公認心理師 2019-134

問134は親権に関する問題です。
親権それ自体の問題は選択肢①や選択肢②になりますが、それ以外は児童虐待との関連で覚えている人も多いと思います。
過去問にも類似の内容がありましたね。

問134 親権について、正しいものを2つ選べ。
①親権には財産管理権は含まれない。
②民法には親権喪失及び親権停止が規定されている。
③児童相談所の一時保護には親権者の同意は必要でない。
④里親に委託措置をする場合、親権者の同意は必要でない。
⑤児童養護施設に入所措置する際、親権者の同意は必要でない。

親権の財産管理権に関しては初出問題ですね。
それ以外は過去問で全てカバーできるはずです。

解答のポイント

民法および児童福祉法に規定されている親権に関する項を把握していること。

選択肢の解説

①親権には財産管理権は含まれない。

親権については民法818条に規定があります。

  1. 成年に達しない子は、父母の親権に服する。
  2. 子が養子であるときは、養親の親権に服する。
  3. 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。

親は子どもの成長に責任があるということですね。
私は心理的な親の要件は「子どもの問題に責任を感じずにはおれないこと」だと考えています。
それが満たされていれば、生物学上親であるかどうかはともかく、その人は心理的には親と言えるだろうと思います。

親権とは、子どもが成人するまでの間、子どもを養育監護しながら、子どもの財産管理をしていく権限のことです。
親権の内容としては、子どもの身上監護をして実際に養育を行う身上監護権と、子どもの財産を管理する財産管理権があります。
財産管理権と身上監護権を分けて、例えば、別れた夫婦のそれぞれが別々に親権を所持することもありますが、多くの場合では財産管理権と身上監護権を分けることなくどちらかが「親権者」として2つの権利を持つことが多いです。
親権は文字通り親の権利なのですが、子どもの心身を健やかに育てていくための親の義務という側面もあるものです。

財産管理権については、民法824条に「親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない」と規定されています。
上記の通り、財産管理権とは、子どもに財産がある場合にその子どもが所有する財産を管理して、子どもに代わって法律行為を行うことが出来る権利のことです。
後半の同意に関する内容は、子どもが何かしなければならないような債務が生まれる場合に必要ということですね。
子どもがタレント活動する場合などにも当てはまりますね(第823条の職業の許可も)。

子ども名義の預貯金管理などが代表的ですが、たとえば子どもが贈与を受けた場合や不動産を所有する場合には子どもに代わって財産を管理しますし、子どもが勝手に売買契約などの法律行為をした場合には、親権者として取り消しをすることも可能です。
子どもが交通事故に遭った場合の損害賠償請求権行使の場合にも、財産管理権を有している親権者が代理人となって請求することになります。

また、子どもが成年に達した場合の「財産の管理の計算」や「第三者が無償で子に与えた財産の管理」なども民法に規定があります(第828条~第830条)。

以上より、選択肢①は誤りと判断できます。

②民法には親権喪失及び親権停止が規定されている。

親権の喪失等については、民法の第三節に「親権の喪失」として以下が規定されています
2018-105でも同様の内容が問われていますね。

第834条:親権喪失の審判
父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権喪失の審判をすることができる。ただし、二年以内にその原因が消滅する見込みがあるときは、この限りでない。

第834条の2:親権停止の審判
 第1項:父又は母による親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権停止の審判をすることができる。
 第2項:家庭裁判所は、親権停止の審判をするときは、その原因が消滅するまでに要すると見込まれる期間、子の心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して、二年を超えない範囲内で、親権を停止する期間を定める。

第835条:管理権喪失の審判
父又は母による管理権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、管理権喪失の審判をすることができる。

第836条:親権喪失、親権停止又は管理権喪失の審判の取消し
第八百三十四条本文、第八百三十四条の二第一項又は前条に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人又はその親族の請求によって、それぞれ親権喪失、親権停止又は管理権喪失の審判を取り消すことができる。

第837条:親権又は管理権の辞任及び回復
 第1項:親権を行う父又は母は、やむを得ない事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を辞することができる。
 第2項:前項の事由が消滅したときは、父又は母は、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を回復することができる。

両親もしくはそのいずれかによる虐待があるときや、親権を行うことが難しかったりふさわしくなかったりして子どもの利益が大きく損なわれる場合には、家庭裁判所は親権を失わせることができるということですね。
以上より、選択肢②は正しいと判断できます。

③児童相談所の一時保護には親権者の同意は必要でない。

こちらは児童福祉法第33条に「児童相談所長は、必要があると認めるときは、第二十六条第一項の措置を採るに至るまで、児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため、児童の一時保護を行い、又は適当な者に委託して、当該一時保護を行わせることができる」と規定されています(都道府県知事の権限で行えることも次項に規定あり)。

