公認心理師 2022-46

母子保健法で規定されている内容を選択する問題です。

世の中にはいろんな仕組みがありますが、それらが何によって規定されているかを知っておくと色々便利です(クライエントに情報提供できるだけでなく、雑談のネタにもなる。そして雑談は使いようによって治療的になる)。

問46 母子保健法で規定されている内容として、正しいものを1つ選べ。
① 産前産後の休業
② 乳幼児の予防接種
③ 母子健康手帳の交付
④ 出産育児一時金の支給

関連する過去問

なし

解答のポイント

世の中にある仕組みや決まりについて、何を法的根拠に行われているか知ろうとする生活を送る。

選択肢の解説

① 産前産後の休業

産前産後の休業については、労働基準法第65条および第66条に以下の通り規定があります(ついでに第67条も載せておきましょう)。


(産前産後)

第六十五条 使用者は、六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。
② 使用者は、産後八週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後六週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。
③ 使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。

第六十六条 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第三十二条の二第一項、第三十二条の四第一項及び第三十二条の五第一項の規定にかかわらず、一週間について第三十二条第一項の労働時間、一日について同条第二項の労働時間を超えて労働させてはならない。
② 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第三十三条第一項及び第三項並びに第三十六条第一項の規定にかかわらず、時間外労働をさせてはならず、又は休日に労働させてはならない。
③ 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、深夜業をさせてはならない。

(育児時間)

第六十七条 生後満一年に達しない生児を育てる女性は、第三十四条の休憩時間のほか、一日二回各々少なくとも三十分、その生児を育てるための時間を請求することができる。
② 使用者は、前項の育児時間中は、その女性を使用してはならない。


上記の通り、産前産後の休業は母子保健法ではなく労働基準法によって規定されています。

以上より、選択肢①は誤りと判断できます。

② 乳幼児の予防接種

こちらについては予防接種法に規定があります。

いくつかの条項に渡っているので、それぞれ抜き出しておきましょう。


第二条 この法律において「予防接種」とは、疾病に対して免疫の効果を得させるため、疾病の予防に有効であることが確認されているワクチンを、人体に注射し、又は接種することをいう。
2 この法律において「A類疾病」とは、次に掲げる疾病をいう。
一 ジフテリア
二 百日せき
三 急性灰白髄炎
四 麻しん
五 風しん
六 日本脳炎
七 破傷風
八 結核
九 Hib感染症
十 肺炎球菌感染症(小児がかかるものに限る。)
十一 ヒトパピローマウイルス感染症
十二 前各号に掲げる疾病のほか、人から人に伝染することによるその発生及びまん延を予防するため、又はかかった場合の病状の程度が重篤になり、若しくは重篤になるおそれがあることからその発生及びまん延を予防するため特に予防接種を行う必要があると認められる疾病として政令で定める疾病


まずは前提となる「定義」の内容です。

この法律では「A類疾病」とか「B類疾病(インフルエンザとか)」がよく出てきます。

こうした定義を踏まえて、以下の条項を見ていきましょう。


(市町村長が行う予防接種)
第五条 市町村長は、A類疾病及びB類疾病のうち政令で定めるものについて、当該市町村の区域内に居住する者であって政令で定めるものに対し、保健所長(特別区及び地域保健法(昭和二十二年法律第百一号)第五条第一項の規定に基づく政令で定める市(第十条において「保健所を設置する市」という。)にあっては、都道府県知事)の指示を受け期日又は期間を指定して、予防接種を行わなければならない。
2 都道府県知事は、前項に規定する疾病のうち政令で定めるものについて、当該疾病の発生状況等を勘案して、当該都道府県の区域のうち当該疾病に係る予防接種を行う必要がないと認められる区域を指定することができる。
3 前項の規定による指定があったときは、その区域の全部が当該指定に係る区域に含まれる市町村の長は、第一項の規定にかかわらず、当該指定に係る疾病について予防接種を行うことを要しない。

(臨時に行う予防接種)
第六条 都道府県知事は、A類疾病及びB類疾病のうち厚生労働大臣が定めるもののまん延予防上緊急の必要があると認めるときは、その対象者及びその期日又は期間を指定して、臨時に予防接種を行い、又は市町村長に行うよう指示することができる。
2 厚生労働大臣は、前項に規定する疾病のまん延予防上緊急の必要があると認めるときは、政令の定めるところにより、同項の予防接種を都道府県知事に行うよう指示することができる。
3 厚生労働大臣は、B類疾病のうち当該疾病にかかった場合の病状の程度を考慮して厚生労働大臣が定めるもののまん延予防上緊急の必要があると認めるときは、その対象者及びその期日又は期間を指定して、政令の定めるところにより、都道府県知事を通じて市町村長に対し、臨時に予防接種を行うよう指示することができる。この場合において、都道府県知事は、当該都道府県の区域内で円滑に当該予防接種が行われるよう、当該市町村長に対し、必要な協力をするものとする。

(予防接種の勧奨)
第八条 市町村長又は都道府県知事は、第五条第一項の規定による予防接種であってA類疾病に係るもの又は第六条第一項若しくは第三項の規定による予防接種の対象者に対し、定期の予防接種であってA類疾病に係るもの又は臨時の予防接種を受けることを勧奨するものとする。
2 市町村長又は都道府県知事は、前項の対象者が十六歳未満の者又は成年被後見人であるときは、その保護者に対し、その者に定期の予防接種であってA類疾病に係るもの又は臨時の予防接種を受けさせることを勧奨するものとする。

