公認心理師 2022-3

障害者の職業生活の支援を行う機関に関する問題です。

初出の内容であり難しい印象でしたが、名前の通りと言えば名前の通りなんですよね。

問3 障害者の職業生活における自立を図るため、雇用、保健、福祉、教育等の関係機関との連携の下、障害者の身近な地域において就業面及び生活面における一体的な支援を行い、障害者の雇用の促進及び安定を図ることを目的とする施設として、最も適切なものを1つ選べ。
① 就労移行支援事業所
② 精神保健福祉センター
③ 障害者職業総合センター
④ 障害者就業・生活支援センター
⑤ 国立障害者リハビリテーションセンター

関連する過去問

なし
※唯一、精神保健福祉センターだけは記載があるが、その根拠法等に関する出題はない。

解答のポイント

障害者福祉や障碍者就労に関する各機関について、その根拠法や事業内容を把握している。

選択肢の解説

① 就労移行支援事業所

就労移行支援事業所は「障害者総合支援法」に基づいて運営されている通所型の福祉サービスで、一般企業への就職を目指す障害者に対し、主に「職業訓練の提供」と「就職活動の支援」によって就職をサポートしています。

具体的には、職務に必要なスキル(ビジネスマナーなど)を身につけるためのプログラムが設定されてたり、自己管理に関する助言などが行われています。

ちなみに障害者総合支援法における就労系障害福祉サービスには、就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型、就労定着支援の4種類のサービスがあります。

  • 就労移行支援:就労を希望する障害者であって、一般企業に雇用されることが可能と見込まれる者に対して、一定期間就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行います。
  • 就労継続支援A型:一般企業に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が可能である者に対して、雇用契約の締結等による就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供を行います。
  • 就労継続支援B型:一般企業に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が困難である者に対して、就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供を行います。
  • 就労定着支援:就労移行支援等を利用して、一般企業に新たに雇用された障害者に対し、雇用に伴う生じる日常生活又は社会生活を営む上での各般の問題に関する相談、指導及び助言等の必要な支援を行います。

なお、就労移行支援事業所は、上記の「就労移行支援」に該当するものになりますね。

就労移行支援事業所を利用するために必要な条件は以下の4つで、すべての条件を満たしている必要があります。

  1. 一般企業で働くことを希望している人:就労継続支援A型やB型等の福祉的な支援を受ける就労を目指す場合は当てはまらない。
  2. 身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病などがあること:障害者手帳を持っていない人も医師の診断や自治体の判断によって利用できます。ただし、障害福祉サービス受給者証が必要。
  3. 18歳以上で満65歳未満の人:これは法律の範囲として定められています。
  4. 離職中の人(例外あり)

就労移行支援事業所の利用期間は原則2年以内で、賃金は支給されません。

なお、類似の機関として「就労継続支援事業所」がありますが、こちらは一般企業への就職が困難な人や、就労移行支援を利用しても就職につながらなかった人が利用可能な障害福祉サービスとなります(賃金が発生すること、利用期間の制限がないことなども違いですね)。

本問で求められているのは「障害者の職業生活における自立を図るため、雇用、保健、福祉、教育等の関係機関との連携の下、障害者の身近な地域において就業面及び生活面における一体的な支援を行い、障害者の雇用の促進及び安定を図ることを目的とする施設」ですが、就労移行支援事業所は「生活面における一体的な支援」とは言えないと考えられますね。

以上より、選択肢①は本問で示されている説明文と合致する施設として不適切と判断できます。

② 精神保健福祉センター

精神保健福祉センターは、精神保健福祉法を根拠法としています。

条項は以下の通りです。


第六条 都道府県は、精神保健の向上及び精神障害者の福祉の増進を図るための機関(以下「精神保健福祉センター」という)を置くものとする。

2 精神保健福祉センターは、次に掲げる業務を行うものとする。
一 精神保健及び精神障害者の福祉に関する知識の普及を図り、及び調査研究を行うこと。
二 精神保健及び精神障害者の福祉に関する相談及び指導のうち複雑又は困難なものを行うこと。
三 精神医療審査会の事務を行うこと。
四 第四十五条第一項の申請に対する決定及び障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第五十二条第一項に規定する支給認定(精神障害者に係るものに限る)に関する事務のうち専門的な知識及び技術を必要とするものを行うこと。
五 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第二十二条第二項又は第五十一条の七第二項の規定により、市町村が同法第二十二条第一項又は第五十一条の七第一項の支給の要否の決定を行うに当たり意見を述べること。
六 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第二十六条第一項又は第五十一条の十一の規定により、市町村に対し技術的事項についての協力その他必要な援助を行うこと。


