公認心理師 2018追加-35

日本で戸籍上の性別が変更できる要件として、不適切なものを1つ選ぶ問題です。

こちらの判断には「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」をチェックしておく必要があります。
こちらはブループリントにも記載のない法律ですので、興味があったり専門だったりしないと難しかったかもしれません。
(ブループリントには「ジェンダーとセクシャリティ」という項目はありますが)

上記の法律を踏まえて、選択肢の検証を行っていきます。

解答のポイント

性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の内容を把握していること

性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律について

こちらの法律は、性同一性障害者のうち特定の要件を満たす者につき、家庭裁判所の審判により、法令上の性別の取扱いと戸籍上の性別記載を変更できる旨を記したものになります。
それほど多くないので、全文を載せます。

(趣旨)
第一条 この法律は、性同一性障害者に関する法令上の性別の取扱いの特例について定めるものとする。

(定義)
第二条 この法律において「性同一性障害者」とは、生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別(以下「他の性別」という)であるとの持続的な確信を持ち、かつ、自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者であって、そのことについてその診断を的確に行うために必要な知識及び経験を有する二人以上の医師の一般に認められている医学的知見に基づき行う診断が一致しているものをいう

(性別の取扱いの変更の審判)
第三条 家庭裁判所は、性同一性障害者であって次の各号のいずれにも該当するものについて、その者の請求により、性別の取扱いの変更の審判をすることができる
一 二十歳以上であること
二 現に婚姻をしていないこと
三 現に未成年の子がいないこと
四 生殖腺せんがないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること
五 その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること
2 前項の請求をするには、同項の性同一性障害者に係る前条の診断の結果並びに治療の経過及び結果その他の厚生労働省令で定める事項が記載された医師の診断書を提出しなければならない

(性別の取扱いの変更の審判を受けた者に関する法令上の取扱い)
第四条 性別の取扱いの変更の審判を受けた者は、民法(明治二十九年法律第八十九号)その他の法令の規定の適用については、法律に別段の定めがある場合を除き、その性別につき他の性別に変わったものとみなす。
2 前項の規定は、法律に別段の定めがある場合を除き、性別の取扱いの変更の審判前に生じた身分関係及び権利義務に影響を及ぼすものではない。

選択肢の解説

『①生殖機能を欠くこと』

これらの選択肢については、本法第3条に規定があります。

性別の取扱いの変更を認める以上、性ホルモンの作用による影響や、生物学的性別での生殖機能が残存し子が生まれた場合にさまざまな混乱や問題が生じるための要件とされています
「生殖腺がないこと」とは、生殖腺の除去、または何らかの原因で生殖腺がないことを言います。
「生殖腺の機能」とは、生殖機能以外にも、ホルモン分泌機能を含めた生殖腺の働き全般を言います。

よって、選択肢①は適切と判断できます。

『③未成年の子どもがいないこと』

これらの選択肢については、本法第3条に規定があります。
審判を受けた者が後に養子縁組により子どもを持つことは可能です。

よって、選択肢③は適切と判断できます。

『④他の性別の性器の部分に似た外観を備えていること』

これらの選択肢については、本法第3条に規定があります。
公衆の場とくに公衆浴場などで社会的な混乱を生じないために考慮されたものとされています。

よって、選択肢④は適切と判断できます。

『⑤2人以上の医師により性同一性障害と診断されていること』

こちらの選択肢については、本法第2条に規定があります。
適切かつ確実な診断がおこなわれることを確保するための規定です。

この条項の表現を翻訳すると、

  • 「生物学的には性別が明らかである」=
    性染色体や内性器、外性器の形状などにより、生物学的に男性または女性であることが明らかである。
  • 「心理的にはそれとは別の性別であるとの持続的な確信」=
    生物学的には女性(男性)である者が男性(女性)としての意識が、単に一時的なものでなく、永続的にある状態であり、確固として揺るぎなく有している。
この他にも、統合失調症などの精神障害によって他の性別に属していると考える者は「性同一性障害者」に当たりません。
実は「自分は本当は男(女)かも」という表現は、思春期にある子どもたちに結構見られるものです。
こういう場合も性同一性障害と見るのは早計ですね。

よって、選択肢⑤は適切と判断できます。

『②年齢が18歳以上であること』

こちらの選択肢については、本法第3条第1号に「二十歳以上であること」という規定が見られます
民法では満20歳が成年年齢とされています。
また、法的性別の変更という重大な決定において、本人による慎重な判断を要すること等が考慮されたために、この年齢に落ち着いたと考えられます。

20歳未満の場合にも、法定代理人の同意による補完は、個人の人格の基礎である性別における法的な変更には馴染まず、あくまで本人自身の判断が必要であることが考えられました

よって、選択肢②は不適切と言え、こちらを選択することが求められます。

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