公認心理師 2024-117

児童相談所運営指針における児童相談所の基本的機能に関する問題です。

これは知らないと解きにくい内容だったと思いますね。

問117 こども家庭庁が示す児童相談所運営指針における、児童相談所の基本的機能に該当しないものを1つ選べ。
① 相談機能
② 措置機能
③ 一時保護機能
④ 自立支援機能
⑤ 市町村援助機能

選択肢の解説

① 相談機能
② 措置機能
③ 一時保護機能
④ 自立支援機能
⑤ 市町村援助機能

本問は子ども家庭庁等が出している「児童相談所運営指針」からの出題ですね。

その中の「児童相談所の基本的機能」を抜粋しましょう。


このように児童相談所は、相談援助活動の理念を実現するため、児童家庭相談に関する一義的な相談窓口である市町村との適切な協働・連携・役割分担を図りつつ、次の機能等を十分に発揮、活用し、その任務を果たしていく必要がある。

ア 基本的機能

(ア) 市町村援助機能
市町村による児童家庭相談への対応について、市町村相互間の連絡調整、市町村に対する情報の提供その他必要な援助を行う機能(法第12条第2項)
(イ) 相談機能
こどもに関する家庭その他からの相談のうち、専門的な知識及び技術を必要とするものについて、必要に応じてこどもの家庭、地域状況、生活歴や発達、性格、行動等について専門的な角度から総合的に調査、診断、判定(総合診断)し、それに基づいて援助指針(援助方針)を定め、自ら又は関係機関等を活用し一貫したこどもの援助を行う機能(法第12条第2項)
(ウ) 一時保護機能
必要に応じてこどもを家庭から離して一時保護する機能(法第12条第2項、第12条の4、第33条)
(エ) 措置機能
こども又はその保護者を児童相談所その他の関係機関若しくは関係団体の事業所若しくは事務所に通わせ当該事業所若しくは事務所において、又は当該こども若しくはその保護者の住所若しくは居所において、児童福祉司、児童委員(主任児童委員を含む。以下同じ。)、市町村、児童家庭支援センター等に指導させ、又はこどもを小規模住居型児童養育事業を行う者若しくは
里親(以下「里親等」という。)に委託し、又は児童福祉施設若しくは指定発達支援医療機関(以下「児童福祉施設等」という)に入所させ、若しくは委託する等の機能(法第26条、第27条(第32条による都道府県知事(指定都市又は児童相談所設置市の市長を含む)の権限の委任)


上記の通り、挙げられているのは「市町村援助機能」「相談機能」「一時保護機能」「措置機能」になります。

もちろん、これらの機能は児童福祉法に基づいたものになっていることが、上記の「法第〇条」という記述からも理解できると思います。

よって、選択肢①、選択肢②、選択肢③および選択肢⑤は児童相談所の基本的機能に該当するといえ、除外することになります。

選択肢④の「自立支援機能」は児童相談所の機能として定められていませんが、こちらは社会的養護の基本理念として掲げられているものになります。

「社会的養護の原理」を抜粋しておきましょう。


社会的養護は、これを必要とする子どもと家庭を支援して、子どもを健やかに育成するため、上記の基本理念の下、次のような考え方で支援を行う。

①家庭的養護と個別化
・すべての子どもは、適切な養育環境で、安心して自分をゆだねられる養育者によって、一人一人の個別的な状況が十分に考慮されながら、養育されるべきである。
・一人一人の子どもが愛され大切にされていると感じることができ、子どもの育ちが守られ、将来に希望が持てる生活の保障が必要である。
・社会的養護を必要とする子どもたちに「あたりまえの生活」を保障していくことが重要であり、社会的養護を地域から切り離して行ったり、子どもの生活の場を大規模な施設養護としてしまうのではなく、できるだけ家庭あるいは家庭的な環境で養育する「家庭的養護」と、個々の子どもの育みを丁寧にきめ細かく進めていく「個別化」が必要である。

