公認心理師 2021-119

学習障害に関する問題です。

単なる診断基準ではなく、文部科学省がどういう捉え方をしているのかについて問われている印象ですね。

問119 学習障害について、誤っているものを1つ選べ。
① 特別支援教育の対象とされている。
② 特定の領域の学業成績が低くなりやすい。
③ 計画の立案が困難であることにより特徴付けられる。
④ 必要に応じて、頭部画像検査などの中枢神経系の検査が用いられる。
⑤ 聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す。

解答のポイント

文部科学省が定めている学習障害に関する知見を把握している。

選択肢の解説

① 特別支援教育の対象とされている。
② 特定の領域の学業成績が低くなりやすい。
⑤ 聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す。

まずは学習障害の診断基準(DSM-5)について見ていきましょう。


A.学習や学業的技能の使用に困難があり、その困難を対象とした介入が提供されているにもかかわらず、以下の症状の少なくとも1つが存在し、少なくとも6カ月間持続していることで明らかになる:

  1. 不的確または速度が遅く、努力を要する読字(例:単語を間違ってまたゆっくりとためらいがちに音読する、しばしば言葉を当てずっぽうに言う、言葉を発音することの困難さをもつ)
  2. 読んでいるものの意味を理解することの困難さ(例:文章を正確に読む場合があるが、読んでいるもののつながり、関係、意味するもの、またはより深い意味を理解していないかもしれない)
  3. 綴字の困難さ(例:母音や子因を付け加えたり、入れ忘れたり、置き換えたりするかもしれない)
  4. 書字表出の困難さ(例:文章の中で複数の文法または句読点の間違いをする、段落のまとめ方が下手、思考の書字表出に明確さがない)
  5. 数字の概念、数値、または計算を習得することの困難さ(例:数字、その大小、および関係の理解に乏しい、1桁の足し算を行うのに同級生がやるように数字的事実を思い浮かべるのではなく指を折って数える、算術計算の途中で迷ってしまい方法を変更するかもしれない)
  6. 数学的推論の困難さ(例:定量的問題を解くために、数学的概念、数学的事実、または数学的方法を適用することが非常に困難である)

B.欠陥のある学業的技能は、その人の暦年齢に期待されるよりも、著明にかつ定量的に低く、学業または職業遂行能力、または日常生活活動に意味のある障害を引き起こしており、個別施行の標準化された到達尺度および総合的な臨床消化で確認されている。17歳以上の人においては、確認された学習困難の経歴は標準化された評価の代わりにしてよいかもしれない。

C.学習困難は学齢期に始まるが、欠陥のある学業的技能に対する要求が、その人の限られた能力を超えるまでは完全には明らかにはならないかもしれない(例:時間制限のある試験、厳しい締め切り期間内に長く複雑な報告書を読んだり書いたりすること、過度に重い学業的負荷)。

D.学習困難は知的能力障害群、非矯正視力または聴力、他の精神または神経疾患、心理社会的逆境、学業的指導に用いる言語の習熟度不足、または不適切な教育的指導によってはうまく説明されない。

注:4つの診断基準はその人の経歴(発達歴、病歴、家族歴、教育歴)、成績表、および心理教育的評価の臨床的総括に基づいて満たされるべきである。

現在の重症度を特定せよ
軽度:1つまたは2つの学習的領域における技能を学習するのにいくらかの困難さがあるが、特に学齢期では、適切な調整または支援が与えられることにより補償される。またはよく機能することができるほど軽度である。
中等度:1つまたは複数の学習的領域における技能を学習するのに際立った困難さがあるため、学齢期に集中的に特別な指導が行われる期間がなければ学業を習熟することは難しいようである。学校、職場、または家庭での少なくとも1日のうちの一部において、いくらかの調整または支援が、活動を正確かつ効果的にやり遂げるために必要であろう。
重度:複数の学業的領域における技能を学習するのに重度の困難さがあるため、ほとんど毎学年ごとに集中的で個別かつ特別な指導が継続して行われなければ、それらの技能を学習することは難しいようである。家庭、学校、または職場で適切な調整または支援がいくつも次々と用意されていても、すべての活動を効率的にやり遂げることはできないであろう。