つまり、地域の人の精神的健康の向上及び精神障害者の福祉の増進を図るための総合機関として、各都道府県に設置されているのが精神保健福祉センターになります。

精神保健福祉センターは、1965年の精神衛生法改正に「精神衛生センター」(任意設置)として規定され、1987年の精神保健法への改正によって「精神保健センター」に、さらに1995年の「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下、精神保健福祉法)」への改正によって「精神保健福祉センター」に名称変更されました。

2002年には地方分権推進計画を踏まえて名称や組織が弾力化されるとともに、精神医療審査会の審査局等の行政事務を行うようになり、都道府県(指定都市)に必置の機関となりました。

「精神保健福祉センター運営要領」(2013年4月26日一部改正)には、精神保健福祉センターは、精神保健福祉法第6条に規定されているとおり、精神保健及び精神障害者の福祉に関する知識の普及を図り、調査研究を行い、並びに相談及び指導のうち複雑困難なものを行うとともに、精神医療審査会の事務並びに障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の申請に関する事務のうち専門的な知識及び技術を必要とするものを行う施設であって、都道府県(指定都市を含む)における精神保健及び精神障害者の福祉に関する総合的技術センターとして、地域精神保健福祉活動推進の中核となる機能を備えなければならない、とあります。

精神保健福祉センターの業務は以下の通りになります。

  1. 企画立案
  2. 技術指導及び技術援助
  3. 人材育成
  4. 普及啓発
  5. 調査研究
  6. 精神保健福祉相談
  7. 組織育成
  8. 精神医療審査会の審査に関する事務
  9. 自立支援医療(精神通院医療)及び精神障害者保健福祉手帳の判定

本問で求められているのは「障害者の職業生活における自立を図るため、雇用、保健、福祉、教育等の関係機関との連携の下、障害者の身近な地域において就業面及び生活面における一体的な支援を行い、障害者の雇用の促進及び安定を図ることを目的とする施設」ですが、上記の業務内容を踏まえれば精神保健福祉センターは合致しないと考えられます。

以上より、選択肢②は本問で示されている説明文と合致する施設として不適切と判断できます。

③ 障害者職業総合センター

障害者職業センターは、障害者雇用促進法を根拠法としています。

その業務は以下の通りです。


第二十条 障害者職業総合センターは、次に掲げる業務を行う。

一 職業リハビリテーションに関する調査及び研究を行うこと。

二 障害者の雇用に関する情報の収集、分析及び提供を行うこと。

三 第二十四条の障害者職業カウンセラー及び職場適応援助者の養成及び研修を行うこと。

四 広域障害者職業センター、地域障害者職業センター、第二十七条第二項の障害者就業・生活支援センターその他の関係機関に対する職業リハビリテーションに関する技術的事項についての助言、指導その他の援助を行うこと。

五 前各号に掲げる業務に付随して、次に掲げる業務を行うこと。
イ 障害者に対する職業評価、職業指導、基本的な労働の習慣を体得させるための訓練(職業準備訓練)並びに職業に必要な知識及び技能を習得させるための講習(職業講習)を行うこと。
ロ 事業主に雇用されている知的障害者等に対する職場への適応に関する事項についての助言又は指導を行うこと。
ハ 事業主に対する障害者の雇用管理に関する事項についての助言その他の援助を行うこと。

六 前各号に掲げる業務に附帯する業務を行うこと。


このように、障害者職業センターは、障害者雇用促進法において専門的な職業リハビリテーションを実施する機関として位置づけられ、職業リハビリテーションの専門家として障害者職業カウンセラーが配置されています。

職業リハビリテーション関係施設の中核的機関として、高度かつ先駆的な職業リハビリテーション・サービスの提供、研究・開発、技術情報の提供、専門職員の養成・研修等を実施する機関となります。

1991年に国により千葉市美浜区(幕張新都心)に設置され、厚生労働省所管の独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)により運営されています。

JEEDのホームページを見てみると、組織図等がわかりやすく載っていますからご参照ください。

なお、「障害者職業センター」と呼ぶ時は、障害者職業総合センター、広域障害者職業センター、地域障害者職業センターの三つを合わせており、広域障害者職業センター、地域障害者職業センターはある特定の地域において障害者職業総合センターを同様の業務を行っていくと見なして良いでしょう。

