公認心理師 2024-127

DSM-5の過食性障害の説明を選択する問題です。

診断基準の把握が求められている、オーソドックスな問題ですね。

問127 DSM-5の過食性障害の説明として、最も適切なものを1つ選べ。
① 定期的な代償行為を伴う。
② 過食のエピソードは空腹感によって起こる。
③ 過食のエピソードの後に罪悪感や嫌悪感を覚える。
④ 過食のエピソードでは時間をかけてゆっくり食べる。

選択肢の解説

① 定期的な代償行為を伴う。
② 過食のエピソードは空腹感によって起こる。
③ 過食のエピソードの後に罪悪感や嫌悪感を覚える。
④ 過食のエピソードでは時間をかけてゆっくり食べる。

まずはDSM-5の過食性障害の基準を見ておきましょう。


A.反復する過食エピソード。過食エピソードは以下の両方によって特徴づけられる。

  1. 他とはっきり区別される時間帯に(例:任意の2時間の間の中で)、ほとんどの人が同様の状況で同様の時間内に食べる量よりも明らかに多い食物を食べる。
  2. そのエピソードの間は、食べることを抑制できないという感覚(例:食べるのをやめることができない、または、食べる物の種類や量を抑制できないという感覚)

B.その過食エピソードは、以下のうち3つ(またはそれ以上)のことと関連している。

  1. 通常よりずっと速く食べる。
  2. 苦しいくらい満腹になるまで食べる。
  3. 他とはっきり区別される時間量よりも明らかに多い食物を食べる。
  4. 身体的に空腹を感じていないときに大量の食物を食べる。
  5. 自分がどんなに多く食べているか恥ずかしく感じるため、1人で食べる。
  6. 後になって、自己嫌悪、抑うつ気分、または強い罪責感を感じる。

C.過食に関して明らかな苦痛が存在する。

D.その過食は、平均して3カ月にわたって少なくとも週1回は生じている。

E.その過食は、神経性過食症のように反復する不適切な代償行動とは関係せず、神経性過食症または神経性やせ症の経過の期間のみに起こるのではない。

該当すれば特定せよ
部分寛解:かつて過食性障害の診断基準をすべて満たしていたが、現在は一定期間過食エピソードが平均して週1回未満の頻度で生じている。
完全寛解:かつて過食性障害の診断基準をすべて満たしていたが、現在は一定期間診断基準のいずれも満たしていない。

現在の重症度を特定せよ
重症度の最も低いものは、過食エピソードの頻度に基づいている(以下を参照)。そのうえで、他の症状や機能の能力低下の程度を反映して、重症度が上がることがある。
 軽度:過食エピソードが週に1~3回
 中等度:過食エピソードが週に4~7回
 重度:過食エピソードが週に8~13回
 最重度:過食エピソードが週に14回以上


これらを踏まえて、各選択肢を確認していきましょう。

まず選択肢②の「過食のエピソードは空腹感によって起こる」については、「身体的に空腹を感じていないときに大量の食物を食べる」というB基準の4から否定されます。

また、選択肢④の「過食のエピソードでは時間をかけてゆっくり食べる」については、「通常よりずっと速く食べる」というB基準の1から否定されます。

更に、選択肢①の「定期的な代償行為を伴う」については、基準Dに「その過食は、神経性過食症のように反復する不適切な代償行動とは関係せず、神経性過食症または神経性やせ症の経過の期間のみに起こるのではない」とありますね。

上記の「神経性過食症のように反復する不適切な代償行動」についてですが、神経性過食症では、過食をして、それをなかったことにするために排出行動(吐く、下剤の使用など)を行うわけですが、こうした「過食をなかったことにする」というのが「代償行動」とされており、こうした「非機能的な代償行動」が回復を妨げていると理解されています。

過食性障害の過食では、こうした「過食‐排出」という枠組みとは無関係に生じるとされているということですね。

選択肢③の「過食のエピソードの後に罪悪感や嫌悪感を覚える」については、B基準の6に「後になって、自己嫌悪、抑うつ気分、または強い罪責感を感じる」とありますから、これが過食性障害の説明として適切と言えますね。

「食行動障害および摂食障害群」の障害として様々ですが、神経性無食欲症・神経性大食症・過食性障害については、別の疾患というよりも、ある程度共通した心理構造の文脈で起こる問題群であると思っています。

また、別の疾患との連続性も感じられることが多く、例えば、「自分がどんなに多く食べているか恥ずかしく感じるため、1人で食べる」と基準内には有りますが、実際には親(特に母親)を連れてファミリーレストランへ行き、テーブルに載らないくらいの料理を注文し、親が見ている前で獣のように食べつくし、それを親にずっと見ているように強制する…といった行動を示す人もいます。

こうした傾向が強くなれば、例えば、境界性パーソナリティ障害との関連を考える等も一般的には考えていくところでしょうから、摂食関連障害と他の疾患とのつながりはかねてから指摘されているところです。

以上より、選択肢①、選択肢②および選択肢④は不適切と判断でき、選択肢③が適切と判断できます。

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