上記は知識として知っておくことが求められますが、本問を解くにあたっては、文部科学省が示している定義の方がわかりやすいです。

文部科学省では学習障害を…

  • 学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。
  • 学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。

…と定義しています。

この文部科学省の定義は、選択肢⑤の内容そのままですね。

選択肢②に「特定の領域の学業成績が低くなりやすい」とありますが、具体的には読字・書字・算数などの領域で成績が低くなることが多いですね。

読字障害では、話し言葉の流暢さに比べて簡単な単語であっても読みに苦労し、読みがゆっくりになったり、読み間違いが生じたりします。

また、たとえ正しく読めても、文字から意味を掴むことが難しく、他の人に読んでもらって初めて理解する場合もあります。

書字障害では、一つひとつの文字を書くことが困難で、特に複雑な感じを書くことはきわめて困難とされています。

また、文字を書くことだけではなく「てにをは」の使い間違いや漢字の音読み・訓読みの混乱も見られることがあります。

作文も苦手なことが多く、記述内容にまとまりがなかったりします。

算数障害では、物の大小や重さの比較は可能でも、「3つちょうだい」など数字で表される数の概念操作が困難だったり、指を使って足し算や引き算はできても筆算になると位置取りできずに混乱することがあります。

文章題では課題解決のための数式が立てられないといったこともあります。

こうした障害はいずれも幼児期には顕在化しにくく、学童期になり学習の遅れとして目立つ場合が多いです。

続いて、選択肢①の「特別支援教育の対象とされている」というのは、一種のひっかけ問題になっています。

文部科学省の「学習障害児に対する指導について(報告)」では、学習障害児への指導として「従来の特殊教育の特徴は、教科の指導と並んで障害に基づく種々の困難の改善・克服を目指す自立活動(養護・訓練)の指導を行うことにある。これに対し、学習障害児に対する指導は、特定の能力の困難に起因する教科学習の遅れを補う教科の指導が中心となる。このため、学習障害とは別の理由により教科学習に遅れが見られる児童生徒に対する指導内容・方法と重複する部分も少なくなく、学習障害に特有の指導内容・方法を明確に示すことは現時点では困難である。ただし、反面これは、障害のない児童生徒に対する指導においても、学習障害児に対する指導内容・方法を広く活用することができるということも意味している」としています。

この内容からも、学習障害だからと言って即特別支援教育の枠組みを考えるのではなく、通常学級での指導の工夫が重要になることが読み取れます。

また、学習障害への指導に関しては、通常学級での指導の他、通常の学級以外の場における指導として「通常の学級における授業時間外の個別指導」「特別な場での個別指導」が挙げられ、後者に関しては「通級による指導」に関する記述が中心になっています。

こうした文部科学省のスタンスを把握していると、選択肢①の「特別支援教育の対象とされている」に関しては、けっこう迷うはずですね(なお、この文部科学省のスタンスはADHDでも同様ですね。この2つに関しては、指導法の工夫によって何とかなる面が大きいと見なされているわけです。もちろん、何事も程度によるのでしょうが)。

ただ、これはあくまでも学習障害への教育について述べたものであり、特別支援教育の対象にならないということを意味しているわけではありません。

文部科学省の「4.障害に配慮した教育」の中では、以下のように述べられています。


障害の状態等に応じ、特別支援学校や小・中学校の特別支援学級、通級による指導等において、適切な指導および必要な支援が行われています。
(1)視覚障害
(2)聴覚障害
(3)知的障害
(4)肢体不自由
(5)病弱・身体虚弱
(6)言語障害
(7)自閉症・情緒障害
(8)学習障害
(9)注意欠陥多動性障害
 また、障害により特別な支援を必要とする児童生徒は通常の学級にも在籍しており、全ての学校、学級において発達障害を含めた障害のある児童生徒に対し、一人一人の障害の状態や教育的ニーズ等に応じた指導および支援が求められています。


