公認心理師 2020-32

 医療法に関する理解を問う内容ですが、必要なのは各病院種がどういったことを目的として設置されたかを理解していることです。

明確な知識がなくても2~3択くらいには絞れそうな感じがありますね。

それぞれの病院が担っている機能を理解しておきましょう。

問32 医療法で、「高度の医療技術の開発及び評価を行う能力を有すること」が要件として定められている病院として、正しいものを1つ選べ。

① 救急病院

② 精神科病院

③ 特定機能病院

④ 地域医療支援病院

⑤ 臨床研究中核病院

解答のポイント

各病院の法的根拠、設置要件を把握していること。

選択肢の解説

① 救急病院

消防法2条9項では「救急業務とは、…傷病者のうち、医療機関その他の場所へ緊急に搬送する必要があるものを、救急隊によつて、医療機関その他の場所に搬送することをいう」と定められています。

こちらに基づいて1964年の「救急病院等を定める省令」が定められました。

この省令によると、救急病院とは「消防法第二条第九項に規定する救急隊により搬送される傷病者に関する医療を担当する医療機関は、次の基準に該当する病院又は診療所であつて、その開設者から都道府県知事に対して救急業務に関し協力する旨の申出のあつたもののうち、都道府県知事が、医療法、当該病院又は診療所の所在する地域における救急業務の対象となる傷病者の発生状況等を勘案して必要と認定したものとする」とされています。

救急指定病院の要件は…

  1. 救急医療について、相当の知識及び経験を有する医師が常時診療に従事していること。
  2. エックス線装置、心電計、輸血及び輸液のための設備その他救急医療を行うために必要な施設及び設備を有すること。
  3. 救急隊による傷病者の搬送に容易な場所に所在し、かつ、傷病者の搬入に適した構造設備を有すること。
  4. 救急医療を要する傷病者のための専用病床又は当該傷病者のために、優先的に使用される病床を有すること。

…とされています(省令第1条)。

このように救急病院は、本問の「高度の医療技術の開発及び評価を行う能力を有すること」には該当しないことがわかりますね。

以上より、選択肢①は誤りと判断できます。

② 精神科病院

精神科病院は一般には精神病院とよばれていたが、2006年12月に「精神病院の用語の整理等のための関係法律の一部を改正する法律」が施行され、行政上使用する用語としては「精神科病院」に改められました。

「精神病院」という用語には精神病者を収容する施設というイメージがあって、患者が受診しにくい面があるため、それを改善するための措置とされています。

精神科病院については、精神保健福祉法第19条の7に「都道府県は、精神科病院を設置しなければならない。ただし、次条の規定による指定病院がある場合においては、その設置を延期することができる」と定められております。

また、医療法施行規則第10条3号に、「精神病患者は、原則として精神病室に入院させること」とされておりますが、手術とかでICUに入る場合などは、本法は適用されません。

ですが、こうした例外を除き、精神障害者を入院させている精神科病院の管理者は、その精神科病院に常時勤務する指定医を置かなければならないという要件が定められております。

このように精神科病院は、本問の「高度の医療技術の開発及び評価を行う能力を有すること」には該当しないことがわかりますね。

以上より、選択肢②は誤りと判断できます。

③ 特定機能病院

特定機能病院は、高度の医療の提供、高度の医療技術の開発及び高度の医療に関する研修を実施する能力等を備えた病院として、第二次医療法改正において平成5年から制度化され、令和2年12月1日現在で87病院が承認されています。

承認は厚生労働大臣が個別に行うことになっています。

医療法第4条の2に「病院であつて、次に掲げる要件に該当するものは、厚生労働大臣の承認を得て特定機能病院と称することができる」とあり、以下の事項が定められております。

