連携し、刑務所出所者等総合的就労支援対策を実施している。この施策は、刑事施設、少年院、保護観察所及びハローワークが連携する仕組みを構築した上で、支援対象者の希望や適性等に応じ、計画的に就労支援を行うものであるが、その一環として、刑事施設では、支援対象者に対し、ハローワークの職員による職業相談、職業紹介、職業講話等を実施している。

また、刑務所出所者等の採用を希望する事業者が、矯正施設を指定した上でハローワークに求人票を提出することができる「受刑者等専用求人」が運用されており、事業者と就職を希望する受刑者とのマッチングの促進に努めている。


このように、ハローワークなどの公共職業安定所と連携し、出院後の就労先の確保のため就労支援を行っていることがわかりますね。

厚生労働省及び法務省は、2006年度(平成18年度)から、刑務所出所者等の就労の確保のため、刑務所出所者等総合的就労支援対策を実施しています。

この取組は、矯正施設在所者に対しては、ハローワークと矯正施設が連携して、本人の希望や適性等に応じて職業相談、職業紹介、事業主との採用面接及び職業講話等を実施するなどして計画的に支援を行うとともに、保護観察対象者等に対しては、ハローワーク職員が保護観察官とチームを作り、本人に適した就労支援の方法を検討した上で、職業相談・職業紹介を実施するものです。

上記のような取組は、受刑者等の出所時の就労の確保に向けて行われているものであり、特別調整という「高齢又は障害を有し、かつ、適当な帰住先のない受刑者や少年院在院者に対して、釈放後速やかに福祉関係機関等による適切な介護、医療、年金等の福祉サービスを受けることができるようにするための特別の手続」には該当しません。

よって、選択肢②は不適切と判断できます。

③ 精神保健福祉センター

精神保健福祉センターは、精神保健福祉法を根拠法としています。

条項は以下の通りです。


第六条 都道府県は、精神保健の向上及び精神障害者の福祉の増進を図るための機関(以下「精神保健福祉センター」という)を置くものとする。

2 精神保健福祉センターは、次に掲げる業務を行うものとする。
一 精神保健及び精神障害者の福祉に関する知識の普及を図り、及び調査研究を行うこと。
二 精神保健及び精神障害者の福祉に関する相談及び指導のうち複雑又は困難なものを行うこと。
三 精神医療審査会の事務を行うこと。
四 第四十五条第一項の申請に対する決定及び障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第五十二条第一項に規定する支給認定(精神障害者に係るものに限る)に関する事務のうち専門的な知識及び技術を必要とするものを行うこと。
五 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第二十二条第二項又は第五十一条の七第二項の規定により、市町村が同法第二十二条第一項又は第五十一条の七第一項の支給の要否の決定を行うに当たり意見を述べること。
六 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第二十六条第一項又は第五十一条の十一の規定により、市町村に対し技術的事項についての協力その他必要な援助を行うこと。


つまり、地域の人の精神的健康の向上及び精神障害者の福祉の増進を図るための総合機関として、各都道府県に設置されているのが精神保健福祉センターになります。

精神保健福祉センターは、1965年の精神衛生法改正に「精神衛生センター」(任意設置)として規定され、1987年の精神保健法への改正によって「精神保健センター」に、さらに1995年の「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下、精神保健福祉法)」への改正によって「精神保健福祉センター」に名称変更されました。

2002年には地方分権推進計画を踏まえて名称や組織が弾力化されるとともに、精神医療審査会の審査局等の行政事務を行うようになり、都道府県(指定都市)に必置の機関となりました。

「精神保健福祉センター運営要領」(2013年4月26日一部改正)には、精神保健福祉センターは、精神保健福祉法第6条に規定されているとおり、精神保健及び精神障害者の福祉に関する知識の普及を図り、調査研究を行い、並びに相談及び指導のうち複雑困難なものを行うとともに、精神医療審査会の事務並びに障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の申請に関する事務のうち専門的な知識及び技術を必要とするものを行う施設であって、都道府県(指定都市を含む)における精神保健及び精神障害者の福祉に関する総合的技術センターとして、地域精神保健福祉活動推進の中核となる機能を備えなければならない、とあります。

精神保健福祉センターの業務は以下の通りになります。

  1. 企画立案
  2. 技術指導及び技術援助
  3. 人材育成
  4. 普及啓発
  5. 調査研究
  6. 精神保健福祉相談
  7. 組織育成
  8. 精神医療審査会の審査に関する事務
  9. 自立支援医療(精神通院医療)及び精神障害者保健福祉手帳の判定

以上が精神保健福祉センターの概要ですが、こちらは特別調整という「高齢又は障害を有し、かつ、適当な帰住先のない受刑者や少年院在院者に対して、釈放後速やかに福祉関係機関等による適切な介護、医療、年金等の福祉サービスを受けることができるようにするための特別の手続」には該当しません。

よって、選択肢③は不適切と判断できます。

④ 就労継続支援A型事業所

就労移行支援事業所は「障害者総合支援法」に基づいて運営されている通所型の福祉サービスで、一般企業への就職を目指す障害者に対し、主に「職業訓練の提供」と「就職活動の支援」によって就職をサポートしています。

具体的には、職務に必要なスキル(ビジネスマナーなど)を身につけるためのプログラムが設定されてたり、自己管理に関する助言などが行われています。

ちなみに障害者総合支援法における就労系障害福祉サービスには、就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型、就労定着支援の4種類のサービスがあります。

  • 就労移行支援:就労を希望する障害者であって、一般企業に雇用されることが可能と見込まれる者に対して、一定期間就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行います。
  • 就労継続支援A型:一般企業に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が可能である者に対して、雇用契約の締結等による就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供を行います。
  • 就労継続支援B型:一般企業に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が困難である者に対して、就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供を行います。
  • 就労定着支援:就労移行支援等を利用して、一般企業に新たに雇用された障害者に対し、雇用に伴う生じる日常生活又は社会生活を営む上での各般の問題に関する相談、指導及び助言等の必要な支援を行います。

なお、就労移行支援事業所は、上記の「就労移行支援」に該当するものになりますね。

就労移行支援事業所を利用するために必要な条件は以下の4つで、すべての条件を満たしている必要があります。

  1. 一般企業で働くことを希望している人:就労継続支援A型やB型等の福祉的な支援を受ける就労を目指す場合は当てはまらない。
  2. 身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病などがあること:障害者手帳を持っていない人も医師の診断や自治体の判断によって利用できます。ただし、障害福祉サービス受給者証が必要。
  3. 18歳以上で満65歳未満の人:これは法律の範囲として定められています。
  4. 離職中の人(例外あり)

就労移行支援事業所の利用期間は原則2年以内で、賃金は支給されません。

なお、類似の機関として「就労継続支援事業所」がありますが、こちらは一般企業への就職が困難な人や、就労移行支援を利用しても就職につながらなかった人が利用可能な障害福祉サービスとなります(賃金が発生すること、利用期間の制限がないことなども違いですね)。

上記を踏まえれば、本事例の年齢は適用年齢を逸脱していますから、就労継続支援A型事業所が選択されるということはありません。

また、特別調整という「高齢又は障害を有し、かつ、適当な帰住先のない受刑者や少年院在院者に対して、釈放後速やかに福祉関係機関等による適切な介護、医療、年金等の福祉サービスを受けることができるようにするための特別の手続」に該当しないのは既に述べた通りですね。

よって、選択肢④は不適切と判断できます。

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