公認心理師 2024-113

精神保健福祉センターが行う業務に関する問題です。

明らかに誤っている選択肢が存在するので、正解しやすい内容でしたね。

問113 精神保健福祉センターが行う業務に該当しないものを1つ選べ。
① 自立支援医療の判定
② 保健所に対する技術指導
③ 精神医療審査会の行政事務
④ 精神保健に関する普及啓発
⑤ 不起訴処分の心神喪失者に対する処遇申立て

選択肢の解説

① 自立支援医療の判定
② 保健所に対する技術指導
③ 精神医療審査会の行政事務
④ 精神保健に関する普及啓発

精神保健福祉センターは、精神保健福祉法第6条に規定された都道府県(指定都市)の精神保健福祉に関する技術的中核機関であり、1965年の精神衛生法改正に「精神衛生センター」(任意設置)として規定され、1987年の精神保健法への改正によって「精神保健センター」に、さらに1995年の「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)」への改正によって「精神保健福祉センター」に名称変更されました。

2002年には地方分権推進計画を踏まえて名称や組織が弾力化されるとともに、精神医療審査会の審査局等の行政事務を行うようになり、都道府県(指定都市)に必置の機関となりました。

精神保健福祉センター運営要領」には、精神保健福祉センターは、精神保健福祉法第6条に規定されているとおり、精神保健及び精神障害者の福祉に関する知識の普及を図り、調査研究を行い、並びに相談及び指導のうち複雑困難なものを行うとともに、精神医療審査会の事務並びに障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)第53条第1項及び法第45条第1項の申請に関する事務のうち専門的な知識及び技術を必要とするものを行う施設であって、次により都道府県(指定都市を含む)における精神保健及び精神障害者の福祉に関する総合的技術センターとして、地域精神保健福祉活動推進の中核となる機能を備えなければならない、とあります。

上記の運営要領によると、精神保健福祉センターの業務は以下の通りです。

  1. 企画立案
    地域精神保健を推進するため、都道府県の精神保健福祉主管部局及び関係諸機関に対し、専門的立場から、社会復帰の推進方策や、地域における精神保健福祉施策の計画的推進に関する事項等を含め、精神保健福祉に関する提案、意見具申等をする。
  2. 技術指導及び技術援助
    地域精神保健福祉活動を推進するため、保健所、市町村及び関係諸機関に対し、専門的立場から、積極的な技術指導及び技術援助を行う。
  3. 人材育成
    保健所、市町村、福祉事務所、障害者総合支援法に規定する障害福祉サービスを行う事業所等その他の関係機関等で精神保健福祉業務に従事する職員等に、専門的研修等の教育研修を行い、技術的水準の向上を図る。
  4. 普及啓発
    都道府県規模で一般住民に対し精神保健福祉の知識、精神障害についての正しい知識、精神障害者の権利擁護等について普及啓発を行うとともに、保健所及び市町村が行う普及啓発活動に対して専門的立場から協力、指導及び援助を行う。
  5. 調査研究
    地域精神保健福祉活動の推進並びに精神障害者の社会復帰の促進及び自立と社会経済活動への参加の促進等についての調査研究をするとともに、必要な統計及び資料を収集整備し、都道府県、保健所、市町村等が行う精神保健福祉活動が効果的に展開できるよう資料を提供する。
  6. 精神保健福祉相談
    センターは、精神保健及び精神障害者福祉に関する相談及び指導のうち、複雑又は困難なものを行う。心の健康相談から、精神医療に係る相談、社会復帰相談をはじめ、アルコール、薬物、思春期、認知症等の特定相談を含め、精神保健福祉全般の相談を実施する。センターは、これらの事例についての相談指導を行うためには、総合的技術センターとしての立場から適切な対応を行うとともに、必要に応じて関係諸機関の協力を求めるものとする。
  7. 組織育成
    地域精神保健福祉の向上を図るためには、地域住民による組織的活動が必要である。このため、センターは、家族会、患者会、社会復帰事業団体など都道府県単位の組織の育成に努めるとともに、保健所、市町村並びに地区単位での組織の活動に協力する。
  8. 精神医療審査会の審査に関する事務
    精神医療審査会の開催事務及び審査遂行上必要な調査その他当該審査会の審査に関する事務を行うものとする。また、法第 38 条の 4 の規定による請求等の受付についても、精神保健福祉センターにおいて行うなど審査の客観性、独立性を確保できる体制を整えるものとする。
  9. 自立支援医療(精神通院医療)及び精神障害者保健福祉手帳の判定
    センターは、法第 45 条第 1 項の規定による精神障害者保健福祉手帳の申請に対する判定業務及び障害者総合支援法第 52 条第 1 項の規定による自立支援医療(精神通院医療)の支給認定を行うものとする。