  1. 高度の医療を提供する能力を有すること。
  2. 高度の医療技術の開発及び評価を行う能力を有すること。
  3. 高度の医療に関する研修を行わせる能力を有すること。
  4. 医療の高度の安全を確保する能力を有すること。
  5. その診療科名中に、厚生労働省令の定めるところにより、厚生労働省令で定める診療科名を有すること。
  6. 厚生労働省令で定める数以上の患者を入院させるための施設を有すること。
  7. その有する人員が第二十二条の二の規定に基づく厚生労働省令で定める要件に適合するものであること。
  8. 第二十一条第一項第二号から第八号まで及び第十号から第十二号まで並びに第二十二条の二第二号、第五号及び第六号に規定する施設を有すること。
  9. その施設の構造設備が第二十一条第一項及び第二十二条の二の規定に基づく厚生労働省令並びに同項の規定に基づく都道府県の条例で定める要件に適合するものであること。

なお、救急医療を提供することは義務付けられていません(救急医療の提供義務は地域医療支援病院ですね)。

この他、具体的な承認の要件は以下の通りです。

  • 高度の医療の提供、開発及び評価、並びに研修を実施する能力を有すること
  • 他の病院又は診療所から紹介された患者に対し、医療を提供すること(紹介率50%以上、逆紹介率40%以上)
  • 病床数…400床以上の病床を有することが必要
  • 人員配置
    医 師:通常の2倍程度の配置が最低基準。医師の配置基準の半数以上がいずれかの専門医。
    薬剤師:入院患者数÷30が最低基準。(一般は入院患者数÷70)
    看護師等:入院患者数÷2が最低基準。(一般は入院患者数÷3)
    管理栄養士:1名以上配置。
  • 構造設備…集中治療室、無菌病室、医薬品情報管理室が必要
  • 医療安全管理体制の整備
    ・医療安全管理責任者の配置
    ・専従の医師、薬剤師及び看護師の医療安全管理部門への配置
    ・監査委員会による外部監査
    ・高難度新規医療技術及び未承認新規医薬品等を用いた医療の提供の適否を決定する部門の設置
  • 原則定められた16の診療科を標榜していること
  • 査読のある雑誌に掲載された英語論文数が年70件以上あること 等

なかなか厳しそうな要件が定められておりますね。

このように、特定機能病院とは、一般的な病院では提供が難しい、先進医療や指定難病の診断、診療技術をもつ病院ということになります。

本問の「高度の医療技術の開発及び評価を行う能力を有すること」に関しては、上記の医療法第4条の2の第2項に定められていますね。

よって、選択肢③が正しいと判断できます。

④ 地域医療支援病院

特定医療支援病院は医療法第4条に「…地域における医療の確保のために必要な支援に関する次に掲げる要件に該当するものは、その所在地の都道府県知事の承認を得て地域医療支援病院と称することができる」とされ、以下のような事項が定められております。

  1. 他の病院又は診療所から紹介された患者に対し医療を提供し、かつ、当該病院の建物の全部若しくは一部、設備、器械又は器具を、当該病院に勤務しない医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療従事者の診療、研究又は研修のために利用させるための体制が整備されていること。
  2. 救急医療を提供する能力を有すること。
  3. 地域の医療従事者の資質の向上を図るための研修を行わせる能力を有すること。
  4. 厚生労働省令で定める数以上の患者を入院させるための施設を有すること。
  5. 第二十一条第一項第二号から第八号まで及び第十号から第十二号まで並びに第二十二条第一号及び第四号から第九号までに規定する施設を有すること。
  6. その施設の構造設備が第二十一条第一項及び第二十二条の規定に基づく厚生労働省令並びに同項の規定に基づく都道府県の条例で定める要件に適合するものであること。

かいつまんで言えば、紹介患者に対する医療の提供(かかりつけ医等への患者の逆紹介も含む)、医療機器の共同利用の実施、救急医療の提供、地域の医療従事者に対する研修の実施が主な役割と言えますね。

原則として、いわゆる紹介外来制を実施している病院となります。

地域医療支援病院は、医療施設機能の体系化の一環として、患者に身近な地域で医療が提供されることが望ましいという観点から設置されています。

そして、紹介患者に対する医療提供や医療機器の共同利用の実施等を通じて、第一線の地域医療を担うかかりつけ(歯科)医等を支援する能力を備えた病院として相応しい構造設備を有する病院として都道府県知事が個別に承認しています。

