公認心理師 2024-98

緊張型頭痛に関する問題です。

頭痛は抱えている人が多いものですから、その痛み方や箇所などの特徴を踏まえて、どういった背景が考えられるのかアタリをつけられると良いですね。

問98 緊張型頭痛の特徴として、最も適切なものを1つ選べ。
① 片側性である。
② 非拍動性である。
③ 結膜の充血を伴う。
④ 視覚性前兆がある。
⑤ 日常的な動作で悪化する。

選択肢の解説

① 片側性である。
② 非拍動性である。
④ 視覚性前兆がある。
⑤ 日常的な動作で悪化する。

ここではまず、国際頭痛分類第3版による頻発反復性緊張型頭痛の診断基準を参照しましょう。


A.3ヵ月以上を超えて、平均して1ヵ月に1~14日(年間12日以上180日未満)の頻度で発現する頭痛が10回以上あり、かつB~Dを満たす。

B.30分~7日間持続する

C.以下の4つの特徴の少なくとも2項目を満たす
1.両側性
2.性状は圧迫感または締めつけ感(非拍動性)
3.強さは軽度~中等度
4.歩行や階段の昇降のような日常的な動作により増悪しない

D.以下の両方を満たす
1.悪心や嘔吐はない
2.光過敏や音過敏はあってもどちらか一方のみ

E.ほかに最適なICHD-3の診断がない

○平均して、1ヶ月に1日未満(年間12日未満)の発作頻度であれば稀発反復性緊張型頭痛に分類します。
○3ヵ月を超えて、平均して1ヶ月に15日以上(年間180日以上)の発作頻度であれば慢性緊張型頭痛に分類されます。慢性緊張型頭痛では頭痛は数時間から数日間、絶え間なく持続し、軽い吐き気をともなう場合があります。


上記を踏まえて、各選択肢を見ていきましょう。

まず、緊張型頭痛は典型的には両側性になります。

もちろん、バリエーションが豊かな疾患ですから、ときに片側のみの痛みになることもありますが、緊張型頭痛と片頭痛は明確に異なる病気です。

両側‐片側という場所のみでなく、他の症状も併せて総合的に判断することが重要です。

片頭痛は、脳や脳の周囲の血管の拡張や炎症が起こり、その刺激が痛みとして伝わることで引き起こされる頭痛です。

主にこめかみから頭の側面にかけて、ズキンズキンと脈打つような中等症から重症の痛みが繰り返し起こります。

これが上記の基準にある「非拍動性」という表現と関連し、片頭痛は拍動性(脳や脳の周囲の血管の拡張や炎症が起こり、その刺激が痛みとして伝わる)になるわけですね。

片頭痛の診断基準は以下の通りです。


A. B~Dを満たす頭痛発作が5回以上ある。
B. 頭痛発作の持続時間は4~72時間(未治療もしくは治療が無効の場合)
C. 頭痛は以下の4つの特徴の少なくとも2項目を満たす
 ① 片側性
 ② 拍動性
 ③ 中等度~重度の頭痛
 ④ 日常的な動作(歩行や階段昇降)などにより頭痛が増悪する。
   あるいは頭痛のために日常的な動作を避ける
D. 頭痛発作中に少なくとも以下の1項目をみたす
 ① 悪心または嘔吐(あるいはその両方)
 ② 光過敏および音過敏
E. ほかに最適なICHD-3の診断がない


上記の通り、「拍動性‐非拍動性」「片側性‐両側性」というのが片頭痛‐緊張性頭痛で異なることが示されていますね。

また、片頭痛は拍動性ですから、血管の収縮と絡むような行為、上記で言えば「日常的な動作(歩行や階段昇降)など」によって頭痛が増悪することになります。

対して、緊張性頭痛はそうした日常的な動作と関連なく生じるというのが、診断基準でも示されていますね。

緊張型頭痛では、身体的・精神的な理由から筋肉への血液の供給が減少したり、筋肉が硬くなったりして、筋肉や筋膜を支配している神経が過敏になることが要因として挙げられています(こうした生活習慣等による筋肉のコリが要因になっているので、日常的な動作によって生じる血管の収縮等での痛みではない)。

