公認心理師 2022-126

地域包括ケアシステムに関する問題です。

初出の仕組みになりますから、問題を通してイメージがつかめると良いですね。

問126 地域包括ケアシステムについて、正しいものを2つ選べ。
① 医療と介護の連携強化を図っている。
② 地域包括支援センターには、医師が常駐している。
③ 利用者のケアが中心であり、権利擁護については取り扱わない。
④ 地域ケア会議では、多職種が協働して個別事例の課題解決を図っている。
⑤ 要介護者が介護施設に入所して、集団的ケアを受けることを目的としている。

関連する過去問

なし

解答のポイント

地域包括ケアシステムの概要を把握している。

選択肢の解説

① 医療と介護の連携強化を図っている。
⑤ 要介護者が介護施設に入所して、集団的ケアを受けることを目的としている。

地域包括ケアシステムとは、要介護状態となっても、住み慣れた地域で自分らしい生活を最後まで続けることができるように地域内で助け合う体制のことです。

以前は、サービス提供者それぞれが独自に高齢者を支える仕組みを設けていましたが、退院や転院などの理由によって、従来のサービス提供者から離れてしまうと、そこでサービスが途切れてしまうのです。

地域包括ケアシステムを取り入れることによって、高齢者を支えるさまざまな人たちが、協力して地域ごとの課題に取り組むようになります。

介護を提供する人たちだけでなく、医療を提供する側や、住宅の専門家や予防サービスの提供者といった、分野の枠を超えて高齢者を支えられるようになるため、地域の実態に即した介護が提供できるのです。

厚生労働省の地域包括ケアシステムのページに「医療と介護の連携について」という項目が設けられていることからも明白なように、この両者の連携強化を基盤としています(選択肢①の正誤判断ですね)。

疾病を抱えても、自宅等の住み慣れた生活の場で療養し、自分らしい生活を続けられるためには、地域における医療・介護の関係機関が連携して、包括的かつ継続的な在宅医療・介護の提供を行うことが必要になります。

在宅療養を支える関係機関の例としては、地域の医療機関 (定期的な訪問診療の実施)、在宅療養支援病院・有床の診療所 (急変時に一時的に入院の受け入れの実施)、訪問看護事業所 (医療機関と連携し、服薬管理や点眼、褥瘡の予防、浣腸等の看護ケアの実施)、介護サービス事業所 (入浴、排せつ、食事等の介護の実施)などがあります。

このため、関係機関が連携し、多職種協働により在宅医療・介護を一体的に提供できる体制を構築するため、市町村が中心となって、地域の医師会等と緊密に連携しながら、地域の関係機関の連携体制の構築を図ります。

厚生労働省においては、関係機関が連携し、多職種協働により在宅医療・介護を一体的に提供できる体制を構築するための取組を推進しているわけですね。

そして、地域包括ケアシステムは厚生労働省のこちらの資料からもわかる通り、選択肢⑤の「要介護者が介護施設に入所して、集団的ケアを受けることを目的としている」ような仕組みではなく、地域全体で高齢者を支えていくような仕組みになります(介護施設に入所してから~のような限定的な仕組みではない)。

以上より、選択肢①は正しいと判断でき、選択肢⑤は誤りと判断できます。

② 地域包括支援センターには、医師が常駐している。
③ 利用者のケアが中心であり、権利擁護については取り扱わない。

こちらについては、厚生労働省のこちらの資料が詳しいです。

地域包括支援センターは、市町村が設置主体となり、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員等を配置して、住民の健康の保持及び生活の安定のために必要な援助を行うことにより、地域の住民を包括的に支援することを目的とする施設になります(介護保険法第115条の46第1項より)。

地域包括支援センターには必須事業として、地域支援事業のひとつである包括的支援事業と指定介護予防支援事業があり、その他には、市町村が包括センターに委託することが可能な任意事業として地域支援事業に規定されている事業と厚生労働省が定める事業があります。

地域支援事業は「被保険者が要介護状態等となることを予防するとともに、要介護状態等となった場合においても、可能な限り、地域において自立した日常生活を営むことができるよう支援する」ためのものだと定義されています。

包括的支援事業は、以下の4つの事業で構成されています。

  1. 介護予防ケアマネジメント事業:
    介護予防ケアマネジメント事業は、二次予防事業の対象者(主として要介護状態等となるおそれの高い状態にあると認められる65歳以上の者)が要介護状態等になることを予防するため、その心身の状況等に応じて、対象者自らの選択に基づき、介護予防事業その他の適切な事業が包括的かつ効率的に実施されるよう必要な援助を行うものです。
  2. 総合相談・支援事業:
    総合相談・支援事業は、地域の高齢者が、住み慣れた地域で安心してその人らしい生活を継続していくことができるようにするため、どのような支援が必要かを把握し、地域における適切なサービス、関係機関および制度の利用につなげる等の支援を行うものです。業務内容としては、総合相談、地域包括支援ネットワーク構築、実態把握などがあります。
  3. 権利擁護事業:
    権利侵害を受けている、または受ける可能性が高いと考えられる高齢者が、地域で安心して尊厳のある生活を行うことができるよう、権利侵害の予防や対応を専門的に行うものです。事業内容としては、高齢者虐待の防止および対応、消費者被害の防止および対応、判断能力を欠く常況にある人への支援などがあります。
  4. 包括的・継続的ケアマネジメント支援事業:
    包括的・継続的ケアマネジメント支援事業は、地域の高齢者が住み慣れた地域で暮らすことができるよう、個々の高齢者の状況や変化に応じた包括的・継続的なケアマネジメントを介護支援専門員が実践することができるように地域の基盤を整えるとともに個々の介護支援専門員へのサポートを行います。