(予防接種を受ける努力義務)
第九条 第五条第一項の規定による予防接種であってA類疾病に係るもの又は第六条第一項の規定による予防接種の対象者は、定期の予防接種であってA類疾病に係るもの又は臨時の予防接種(同条第三項に係るものを除く。)を受けるよう努めなければならない。
2 前項の対象者が十六歳未満の者又は成年被後見人であるときは、その保護者は、その者に定期の予防接種であってA類疾病に係るもの又は臨時の予防接種(第六条第三項に係るものを除く。)を受けさせるため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。


基本的には市町村長が保健所長の指示を受け予防接種を実施し、保護者に受けることを勧奨せねばならないことになっています。

また、保護者にもその予防接種を子どもに受けさせる努力義務が生じることが規定されていますね。

宗教的もしくはその他の理由で予防接種を受けさせられないという人もいるでしょうから、保護者にとっては努力義務になるということでしょうね。

「子どもの不快感に向き合えない保護者」が増えていると教育実践の中で強く感じるのですが、「子どもが嫌がるので予防接種を受けさせません」という人がいて驚いたことがありました。

いくつか問題があるのですが列挙すると、①子どもの不快感と向き合えない、②長期的な展望で必要性が高いと言えることでもさせることができない(精神的にその日暮らしの特性を有している)、③受けさせない理由が「子ども」であって「自分」ではない(自分に責任が生じることを決められない、やらない可能性大)、などでしょうか。

似たような話はたくさんあって、うちの子どもの同級生保護者LINEグループがあって「皆さん、子どもにコロナのワクチン打たせますか?」という問いかけが回ってきました。

「こんなの回すなよ…」というのが第一声でしたが、それよりも驚いたのが「子どもに聞いたら嫌がるのでうちは打ちません」という親がいたことでした。

未成年という責任能力を有さない人に対しては、その保護者が様々なことを決定するのは「親の責任」になります。

コロナのワクチンを打つ打たないは「個人の自由」ですが、「個人の自由」を隠れ蓑に「親の責任」を果たさない上に、「親の責任」を果たしていない自覚もないわけですね。

打っても打たなくてもいいのですが、大切なのは「この判断は私たち親が決めました」という明確な認識であり、「子どもが嫌がるから」と判断の根拠を子どもにしてはいけないのです。

少し話は逸れましたが、乳幼児の予防接種は母子保健法ではなく予防接種法に規定されていますね。

よって、選択肢②は誤りと判断できます。

③ 母子健康手帳の交付

こちらは母子保健法第16条に規定されていますね。


(母子健康手帳)
第十六条 市町村は、妊娠の届出をした者に対して、母子健康手帳を交付しなければならない。
2 妊産婦は、医師、歯科医師、助産師又は保健師について、健康診査又は保健指導を受けたときは、その都度、母子健康手帳に必要な事項の記載を受けなければならない。乳児又は幼児の健康診査又は保健指導を受けた当該乳児又は幼児の保護者についても、同様とする。
3 母子健康手帳の様式は、厚生労働省令で定める。
4 前項の厚生労働省令は、健康診査等指針と調和が保たれたものでなければならない。


以上のように、母子健康手帳の交付は母子保健法に規定されています。

なお、母子健康手帳の交付は市町村が行いますが、保健所の業務に関しては地域保健法の第5条~第17条に規定があります(公認心理師 2021-31)。

よって、選択肢③が正しいと判断できます。

そういえば、うちの親は家を改築する際に誤って私の幼いころの写真をすべて破棄してしまいました。

ですから、実家に残っている私の幼いころの写真は母子健康手帳だけになります。

そういうこともあって、自分の子どもの写真はデータとプリントアウトした実物の2つで管理するようにしています。

これも一種の危機管理ですね。

④ 出産育児一時金の支給

こちらについては健康保険法第101条に規定されていますね。


(出産育児一時金)
第百一条 被保険者が出産したときは、出産育児一時金として、政令で定める金額を支給する。

(出産手当金)
第百二条 被保険者が出産したときは、出産の日(出産の日が出産の予定日後であるときは、出産の予定日)以前四十二日(多胎妊娠の場合においては、九十八日)から出産の日後五十六日までの間において労務に服さなかった期間、出産手当金を支給する。
2 第九十九条第二項及び第三項の規定は、出産手当金の支給について準用する。

(出産手当金と傷病手当金との調整)
第百三条 出産手当金を支給する場合(第百八条第三項又は第四項に該当するときを除く。)においては、その期間、傷病手当金は、支給しない。ただし、その受けることができる出産手当金の額(同条第二項ただし書の場合においては、同項ただし書に規定する報酬の額と同項ただし書の規定により算定される出産手当金の額との合算額)が、第九十九条第二項の規定により算定される額より少ないときは、その差額を支給する。
2 出産手当金を支給すべき場合において傷病手当金が支払われたときは、その支払われた傷病手当金(前項ただし書の規定により支払われたものを除く。)は、出産手当金の内払とみなす。


上記の通り、出産育児一時金の支給は母子保健法ではなく健康保険法で規定されています。

よって、選択肢④は誤りと判断できます。

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