特に保護者の同意に関することに関しては、同条第5項に以下のように規定されています。
前項の規定により引き続き一時保護を行うことが当該児童の親権を行う者又は未成年後見人の意に反する場合においては、児童相談所長又は都道府県知事が引き続き一時保護を行おうとするとき、及び引き続き一時保護を行つた後二月を超えて引き続き一時保護を行おうとするときごとに、児童相談所長又は都道府県知事は、家庭裁判所の承認を得なければならない。ただし、当該児童に係る第二十八条第一項第一号若しくは第二号ただし書の承認の申立て又は当該児童の親権者に係る第三十三条の七の規定による親権喪失若しくは親権停止の審判の請求若しくは当該児童の未成年後見人に係る第三十三条の九の規定による未成年後見人の解任の請求がされている場合は、この限りでない」

このように、一時保護に関しては保護者の同意を要する旨の規定はありません
2018追加-132の選択肢③に全く同じことを問われています。
試験的にも臨床実践面から言っても、絶対に落としたくない選択肢です。

一時保護は、施設入所のように児童福祉法第27条第4項のような保護者の同意を要する旨の規定はなく、子どもの意思にも反して実施できます(選択肢④や選択肢⑤の内容ですね)
関係者の意思に反して行う強制的な制度は、通常は裁判所の判断を必要とするが、児童福祉法の一時保護については裁判所の事前事後の許可も不要です
このような強力な行政権限を認めた制度は、諸外国の虐待に関する制度としても珍しく、日本にも類似の制度は見当たりません。
このような強力な制度であるがゆえに、職権一時保護は虐待を受けている子どもの救出のためには非常に有効であり、必要な場合には積極的に活用することが期待されているのであるが、同時にあまりに強力であるがゆえに保護者の反発も大きいことは避けられないと言えるでしょう。
最近は、虐待による死亡事例が続き、それによって一時保護を行う職員とその後の親対応を行う職員を分けようという動きがあるようですね。
職員の数などを鑑みると、どこまで可能なのかはわかりませんけど…。

いずれにせよ、一時保護には親権者の同意は必要ありません。
以上より、選択肢③は正しいと判断できます。

④里親に委託措置をする場合、親権者の同意は必要でない。
⑤児童養護施設に入所措置する際、親権者の同意は必要でない。

こちらについては、児童福祉法第27条に以下の通り規定があります。
選択肢③と併せて覚えておくべき事項と言えるでしょう。

【児童福祉法第27条】
都道府県は、前条第一項第一号の規定による報告又は少年法第十八条第二項の規定による送致のあつた児童につき、次の各号のいずれかの措置を採らなければならない。

  1. 児童又はその保護者に訓戒を加え、又は誓約書を提出させること。
  2. 児童又はその保護者を児童相談所その他の関係機関若しくは関係団体の事業所若しくは事務所に通わせ当該事業所若しくは事務所において、又は当該児童若しくはその保護者の住所若しくは居所において、児童福祉司、知的障害者福祉司、社会福祉主事、児童委員若しくは当該都道府県の設置する児童家庭支援センター若しくは当該都道府県が行う障害者等相談支援事業に係る職員に指導させ、又は市町村、当該都道府県以外の者の設置する児童家庭支援センター、当該都道府県以外の障害者等相談支援事業を行う者若しくは前条第一項第二号に規定する厚生労働省令で定める者に委託して指導させること。
  3. 児童を小規模住居型児童養育事業を行う者若しくは里親に委託し、又は乳児院、児童養護施設、障害児入所施設、児童心理治療施設若しくは児童自立支援施設に入所させること
  4. 家庭裁判所の審判に付することが適当であると認める児童は、これを家庭裁判所に送致すること。

○2 都道府県は、肢体不自由のある児童又は重症心身障害児については、前項第三号の措置に代えて、指定発達支援医療機関に対し、これらの児童を入院させて障害児入所施設におけると同様な治療等を行うことを委託することができる。
○3 都道府県知事は、少年法第十八条第二項の規定による送致のあつた児童につき、第一項の措置を採るにあたつては、家庭裁判所の決定による指示に従わなければならない。
○4 第一項第三号又は第二項の措置は、児童に親権を行う者又は未成年後見人があるときは、前項の場合を除いては、その親権を行う者又は未成年後見人の意に反して、これを採ることができない

これらの点が一時保護と里親もしくは施設入所との大きな違いです
児童福祉法第28条には、これらも「家庭裁判所の承認を得て」可能である旨がありますが、基本的には親の同意が必要であるという基本線は変わりません。

児童養護施設と関わっていたとき、職員の方が、保護者が児童の薬物療法に同意しないということで大変困っていました。
施設入所等は親権が喪失したというわけではありませんから、その辺が難しいところです(一時保護も親権が喪失したということを意味するわけではありませんが)。

以上より、選択肢④および選択肢⑤は誤りと判断できます。

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