このように、学習障害も特別支援学校や特別支援学級の対象となっていることがわかりますね。

ちなみに、学校教育法第81条の「その他障害のある者で、特別支援学級において教育を行うことが適当なもの」に学習障害は含まれていることになります。

以上より、選択肢①、選択肢②および選択肢⑤は正しいと判断でき、除外することになります。

③ 計画の立案が困難であることにより特徴付けられる。

「計画の立案が困難」なのは、遂行機能に障害があるということになりますね。

遂行機能には、①意志あるいは目標の設定、②計画の立案、③目的ある行動もしくは計画の実行、④効果的に行動する、といった要素が含まれています。

「問題を解決する」という目標を達成するためには、自分自身や取り巻く環境を客観的に捉えて計画を立てることが必要になります。

そのためには、問題解決に必要な手段・技能・材料・人物などを想起する能力、もしくは解決のための新しいアイディアを発案する生成的思考あるいは発散的推論の能力、認知的柔軟性が必要になります。

そして、それらを評価して必要なものを取捨選択して、行動を方向付ける枠組みを構成・組織化する能力が必要です。

こうした生成的思考に問題があると対人場面では会話を生み出すことができず、言いたいことが言えなさそうに見える、オープンクエスチョンに答えることができない、日常生活では買いたいものがなかった時に代替品を考えることができない等の問題が生じます。

構成・組織化する能力に問題がある場合には、話をまとめることが苦手で、話が回りくどく、話題が飛んだりしてなかなか核心に至らない、買い物時にリストを作らなかったり広い店内で案内図を利用せずに行き当たりばったりになるなどの問題が出てきます。

さて、こうした遂行機能の問題には前頭葉が大きく関わっているため、外傷性脳損傷、脳血管障害、パーキンソン病、認知症(特に前頭側頭型認知症)、脳炎などで遂行機能障害が生じやすいとされています。

各種発達障害、本問のテーマとなっている学習障害でも遂行機能の脆弱さが確認できる事例はあるでしょうが、各発達障害の診断基準として遂行機能障害が明示されているものはありません。

ですから、学習障害でも計画の立案が困難な事例はあり得るでしょうが、それは「学習障害たる特徴」ではありません。

そういう意味では、本選択肢は「実践で遂行機能に問題がある学習障害児をたくさん見ている人」を引っかける内容であったと言えますね。

以上より、選択肢③が誤りと判断でき、こちらを選択することになります。

④ 必要に応じて、頭部画像検査などの中枢神経系の検査が用いられる。

文部科学省の「学習障害児に対する指導について(報告)」では、学習障害の判断・実態把握基準(試案)が示されています。

この中に「専門家チームにおける判断基準と留意事項」があり、その一つとして「医学的な評価:学習障害の判断に当たっては、必要に応じて医学的な評価を受けることとする」が挙げられており、以下のように記述があります。

  • 主治医の診断書や意見書などが提出されている場合には、学習障害を発生させる可能性のある疾患や状態像が認められるかどうか検討する。
  • 胎生期周生期の状態、既往歴、生育歴あるいは検査結果から、中枢神経系機能障害(学習障害の原因となり得る状態像及びさらに重大な疾患)を疑う所見が見られた場合には、必要に応じて専門の医師又は医療機関に医学的評価を依頼する。

上記の通り、中枢神経系機能障害を疑う場合には、その医学的評価が求められます。

この医学的評価の中に、本選択肢の「頭部画像検査」が含まれてきます。

e-ヘルスネットの学習障害(限局性学習症)」にも、「これまでの精神運動発達の様子・病気の罹患歴などを確認し、必要な場合は頭部画像検査などが行われます」とありますね。

f-MRI結果から学習障害児には大きく2つのパターンがあるとされており(こちらを参照)、第一は後頭葉の活性化のみが見られるパターンで、もう一つは左上側頭回の活性化が認められるものの、それよりも左下前頭同の活性化が強いパターンです。

この辺の詳しい理解は専門医でないと困難でしょうが、カウンセラーも知識として頭部画像検査があり得ることも把握しておくと、クライエントへの説明で役立つでしょうね。

以上より、学習障害では必要に応じて頭部画像検査などの中枢神経系の検査が用いられます。

よって、選択肢④は正しいと判断でき、除外することになります。

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