公認心理師 2023-89

高次脳機能障害診断基準に基づく原因を選択する問題です。

明確に出されている基準に沿った理解が求められます。

問89 高次脳機能障害診断基準(平成16年、厚生労働省及び国立障害者リハビリテーションセンター)に基づく高次脳機能障害の原因として、適切なものを1つ選べ。
① 脳性麻痺
② 発達障害
③ 進行性疾患
④ 先天性疾患
⑤ 脳血管障害

解答のポイント

厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 国立障害者リハビリテーションセンターの示している「高次脳機能障害診断基準」を把握している。

選択肢の解説

① 脳性麻痺
② 発達障害
③ 進行性疾患
④ 先天性疾患
⑤ 脳血管障害

本問は厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 国立障害者リハビリテーションセンターの示している「高次脳機能障害診断基準」に関する問題ですね。

基準を引用しつつ解説していきましょう(引用元サイトはこちら)。


「高次脳機能障害」という用語は、学術用語としては、脳損傷に起因する認知障害全般を指し、 この中にはいわゆる巣症状としての失語・失行・失認のほか記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などが含まれる。

一方、平成13年度に開始された高次脳機能障害支援モデル事業において集積された脳損傷者のデータを慎重に分析した結果、 記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害を主たる要因として、日常生活及び社会生活への適応に困難を有する一群が存在し、 これらについては診断、リハビリテーション、生活支援等の手法が確立しておらず早急な検討が必要なことが明らかとなった。

そこでこれらの者への支援対策を推進する観点から、行政的に、この一群が示す認知障害を「高次脳機能障害」と呼び、 この障害を有する者を「高次脳機能障害者」と呼ぶことが適当である。

その診断基準を以下に定める。

Ⅰ.主要症状等
  1. 脳の器質的病変の原因となる事故による受傷や疾病の発症の事実が確認されている。
  2. 現在、日常生活または社会生活に制約があり、その主たる原因が記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害である。
Ⅱ.検査所見

MRI、CT、脳波などにより認知障害の原因と考えられる脳の器質的病変の存在が確認されているか、あるいは診断書により脳の器質的病変が存在したと確認できる。

Ⅲ.除外項目
  1. 脳の器質的病変に基づく認知障害のうち、身体障害として認定可能である症状を有するが上記主要症状(I-2)を欠く者は除外する。
  2. 診断にあたり、受傷または発症以前から有する症状と検査所見は除外する。
  3. 先天性疾患、周産期における脳損傷、発達障害、進行性疾患を原因とする者は除外する。
Ⅳ.診断
  1. Ⅰ〜Ⅲをすべて満たした場合に高次脳機能障害と診断する。
  2. 高次脳機能障害の診断は脳の器質的病変の原因となった外傷や疾病の急性期症状を脱した後において行う。
  3. 神経心理学的検査の所見を参考にすることができる。

なお、診断基準のIとⅢを満たす一方で、Ⅱの検査所見で脳の器質的病変の存在を明らかにできない症例については、慎重な評価により高次脳機能障害者として診断されることがあり得る。
また、この診断基準については、今後の医学・医療の発展を踏まえ、適時、見直しを行うことが適当である。


これらを踏まえて、各選択肢を見ていきましょう。

上記の「主要症状」において「脳の器質的病変の原因となる事故による受傷や疾病の発症の事実が確認されている」とあります。

ただ、この時点では本問で示されている脳性麻痺、発達障害、進行性麻痺、先天性疾患、脳血管障害の全てが原因として挙げられることになってしまいます。

そこで確認していくのが「除外項目」であり、ここには「先天性疾患、周産期における脳損傷、発達障害、進行性疾患を原因とする者は除外する」とあります。

この記述から、選択肢②の「発達障害」、選択肢③の「進行性疾患」、選択肢④の「先天性疾患」は高次脳機能障害の原因から除外されることになります。

また、少しわかりにくいですが「周産期における脳損傷」から、選択肢①の「脳性麻痺」も除外項目になります。

胎児期と新生児期に発生した異常によって、脳性麻痺、精神発達遅滞、てんかん、および知
覚障害などの脳障害が起こることを「周産期脳障害」と呼びますからね。

以上から、高次脳機能障害の原因として残る選択肢は選択肢⑤の「脳血管障害」になるわけですね。

よって、選択肢①、選択肢②、選択肢③および選択肢④は不適切と判断でき、選択肢⑤が適切と判断できます。

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