公認心理師 2020-52

 問52はDSM-5の診断基準について問われています。

ここで示されているのはあくまでも「症状」ですから、他の疾患でも生じ得るものばかりです。

障害名が違っても同じ症状を有することもありますから、その辺で混乱しないようにしたいですね(ただし、障害名が違えは同じ症状だとしても、実際に目の前にした時のニュアンスはずいぶん違うものです)。

問52 DSM-5の全般不安症/全般性不安障害の症状について、正しいものを2つ選べ。

① 易怒性

② 抑うつ

③ 強迫念慮

④ 社交不安

⑤ 睡眠障害

解答のポイント

DSM-5の全般不安症/全般性不安障害の診断基準を把握していること。

他の選択肢の症状が生じ得る障害についても把握していること。

選択肢の解説

① 易怒性
⑤ 睡眠障害

DSM-5の全般性不安症/全般性不安障害の診断基準は以下の通りです。

A.(仕事や学業などの)多数の出来事または活動についての過剰な不安と心配(予期憂慮)が、起こる日のほうが起こらない日より多い状態が、少なくとも6ヵ月間にわたる。

B.その人は、その不安を抑制することが難しいと感じている。

C.その不安および心配は、以下の6つの症状のうち3つ(またはそれ以上)を伴っている(過去6ヵ月間、少なくとも数個の症状が、起こる日のほうが起こらない日より多い)。
注:子どもの場合は1項目だけが必要

  1. 落ち着きのなさ、緊張感、または神経の高ぶり
  2. 疲労しやすいこと
  3. 集中困難、または心が空白となること
  4. 易怒性
  5. 筋肉の緊張
  6. 睡眠障害(入眠または睡眠維持の困難、または、落ち着かず熟眠感のない睡眠)

D.その不安、心配、または身体症状が、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

E.その障害は、物質(例:乱用薬物、医薬品)または他の医学的疾患(例:甲状腺機能亢進症)の生理学的作用によるものではない。

F.その障害は他の精神疾患ではうまく説明されない。

このように、診断基準の中に「易怒性」と「睡眠障害」が含まれていることがわかりますね。

よって、選択肢①および選択肢⑤が正しいと判断できます。

② 抑うつ

抑うつ自体は多くの障害で生じ得る、かなり普遍性のある訴えですが、本解説では「抑うつ性障害群」によく見られるものと考えておきます。

DSM-5には抑うつ障害群として「重篤気分調節症」「うつ病/大うつ病性障害」「持続性抑うつ障害(気分変調症)」「月経前不快気分障害」「物質・医薬品誘発性抑うつ障害」「他の医学的疾患における抑うつ障害」「他の特定される抑うつ障害」「特定不能の抑うつ障害」が挙げられています。

うつ病/大うつ病性障害では「その人自身の言葉か、他者の観察によって示される、ほとんど1日中、ほとんど毎日の抑うつ気分」という記載が見られます。

また、持続性抑うつ障害(気分変調症)でも「抑うつ気分がほとんど1日中存在し、それのない日よりもある日の方が多く、その人自身の説明または他者の観察によって示され、少なくとも2年続いている」という記載がありますね。

もちろん、抑うつ障害群の症状は抑うつだけに限定されませんが、重要な指標の一つであることは間違いありませんね。

よって、選択肢②は誤りと判断できます。

③ 強迫念慮

強迫念慮を示す障害としては、強迫症/強迫性障害になります。

強迫性障害は、従来の強迫神経症がほぼ相当し、反復する強迫観念または強迫行為を特徴します。

強迫観念は反復的で侵入的な思考・感情・念慮・感覚を指し、絶えず心を占め、意識的に除去しようとしても取り除けないものです。

強迫行為は駆り立てるように行われる定形化された反復行動を指し、数唱・確認などを含みます。

多くは強迫観念に伴う不安を中和する試みとして生じ、その不合理性や過剰性を自覚し止めたいという意思を伴うことが多いです。

本選択肢の「強迫念慮」は、「強迫観念」の一部であることがわかりますね。

DSM-5の診断基準を抜粋しておきましょう。

A.強迫観念、強迫行為、またはその両方の存在

強迫観念は以下の(1) (2) によって定義される:

  1. 繰り返される持続的な思考、衝動、またはイメージで、それは障害中の一時期には侵入的で不適切なものとして体験されており、たいていの人においてそれは強い不安や苦痛の原因となる。
  2. その人はその思考、衝動、またはイメージを無視したり抑え込もうとしたり、または何か他の思考や行動(強迫行為を行うなど)によって中和しようと試みる。

強迫行為は以下の(1) (2) によって定義される:

  1. 繰り返しの行動(例:手洗い、順番に並べる、確認する)、心の中の行為(例:祈る、数を数える、声を出さずに言葉を繰り返す)であり、それらの行為を行うように駆り立てられていると感じている。
  2. 行動や心の中の行為は、苦痛の予防、緩和、恐ろしい出来事や状況を回避することを目的としているが、それらの行為は状況に対して現実的、有効的ではなく明らかに過剰である

このように、本選択肢の「強迫念慮」は強迫性障害の診断基準に含まれていると考えられます。

よって、選択肢③は誤りと判断できます。

④ 社交不安

社交不安を示す障害としては、社交不安症/社交不安障害になります。

人前での不安や恐怖については、1846年にキャスパーが赤面恐怖の症例を報告しているものの、その後はほとんど報告は見られませんでした。

1960年代になって行動療法家のマークスが、社会的な場面での恐怖を恐怖症の一つとして取り入れたのが実践研究の始まりとされています。

その後、1980年にDSM-Ⅲに社交不安が登場し、その後大規模に研究されるようになってきました。

以前は稀な病態であるという認識が強かったが、大規模な調査の結果、3~13%とという高い生涯有病率であることがわかり、更に社会生活上も問題が大きいことが明らかとなり、「認識も治療もされなかった重大な障害」と見なされるようになりました。

DSM-5の診断基準を抜粋しておきましょう。

A.他者の注目を浴びる可能性のある1つ以上の社交場面に対する、著しい恐怖または不安。例として、社交的なやりとり(例:雑談すること、よく知らない人と会うこと)、見られること(例:食べたり、飲んだりすること)、他者の前でなんらかの動作をすること(例:談話をすること)が含まれる。 注:子どもの場合、その不安は成人との交流だけでなく、仲間達との状況でも起きるものでなければならない。

B.その人は、ある振る舞いをするか、または不安症状を見せることが、否定的な評価を受けることになると恐れている(すなわち、恥をかいたり恥ずかしい思いをするだろう、拒絶されたり、他者の迷惑になるだろう)。

C.その社交的状況はほとんど常に恐怖または不安を誘発する。

注:子どもの場合、泣く、かんしゃく、凍りつく、まといつく、縮みあがる、または、社交的状況で話せないという形で、その恐怖または不安が表現されることがある。

D.その社交的状況は回避され、または、強い恐怖または不安を感じながら堪え忍ばれている。

E.その恐怖または不安は、その社交的状況がもたらす現実の危険や、その社会文化的背景に釣り合わない。

F.その恐怖、不安、または回避は持続的であり、典型的には6ヵ月以上続く。

G.その恐怖、不安、または回避は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こす。

このように、本選択肢の「社交不安」は社交不安障害の診断基準に含まれていると考えられます。

よって、選択肢④は誤りと判断できます。

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