具体的な承認要件は以下の通りです。

  • 開設主体:原則として国、都道府県、市町村、社会医療法人、医療法人等
  • 紹介患者中心の医療を提供していること
    1.紹介率80%を上回っていること(紹介率が60%以上であって、承認後2年間で当該紹介率が80%を達成することが見込まれる場合を含む)
    2.紹介率が60%を超え、かつ、逆紹介率が30%を超えること
    3.紹介率が40%を超え、かつ、逆紹介率が60%を超えること
  • 救急医療を提供する能力を有すること
  • 建物、設備、機器等を地域の医師等が利用できる体制を確保していること
  • 地域医療従事者に対する研修を行っていること
  • 原則として200床以上の病床、及び地域医療支援病院としてふさわしい施設を有すること

このように地域医療支援病院は、本問の「高度の医療技術の開発及び評価を行う能力を有すること」には該当しないことがわかりますね。

以上より、選択肢④は誤りと判断できます。

⑤ 臨床研究中核病院

臨床研究中核病院は、医療法第4条の3に「病院であつて、臨床研究の実施の中核的な役割を担うことに関する次に掲げる要件に該当するものは、厚生労働大臣の承認を得て臨床研究中核病院と称することができる」とされ、以下の事項が定められております。

  1. 特定臨床研究(厚生労働省令で定める基準に従つて行う臨床研究をいう。以下同じ。)に関する計画を立案し、及び実施する能力を有すること。
  2. 他の病院又は診療所と共同して特定臨床研究を実施する場合にあつては、特定臨床研究の実施の主導的な役割を果たす能力を有すること。
  3. 他の病院又は診療所に対し、特定臨床研究の実施に関する相談に応じ、必要な情報の提供、助言その他の援助を行う能力を有すること。
  4. 特定臨床研究に関する研修を行う能力を有すること。
  5. その診療科名中に厚生労働省令で定める診療科名を有すること。
  6. 厚生労働省令で定める数以上の患者を入院させるための施設を有すること。
  7. その有する人員が第二十二条の三の規定に基づく厚生労働省令で定める要件に適合するものであること。
  8. 第二十一条第一項第二号から第八号まで及び第十号から第十二号まで並びに第二十二条の三第二号、第五号及び第六号に規定する施設を有すること。
  9. その施設の構造設備が第二十一条第一項及び第二十二条の三の規定に基づく厚生労働省令並びに同項の規定に基づく都道府県の条例で定める要件に適合するものであること。
  10. 前各号に掲げるもののほか、特定臨床研究の実施に関する厚生労働省令で定める要件に適合するものであること。

このように、臨床研究中核病院は、日本発の革新的医薬品・医療機器の開発などに必要となる質の高い臨床研究を推進するため、国際水準の臨床研究や医師主導治験の中心的役割を担う病院として定められております。

質の高い臨床研究を実施する病院を、厚生労働大臣が臨床研究中核病院として承認し、名称を独占することで、質の高い臨床研究を推進し、次世代のより良質な医療の提供を可能にしています。

具体的には以下のような目的があります。

  • 臨床研究中核病院が、他の医療機関の臨床研究の実施をサポートし、また、共同研究を行う場合にあっては中核となって臨床研究を実施することで、他の医療機関における臨床研究の質の向上が図られる
  • 臨床研究に参加を希望する患者が、質の高い臨床研究を行う病院を把握した上で当該病院へアクセスできるようになる
  • 患者を集約し、十分な管理体制の下で診療データの収集等を行うことで、臨床研究が集約的かつ効率的に行われるようになる。

このように臨床研究中核病院は、本問の「高度の医療技術の開発及び評価を行う能力を有すること」には該当しないことがわかりますね。

以上より、選択肢⑤は誤りと判断できます。

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