公認心理師 2018追加-132

児童虐待への対応で法律に定められているものとして、正しいものを2つ選ぶ問題です。

「児童虐待の法律」と言えば、児童福祉法と児童虐待防止法ですね。
児童福祉法は児童福祉に関する基本法ですし、児童虐待防止法はそれに基づきつつより細やかに虐待に関する規定をまとめてあります。

基本的な問題だと思いますから、しっかりと押さえておきましょう。

解答のポイント

児童福祉法、児童虐待防止法の児童虐待対応に関する箇所の把握と理解がなされていること。

選択肢の解説

『①児童虐待を受けていると思われる児童を発見した者は通告する義務がある』

こちらについては児童虐待防止法第6条の「児童虐待に係る通告」に以下の通り規定されています。
児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない

法律で「○○しなければならない」という文言は、それは法的義務であるということを意味しています。
この選択肢については、問題文を読んだ時点で法律と条項が浮かぶくらいになっておいてもよいぐらいのものかもしれませんね。
よって、選択肢①は正しいと判断できます。

『②通告を受けた児童相談所はすべての事例について家庭内に立入調査を行う』

児童虐待防止法第9条では「立入調査」について以下の通り規定が定められています。

  1. 都道府県知事は、児童虐待が行われているおそれがあると認めるときは、児童委員又は児童の福祉に関する事務に従事する職員をして、児童の住所又は居所に立ち入り、必要な調査又は質問をさせることができる。この場合においては、その身分を証明する証票を携帯させ、関係者の請求があったときは、これを提示させなければならない。
  2. 前項の規定による児童委員又は児童の福祉に関する事務に従事する職員の立入り及び調査又は質問は、児童福祉法第二十九条の規定による児童委員又は児童の福祉に関する事務に従事する職員の立入り及び調査又は質問とみなして、同法第六十一条の五の規定を適用する。

上記の児童福祉法第29条については、監護を怠っている親への対応に関する規定なので、虐待をしている場合と見てよいでしょう。

本選択肢の正誤を考えていくのに大切なのは、上記の「児童虐待が行われているおそれがあると認めるときは」という条件です。
選択肢は「通告を受けた事例すべて」という条件ですが、それは児童虐待防止法第9条の内容と齟齬があることがわかります
通告を受けた事例がすべてが「児童虐待が行われている」と判断されるというわけではありませんからね

ちなみに上記第9条第2項において「立入り及び調査又は質問を正当な理由なく拒否をした場合等については、必要に応じて児童福祉法第61条の5の規定を適用する」とされています。
その内容は「正当の理由がないのに、第二十九条の規定による児童委員若しくは児童の福祉に関する事務に従事する職員の職務の執行を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又はその質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、若しくは児童に答弁をさせず、若しくは虚偽の答弁をさせた者は、五十万円以下の罰金に処する」というものです。
罰金ではありませんが、再出頭要求、臨検・捜索等に関する規定が児童虐待防止法にもあります。
併せて把握しておきましょう。

以上より、選択肢②は誤りと判断できます。

『③虐待を受けている児童を児童相談所が一時保護する場合、保護者の同意を得なければ保護してはならない』

一時保護については児童福祉法第33条に規定があります。
特に保護者の同意に関することに関しては、同条第5項に以下のように規定されています。
「前項の規定により引き続き一時保護を行うことが当該児童の親権を行う者又は未成年後見人の意に反する場合においては、児童相談所長又は都道府県知事が引き続き一時保護を行おうとするとき、及び引き続き一時保護を行つた後二月を超えて引き続き一時保護を行おうとするときごとに、児童相談所長又は都道府県知事は、家庭裁判所の承認を得なければならない。ただし、当該児童に係る第二十八条第一項第一号若しくは第二号ただし書の承認の申立て又は当該児童の親権者に係る第三十三条の七の規定による親権喪失若しくは親権停止の審判の請求若しくは当該児童の未成年後見人に係る第三十三条の九の規定による未成年後見人の解任の請求がされている場合は、この限りでない」

必要なのは保護者の同意ではなく、家庭裁判所の承認ということになります。
また、上記には児童福祉法第28条に関しては「この限りではない」、つまりそういった承認が不要であるとされています。