地域包括ケアシステムを定着させるために、中心となって活躍するのが地域包括支援センターの役割になります。

ですから、これらの地域包括支援センターの業務は、センターの役割りであると同時に地域包括ケアシステムの役割でもあります。

選択肢③で示されている権利擁護について、もう少し詳しく述べていくと、介護が必要な状態になってしまうと、今まで自分でできていたことが自立して行えなくなってくる場合もあります。

それによって、大切な財産や自分自身の体といった高齢者の権利に、危害が加えられてしまう危険性があるのです。

高齢者たちが安心して生活できるように、センターでは成年後見人制度についての情報提供を行っています。

この制度を利用することで、預貯金や不動産といった財産を信頼できる人に委託できるようになるのです。

また、地域包括支援センターでは、介護を受ける過程で起こりうる虐待や詐欺などの消費者被害を予防することにも務めています。

これらの被害を早期発見したり、必要に応じて施設への入所を進めたりするなど、財産以外でも高齢者の権利を守るための施策をとっているのです。

このように地域包括ケアシステム(やそれを担う地域包括支援センター)では、高齢者の権利擁護についての役割も担っていると言えますね。

厚生労働省のこちらの資料でも、その辺のことは読み取れると思います。

地域包括支援センターの運営体制として、包括的支援事業等を適切に実施するため、原則として保健師等、社会福祉士、主任介護支援専門員の3職種をおくこととされています。

地域包括支援センターにこれら3つの職種が配置されているのは、保健師等は保健医療、社会福祉士はソーシャルワーク、主任介護支援専門員はケアマネジメント、それぞれの専門性を発揮することが期待されているからです。

これらの専門性は、地域包括ケアの提供を可能にするために不可欠なものといえますが、それらが分断され個別に機能していても、地域包括ケアを提供することはできません。

地域住民に対して地域包括ケアを提供するためには、それぞれの専門職が縦割りで業務を行うのではなく、包括センター全体で、情報の共有や相互の助言等を通じ、各専門職が支援の目標に向かって連携して対応することが必須となります。

地域包括支援センターにおいて医師は常駐しているわけではありませんが、弁護士や医師などの専門職からのコンサルテーションを受けることなどはあります。

上記の通り、地域包括ケアシステムでは高齢者の権利擁護についても業務として取り扱っています。

また、地域包括支援センターに置かれている専門職としては、保健師等、社会福祉士、主任介護支援専門員の3職種になります。

以上より、選択肢②および選択肢③は誤りと判断できます。

④ 地域ケア会議では、多職種が協働して個別事例の課題解決を図っている。

地域ケア会議に関しては「地域包括ケアの実現に向けた地域ケア会議実践事例集」に詳しく載っていますので、こちらから引用しつつ解説していきましょう。

日本はいま、世界に類を見ない急速な少子高齢化を経験しており、単身や夫婦のみの高齢者世帯や認知症高齢者が増加するとともに、高齢化の進み方には大きな地域差が見受けられます。

このような社会情勢の中、高齢になっても、住み慣れた地域で尊厳のあるその人らしい生活が継続できるよう、市町村を中心に地域の特性に応じた地域包括ケアシステムの実現が求められています。

地域ケア会議は、その実現に向けた手法として、高齢者個人に対する支援の充実(在宅生活の限界点の引き上げ)とそれを支える社会基盤の整備(地域づくり)を同時に図っていくことを目的としています。

具体的には、地域の支援者を含めた多職種による専門的視点を交えて、適切なサービスにつながっていない高齢者の支援や地域で活動する介護支援専門員の自立支援に資するケアマネジメントを支援するとともに、個別ケースの課題分析等を通じて地域課題を発見し、地域に必要な資源開発や地域づくり、さらには介護保険事業計画への反映などの政策形成につなげることを目指すものです。

地域ケア会議の実施に当たっては、それぞれの目的や機能に応じて、個別ケースや生活圏域レベルの地域課題を検討する会議は地域包括支援センターが市町村と協力して開催し、地域づくりや政策形成等につなげる会議は市町村レベルで開催するなど、地域の実情に応じた役割分担のもと行うこととなりますが、地域ケア会議は、これら一連の取り組みが連動することにより最大の効果が期待できるものです。

このため、市町村においては、管内のセンターが同じ目的 ・ 目標に向かって地域ケア会議が実施できるよう統一的なルールづくりなどの環境整備を行い、センターが発見 ・ 抽出した地域課題を着実にくみ上げ、介護保険事業計画担当課等と情報を共有するなど、主体的な取り組みが求められます。

上記の通り、地域ケア会議では「高齢者個人に対する支援の充実(在宅生活の限界点の引き上げ)とそれを支える社会基盤の整備(地域づくり)を同時に図っていくこと」を目的としており、その具体的には「地域の支援者を含めた多職種による専門的視点を交えて、適切なサービスにつながっていない高齢者の支援や地域で活動する介護支援専門員の自立支援に資するケアマネジメントを支援するとともに、個別ケースの課題分析等を通じて地域課題を発見し、地域に必要な資源開発や地域づくり、さらには介護保険事業計画への反映などの政策形成につなげること」とあります。

これらは本選択肢の「地域ケア会議では、多職種が協働して個別事例の課題解決を図っている」という内容に矛盾するものではありませんね。

よって、選択肢④は正しいと判断できます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です