本問で求められているのは「障害者の職業生活における自立を図るため、雇用、保健、福祉、教育等の関係機関との連携の下、障害者の身近な地域において就業面及び生活面における一体的な支援を行い、障害者の雇用の促進及び安定を図ることを目的とする施設」ですが、職業リハビリテーションに関する事業を行っていく障害者職業センターは合致しないと考えられます。

以上より、選択肢③は本問で示されている説明文と合致する施設として不適切と判断できます。

④ 障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、障害者雇用促進法を根拠法としています。

その業務としては以下の通りです。


第二十八条 障害者就業・生活支援センターは、次に掲げる業務を行うものとする。

一 支援対象障害者からの相談に応じ、必要な指導及び助言を行うとともに、公共職業安定所、地域障害者職業センター、社会福祉施設、医療施設、特別支援学校その他の関係機関との連絡調整その他厚生労働省令で定める援助を総合的に行うこと。

二 支援対象障害者が障害者職業総合センター、地域障害者職業センターその他厚生労働省令で定める事業主により行われる職業準備訓練を受けることについてあっせんすること。

三 前二号に掲げるもののほか、支援対象障害者がその職業生活における自立を図るために必要な業務を行うこと


厄介なのが、上記の情報から本問の説明文に合致するか否かを判断せねばならないという点で、これはなかなか困難であると言えますね。

具体的な対象としては、職業生活における自立を図るために就業及びこれに伴う日常生活又は社会生活上の支援を必要とする障害者で、働きたいがどうすれば就職できるか分からない人や、今現在働いているものの生活面で悩んでいる人、また障害が原因で退職を考えている人などになりますね。

本問の説明文は厚生労働省が障害者就業・生活支援センターの説明として用いているものであり、厚生労働省のホームページには本問の説明文と全く同じものがあります。

これをチェックしてないと自信をもって正解するのは難しかったかもしれないですね。

なお、障害者就業・生活支援センターの役割については、厚生労働省のページに詳しい図が載っていますので参考にしてください。

以上より、選択肢④が本問で示されている説明文と合致する施設として適切と判断できます。

⑤ 国立障害者リハビリテーションセンター

国立障害者リハビリテーションセンターは、厚生労働省組織令第149条に基づいて設置され、身体障害、視覚障害、言語聴覚障害、高次脳機能障害、発達障害などの障害者のリハビリテーションに関する相談、医学的・心理学的・社会学的・職能的判定を行い、治療・訓練・指導を行います。

条項は以下の通りです。


第百四十九条 国立障害者リハビリテーションセンターは、次に掲げる事務をつかさどる。

一 障害者のリハビリテーションに関し、次に掲げる業務を行うこと。
イ 相談に応じ、治療、訓練及び支援を行うこと。
ロ 調査及び研究を行うこと。
ハ 技術者の養成及び訓練を行うこと。

二 知的障害児の保護及び指導を行うこと。

三 戦傷病者の保養を行うこと。
2 国立障害者リハビリテーションセンターの位置及び内部組織は、厚生労働省令で定める。


厚生労働省組織令を根拠とする施設が試験に出るのは初めてですね。

国立障害者リハビリテーションセンターのホームページに設置の目的が載っており、それによると「我が国の障害のある人々の自立及び社会参加を支援するため、医療から職業訓練まで一貫した体系の下で、障害者の生活機能全体の維持・回復のための先進的・総合的な保健・医療・福祉サービスを提供するとともに、リハビリテーション技術・福祉機器の研究開発、リハビリテーション専門職員の人材育成等、障害者リハビリテーションの中核機関としての先導的役割を担っています」とあります。

この説明文がわかりやすいかもしれないですね。

本問で求められているのは「障害者の職業生活における自立を図るため、雇用、保健、福祉、教育等の関係機関との連携の下、障害者の身近な地域において就業面及び生活面における一体的な支援を行い、障害者の雇用の促進及び安定を図ることを目的とする施設」ですが、身体障害、視覚障害、言語聴覚障害、高次脳機能障害、発達障害などの障害者のリハビリテーションに関する相談、医学的・心理学的・社会学的・職能的判定を行い、治療・訓練・指導を行う国立障害者リハビリテーションセンターは合致しないことがわかりますね。

以上より、選択肢⑤は本問で示されている説明文と合致する施設として不適切と判断できます。

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