児童福祉法第28条に「保護者が、その児童を虐待し、著しくその監護を怠り、その他保護者に監護させることが著しく当該児童の福祉を害する場合において、第二十七条第一項第三号の措置を採ることが児童の親権を行う者又は未成年後見人の意に反するときは、都道府県は、次の各号の措置を採ることができる」と定められています。

  1. 保護者が親権を行う者又は未成年後見人であるときは、家庭裁判所の承認を得て、第二十七条第一項第三号の措置を採ること。
  2. 保護者が親権を行う者又は未成年後見人でないときは、その児童を親権を行う者又は未成年後見人に引き渡すこと。ただし、その児童を親権を行う者又は未成年後見人に引き渡すことが児童の福祉のため不適当であると認めるときは、家庭裁判所の承認を得て、第二十七条第一項第三号の措置を採ること。

上記の児童福祉法第27条第1項第3号とは「児童を小規模住居型児童養育事業を行う者若しくは里親に委託し、又は乳児院、児童養護施設、障害児入所施設、児童心理治療施設若しくは児童自立支援施設に入所させること」です。

すなわち、一時保護は保護者の同意に関する規定は定められておらず、施設入所や里親に関しては基本的に親の同意が必要ということになります。
上記のように家庭裁判所などの承認を通しても可能ではありますが、一時保護と施設入所等とはその強制力に違いがあることがわかりますね。

以上より、選択肢③は誤りと判断できます。

『④児童養護施設に入所したケースについて、児童と保護者が家庭復帰を希望すれば家庭に戻さなければならない』

児童福祉法第28条第2項には以下のように規定されています。
「前項第一号及び第二号ただし書の規定による措置の期間は、当該措置を開始した日から二年を超えてはならない。ただし、当該措置に係る保護者に対する指導措置の効果等に照らし、当該措置を継続しなければ保護者がその児童を虐待し、著しくその監護を怠り、その他著しく当該児童の福祉を害するおそれがあると認めるときは、都道府県は、家庭裁判所の承認を得て、当該期間を更新することができる

このように、措置は基本的に2年を超えないようにしますが、その間に保護者に指導措置を行っても改善がみられなければ家庭裁判所の承認をもって措置期間を延長できるということになります
選択肢の内容は「児童と保護者が家庭復帰を希望すれば」となっており、その主体が子どもと保護者側にあるような書き方になっている点が誤りです
あくまでも主体は家庭裁判所であり、その承認をもって措置解除を行うか否かが決定されます

以上より、選択肢④は誤りと判断できます。

『⑤要保護児童の在宅支援においては、要保護児童対策地域協議会で関係機関が情報を共有し、協働して支援を行うことができる』

まず要保護児童対策地域協議会にいては、児童福祉法第25条の2に以下の通り規定されています。
「地方公共団体は、単独で又は共同して、要保護児童の適切な保護又は要支援児童若しくは特定妊婦への適切な支援を図るため、関係機関、関係団体及び児童の福祉に関連する職務に従事する者その他の関係者により構成される要保護児童対策地域協議会(以下「協議会」という)を置くように努めなければならない」

そして同条第2項においては「協議会は、要保護児童若しくは要支援児童及びその保護者(又は特定妊婦に関する情報その他要保護児童の適切な保護又は要支援児童若しくは特定妊婦への適切な支援を図るために必要な情報の交換を行うとともに、支援対象児童等に対する支援の内容に関する協議を行うものとする」とその活動に関して規定されています。

また同法第25条の3には「協議会は、前条第二項に規定する情報の交換及び協議を行うため必要があると認めるときは、関係機関等に対し、資料又は情報の提供、意見の開陳その他必要な協力を求めることができる」とされています。

これらから要対協では、関係機関が集まって情報を共有し、協働での支援を行っていくことがわかります。
メンバーはその事例によりますが、児童相談所、市の子ども福祉課(家庭課とか名称はいろいろ)、学校に行っていれば教員やSC、民生委員などなどになります。
各機関1名~3名という感じでしょうか。

以上より、選択肢⑤は正しいと判断できます。

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