公認心理師 2022-27

アレルギー反応によるアナフィラキシーショックの症状に関する問題です。

一般的な知識でもいけそうな気がしますが、やはり診断基準や重症度評価をしっかり押さえておくことが大切ですね。

問27 アレルギー反応によるアナフィラキシーショックの症状として、最も適切なものを1つ選べ。
① 顔の腫れ
② 手の震え
③ 気道の拡張
④ 血圧の上昇
⑤ 脈絡の減少

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なし

解答のポイント

Ⅰ型アレルギー反応の内容と治療を理解している。

選択肢の解説

① 顔の腫れ
② 手の震え
③ 気道の拡張
④ 血圧の上昇
⑤ 脈絡の減少

アレルギーは「免疫反応に基づく生体に対する全体的または局所的な障害」と定義され、抗体による液性免疫反応に基づくアレルギーと、感作T細胞による細胞性免疫反応に基づくアレルギーに大別されます。

アレルギーはその発生機序によって大きくⅠ型~Ⅳ型(V型としてバセドウ病の例を分類する場合もある。受容体に対する自己抗体が産生され、その自己抗体による抗原抗体反応がリガンド(機能蛋白質に特異的に結合する物質)と同様に受容体を刺激することで病態が形成されるアレルギーのこと)ここではGell&Coombsのアレルギー反応分類を示します。

上記のようにそれぞれのアレルギー反応に引き起こされる病態があります。

簡単な用語解説だけしておきましょう。

まず「補体」とは、免疫反応を媒介する血中たんぱく質の一群で、抗体が体内に侵入してきた細菌などの異物に結合すると、補体は抗体により活性化され、細胞の細胞膜を壊すなどして生体防御に働きます。

異物に対して抗体が作られますが、これらの抗体は構造の違いによりlgG、lgM、lgE、lgA、lgDの5種類に分類されます。

  • lgG:血液中に一番多く含まれる抗体(70~75%)。細菌や毒素に結合しやすい。
  • lgM:5つの抗体がつながった状態で働く。一番大きなサイズ(分子量)の抗体になり、血液中に含まれる割合としては約10%。感染初期に多い。
  • lgE:Ⅰ型アレルギーに関わる交代であり、血液中に含まれる割合としては0.001%以下と最も少ない。
  • lgA:2つの抗体がつながった状態で働く。母乳に移行するため、母乳を飲む赤ちゃんの免疫機能の維持に役立つ。血液中に含まれる割合としては10~15%であり、粘膜や腸管に多い。
  • lgD:抗体産生を助ける働きがあり、血液中に含まれる割合としては1%以下である。

ちなみに出生前後の抗体量の変化は以下の通りです。

胎児期から10歳前後までの間に抗体量が変化し、lgG抗体は胎盤を通過できるため出生後しばらくは母体からもらった抗体を使用しますが、後に自分で産生できるようになります。

以下では、それぞれの病態に対する概要を述べていくことにしましょう。

まずはⅠ型に関してで、こちらは「アナフィラキシー型」とも呼ばれており、本問で問われているのはこの型の症状になります。

Ⅰ型アレルギーは、即時型アレルギー、アナフィラキシー型、アトピー型とも呼ばれ、通常は非病原性抗体(一般的にアレルゲンと呼ばれる)に対するlgEの異常な産生と、マスト細胞を中心とする下流経路の活性化によって起こる。

血管の透過性が異常に亢進して大量の体液が血管から組織中に漏れ出てしまうため、放っておくと、急激な血圧低下、浮腫、気道閉塞、多臓器不全などに陥ります。

ヒスタミンなどの化学伝達物質が放出されることによって「血管拡張→血圧低下」「毛細血管の透過性亢進→血圧低下および上気道浮腫」「平滑筋収縮→下気道閉塞(上気道浮腫と合わさって呼吸困難を招く)」などが生じるわけです。

症状を種類別に記述すると以下の通りです。

  1. 皮膚・粘膜症状:紅潮、蕁麻疹、血管浮腫、麻疹様発疹、立毛、眼結膜充血、流涙、かゆみ
  2. 呼吸器症状:呼吸困難、気道狭窄、ゼーゼー・ヒューヒュー(ぜん鳴、低酸素血症)、鼻閉、鼻汁、くしゃみ
  3. 持続する消化器症状:腹部の強い痛み、嘔吐
  4. 心血管系症状:胸痛、頻脈、徐脈(まれ)、その他の不整脈、動悸、血圧低下、失神、失禁、ショック、心停止