これは脳の感覚の中枢に原因がある中枢性因子という言葉に対して、脳から神経が出た後の末梢の問題ですので末梢性因子と表現されており、一方、末梢の筋肉や筋膜から三叉神経という神経を介して、中枢の脳幹や大脳に伝わり感作されます(こちらは中枢性因子と呼ばれます)。

緊張型頭痛のメカニズムは末梢、中枢いずれの関与も考えられ、発作の頻度が少ない緊張型頭痛では末梢性因子が主に関与し、発作の頻度が高い慢性の緊張型頭痛では三叉神経を介した、末梢と中枢の両者が複雑に関与していると考えられています。

また、片頭痛では頭痛の前に起こる「前兆」症状の有無により、「前兆のある片頭痛」と「前兆のない片頭痛」の二つのタイプに分類されます。

前兆症状は、キラキラした光、ギザギザの光が視界にあらわれ見えづらくなる(閃輝暗点)といった視覚性の症状が最も多く(90%以上)、ほかにもチクチク感や感覚が鈍くなる感覚症状、言葉が出にくくなる言語症状などがあります。

特殊な前兆として、半身の脱力感や回転性めまいを認める場合もあります。

通常は、前兆が5~60分続いた後に頭痛が始まります。

頭痛が始まる前に,なんとなく頭痛が起こりそうな予感や気分の変調、眠気、疲労感、集中力低下、頸部の凝りといった症状を経験する場合がありますが、これは前兆とは区別して「予兆」といいます。

以上より、緊張性頭痛は両側性、非拍動性、日常的動作に影響されない、という基準が示されており、視覚性前兆は片頭痛に多いものであることがわかりますね。

よって、選択肢①、選択肢④および選択肢⑤は不適切と判断でき、選択肢②が適切と判断できます。

③ 結膜の充血を伴う。

「結膜の充血を伴う」頭痛としては、三叉神経・自律神経性頭痛の群に含まれるもの(群発頭痛、発作性片側頭痛、短時間持続性片側神経痛様頭痛発作、持続性片側頭痛)に見られる特徴になります。

ここでは代表的な群発頭痛の基準を示します。


A. B~D を満たす発作が5 回以上ある
B.(未治療の場合に)重度~きわめて重度の一側の痛みが眼窩部、眼窩上部または側頭部のいずれか 1つ以上の部位に、15~180分間持続する
C.以下の1項目以上を認める
   ①頭痛と同側に少なくとも以下の症状あるいは徴候の1項目を伴う
     a) 結膜充血または流涙(あるいはその両方)
     b) 鼻閉または鼻漏(あるいはその両方)
     c) 眼瞼浮腫
     d) 前頭部および顔面の発汗
     e) 縮瞳または眼瞼下垂(あるいはその両方)
    ②落ち着きのない、あるいは興奮した様子
D.発作の頻度は1回/2日~8回/日である
E.ほかに最適なICHD-3の診断がない


群発頭痛が起こる原因や発症のメカニズムについてはまだ解明されていない部分が多くありますが一つの有力な説として考えられているのが、「頸または頸動脈管説」です。

何らかの刺激によって目の奥にある内頸動脈に炎症が起き、血管が拡張すると、血管の周囲にある感覚神経や自律神経の交感神経が血管の通り道である頭蓋骨のトンネル壁に強く圧迫されます。

すると拡張した血管による脈打つような痛みが起こると同時に、痛む血管からの信号を自律神経の副交感神経のセンターである翼口蓋神経節(よくこうがいしんけいせつ)が受け取り、副交感神経が活性化することで、痛みのある側の涙や充血、鼻水、鼻づまりといった症状が生じやすくなると考えられています。

以上のように、結膜の充血を伴うものとして群発頭痛などの三叉神経・自律神経性頭痛が挙げられます。

よって、選択肢③は不適切と判断できます。

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