即ち、精神保健福祉センターの業務は、「1. 企画立案」「2. 技術指導及び技術援助」「3. 人材育成」「4. 普及啓発」「5. 調査研究」「6. 精神保健福祉相談」「7. 組織育成」「8. 精神医療審査会の審査に関する事務」「9.自立支援医療(精神通院医療)及び精神障害者保健福祉手帳の判定」があげられているわけです。

以上から、選択肢①、選択肢②、選択肢③および選択肢④は精神保健福祉センターの業務に該当すると判断でき、除外することになります。

⑤ 不起訴処分の心神喪失者に対する処遇申立て

こちらは医療観察法制度に関する内容になっていますね。

心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(医療観察法)は、心神喪失又は心神耗弱の状態(精神障害のために善悪の区別がつかないなど、刑事責任を問えない状態)で、重大な他害行為(殺人、放火、強盗、強姦、強制わいせつ、傷害)を行った人に対して、適切な医療を提供し、社会復帰を促進することを目的とした制度です。

本制度では、心神喪失又は心神耗弱の状態で重大な他害行為を行い、不起訴処分となるか無罪等が確定した人に対して、検察官は、医療観察法による医療及び観察を受けさせるべきかどうかを地方裁判所に申立てを行います。

検察官からの申立てがなされると、鑑定を行う医療機関での入院等が行われるとともに、裁判官と精神保健審判員(必要な学識経験を有する医師)の各1名からなる合議体による審判で、本制度による処遇の要否と内容の決定が行われます。

審判の結果、医療観察法の入院による医療の決定を受けた人に対しては、厚生労働大臣が指定した医療機関(指定入院医療機関)において、手厚い専門的な医療の提供が行われるとともに、この入院期間中から、法務省所管の保護観察所に配置されている社会復帰調整官により、退院後の生活環境の調整が実施されます。

また、医療観察法の通院による医療の決定(入院によらない医療を受けさせる旨の決定)を受けた人及び退院を許可された人については、保護観察所の社会復帰調整官が中心となって作成する処遇実施計画に基づいて、原則として3年間、地域において、厚生労働大臣が指定した医療機関(指定通院医療機関)による医療を受けることとなります。

上記からも明らかなとおり、不起訴処分になった心神喪失者に対する処遇申立てを行うのは、検察官になります。

これは医療観察法第33条に規定があります。


(検察官による申立て)
第三十三条 検察官は、被疑者が対象行為を行ったこと及び心神喪失者若しくは心神耗弱者であることを認めて公訴を提起しない処分をしたとき、又は第二条第二項第二号に規定する確定裁判があったときは、当該処分をされ、又は当該確定裁判を受けた対象者について、対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するためにこの法律による医療を受けさせる必要が明らかにないと認める場合を除き、地方裁判所に対し、第四十二条第一項の決定をすることを申し立てなければならない。ただし、当該対象者について刑事事件若しくは少年の保護事件の処理又は外国人の退去強制に関する法令の規定による手続が行われている場合は、当該手続が終了するまで、申立てをしないことができる。


このように「不起訴処分の心神喪失者に対する処遇申立て」については、精神保健福祉センターの業務には該当しません。

よって、選択肢⑤を選択することになります。

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