日本アレルギー学会から出ている「アナフィラキシーガイドライン」に記載のある重症度評価は、腫れ、頻脈、血圧低下などが示されていますね。

選択肢にある「気道の拡張」「血圧の上昇」「脈拍の減少」などはこれらから否定される(逆の内容である)ことがわかるはずですね。

また、アナフィラキシーショックの診断基準についても押さえておきましょう。

浮腫が明確に記載されており、気道狭窄、血圧低下などが基準内に含まれています。

この他、アナフィラキシーショックの症状として「手の震え(選択肢②)」というのは記載のある書籍は見つけられませんでした(あり得ないわけではないと思うけど、アナフィラキシーショックの直接的な症状ではないということ)ので、別視点からも考えてみましょう。

アナフィラキシーショックに対しては、直ちに、血管透過性と気道の筋収縮を抑制する薬剤(アドレナリン、エピネフリン)を注射することが必要になります。

この治療に使われるアドレナリンが体内に増えると手や足の動かす筋肉が刺激され、自分の意思とは関係なしに動いてしまい震えを起こします(ストレス状況で震えがくる、いわゆる武者震いなどもこの現象)。

選択肢②の「手の震え」はそういった視点から設けられた選択肢なのかもしれませんね(アナフィラキシーショックで直接的な症状としては生じないけど、治療に使われるアドレナリンによって生じることもあるということ)。

以上より、手の震え、気道の拡張、血圧の上昇、脈拍の減少はアナフィラキシーショックの症状としては不適切であり、顔の腫れが症状として該当すると言えます。

もう少し詳しく言うと、選択肢③~⑤は実際とアナフィラキシーショックの症状とは逆の内容であり(選択肢③の「気道の拡張」と選択肢④の「血圧の上昇」は明確に逆であり、選択肢⑤の「脈拍の減少」は重症度判定において「頻脈」の方が重視されている)、選択肢②は治療に使われるアドレナリンの副反応として生じるものということですね。

よって、選択肢②、選択肢③、選択肢④および選択肢⑤が不適切と判断でき、選択肢①が適切と判断できます。

ついでにⅡ型以降のアレルギー反応についても簡単に触れておきます。

  • Ⅱ型:lgGが抗原を有する自己の細胞に結合し、それを認識した白血球が細胞を破壊する反応。B型肝炎やC型肝炎などのウイルス性肝炎はこの機序で肝細胞が障害される。ウイルスを体内から除去しようとする生体反応が、結果として肝障害を引き起こすことになる。自己免疫性溶血性貧血、不適合輸血、悪性貧血、リウマチ熱、グッドパスチャー症候群、重症筋無力症、橋本病、円形脱毛症がこの機序で起こることが知られている。
  • Ⅲ型:免疫反応により、抗原・抗体が結合した免疫複合体が形成され、この免疫複合体が血流にのって流れ沈着した部位で、組織を傷害する反応である。免疫複合体の傷害する部位が限局的な部位に留まる場合はアルサス型反応と言い、全身に及ぶ場合を血清病と呼ぶ。この種のアレルギーは2~8時間で発赤や浮腫となって現れる。全身性エリテマトーデス、急性糸球体腎炎、関節リウマチ、過敏性肺臓炎、リウマチ性肺炎、多発性動脈炎、アレルギー性血管炎、シェーグレン症候群などがこの型の例として挙げられる。
  • Ⅳ型:抗原と特異的に反応する感作T細胞によって引き起こされるアレルギー反応で、感作T細胞からマクロファージを活性化する因子などの様々な生理活性物質が遊離し組織傷害を引き起こす。薬物アレルギー、金属アレルギーなどがある。皮内反応は、刺激後1~2日で発赤、硬結となって現れる。接触皮膚炎、ツベルクリン反応、移植免疫、腫瘍免疫、感染アレルギー、薬剤性肺炎、シューグレン症候群、ギランバレー症候群などはこの型のアレルギーで引き起こされる。

これらに関してもさっと目を通しておくと良いでしょう。

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