②発達の保障と自立支援
・子ども期のすべては、その年齢に応じた発達の課題を持ち、その後の成人期の人生に向けた準備の期間でもある。社会的養護は、未来の人生を作り出す基礎となるよう、子ども期の健全な心身の発達の保障を目指して行われる。
・特に、人生の基礎となる乳幼児期では、愛着関係や基本的な信頼関係の形成が重要である。子どもは、愛着関係や基本的な信頼関係を基盤にして、自分や他者の存在を受け入れていくことができるようになる。自立に向けた生きる力の獲得も、健やかな身体的、精神的及び社会的発達も、こうした基盤があって可能となる。
・子どもの自立や自己実現を目指して、子どもの主体的な活動を大切にするとともに、様々な生活体験などを通して、自立した社会生活に必要な基礎的な力を形成していくことが必要である。

③回復をめざした支援
・社会的養護を必要とする子どもには、その子どもに応じた成長や発達を支える支援だけでなく、虐待体験や分離体験などによる悪影響からの癒しや回復をめざした専門的ケアや心理的ケアなどの治療的な支援も必要となる。
・また、近年増加している被虐待児童や不適切な養育環境で過ごしてきた子どもたちは、虐待体験だけでなく、家族や親族、友達、近所の住人、保育士や教師など地域で慣れ親しんだ人々との分離なども経験しており、心の傷や深刻な生きづらさを抱えている。さらに、情緒や行動、自己認知・対人認知などでも深刻なダメージを受けていることも少なくない。
・こうした子どもたちが、安心感を持てる場所で、大切にされる体験を積み重ね、信頼関係や自己肯定感(自尊心)を取り戻していけるようにしていくことが必要である。

④家族との連携・協働
・保護者の不在、養育困難、さらには不適切な養育や虐待など、「安心して自分をゆだねられる保護者」がいない子どもたちがいる。また子どもを適切に養育することができず、悩みを抱えている親がいる。さらに配偶者等による暴力(DV)などによって「適切な養育環境」を保てず、困難な状況におかれている親子がいる。
・社会的養護は、こうした子どもや親の問題状況の解決や緩和をめざして、それに的確に対応するため、親と共に、親を支えながら、あるいは親に代わって、子どもの発達や養育を保障していく包括的な取り組みである。

⑤継続的支援と連携アプローチ
・社会的養護は、その始まりからアフターケアまでの継続した支援と、できる限り特定の養育者による一貫性のある養育が望まれる。
・児童相談所等の行政機関、各種の施設、里親等の様々な社会的養護の担い手が、それぞれの専門性を発揮しながら、巧みに連携し合って、一人一人の子どもの社会的自立や親子の支援を目指していく社会的養護の連携アプローチが求められる。
・社会的養護の担い手は、同時に複数で連携して支援に取り組んだり、支援を引き継いだり、あるいは元の支援主体が後々までかかわりを持つなど、それぞれの機能を有効に補い合い、重層的な連携を強化することによって、支援の一貫性・継続性・連続性というトータルなプロセスを確保していくことが求められる。
・社会的養護における養育は、「人とのかかわりをもとにした営み」である。子どもが歩んできた過去と現在、そして将来をより良くつなぐために、一人一人の子どもに用意される社会的養護の過程は、「つながりのある道すじ」として子ども自身にも理解されるようなものであることが必要である。

⑥ライフサイクルを見通した支援
・社会的養護の下で育った子どもたちが社会に出てからの暮らしを見通した支援を行うとともに、入所や委託を終えた後も長くかかわりを持ち続け、帰属意識を持つことができる存在になっていくことが重要である。
・社会的養護には、育てられる側であった子どもが親となり、今度は子どもを育てる側になっていくという世代を繋いで繰り返されていく子育てのサイクルへの支援が求められる。
・虐待や貧困の世代間連鎖を断ち切っていけるような支援が求められている。


このように社会的養護の基本理念として「発達の保障と自立支援」が挙げられておりますから、社会的養護を統括する機関である児童相談所に自立支援という視点が無いわけではありません。

あくまでも、児童相談所の基本的機能として挙げられている中に、この「自立支援機能」というのが設定されていないだけであり、社会的養護全体の理念としては存在すると考えておきましょう。

よって、選択肢④が児童相談所の基本的機能として該当せず、こちらを選択することになります。

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