公認心理師 2020-30

甲状腺機能低下症に関する問題です。

甲状腺機能に問題が起こった場合、どのような反応が現れるかをまとめて覚えておくと良いでしょう。

甲状腺ホルモンの働きを把握しておくことが大切な問題と言えます。

問30 甲状腺機能低下症にみられる症状について、正しいものを1つ選べ。

① 下痢

② 頻脈

③ 眼球突出

④ 傾眠傾向

⑤ 発汗過多

解答のポイント

甲状腺機能の異常によって起こる症状を把握していること。

必要な知識・選択肢の解説

甲状腺ホルモンの働きは大きく分けると3つです。

  1. 細胞の新陳代謝を活発化する:脂肪や糖分を燃焼させてエネルギーを作り出し、全身の細胞の新陳代謝を促進します。また、新陳代謝で得られたエネルギーで体温を調節したり、心臓や胃腸、脳の働きを活性化します。
  2. 交感神経を刺激する:これによって、脈が速くなり、手が震えることもあります。
  3. 成長や発達を促す:母親の胎内で胎児が成長するとき、子どもが正常に成長し、発達するために甲状腺ホルモンは必要不可欠です。さまざまな働きがある中で、主に全身の代謝を高める役割があると言えます。

私たちの体には分泌量を一定に保つための甲状腺刺激ホルモンがあり、血液中のホルモン分泌量のささいな変動も見逃さず、常に一定量を保つような働きをしています。

なお、甲状腺は食べ物に含まれるヨウ素からホルモンを作り、血液中に分泌します。

甲状腺ホルモンの合成と分泌は、下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモンにより調節されており、視床下部-下垂体-甲状腺系にはネガティブフィードバック機構(ホルモンが分泌されて効果を発揮すると、この変化はホルモン分泌を抑制する方向に作用すること)が存在します。

つまり、一般に甲状腺刺激ホルモンの上昇は原発性甲状腺機能低下症を、低下は甲状腺亢進症を示すと考えられます。

なお、原発性甲状腺機能低下症の他に、下垂体や視床下部の異常が原因で甲状腺刺激ホルモン分泌不全となり甲状腺機能低下症となる状態、つまり中枢性甲状腺機能低下症・続発性甲状腺機能低下症もありますが、これらは原発性甲状腺機能低下症に比べると圧倒的に少ないものです。

甲状腺疾患(甲状腺亢進症や機能低下症)の症状は不定愁訴に近いものが多く、甲状腺疾患を疑わないと見逃してしまう可能性が低くありません(一般血液検査の項目には甲状腺ホルモンは含まれていない)。

一方で、甲状腺ホルモンを測定さえすれば甲状腺機能異常が明白となり、昨今実地医家にも普及している頸部エコーを行えば甲状腺腫かどうかが一目瞭然となります。

即ち、重要なのは何をヒントに甲状腺疾患を疑うか、と言えます。 

以下は甲状腺機能低下症と甲状腺機能亢進症の症状をまとめたものです。

甲状腺浮腫や眼球突出がある場合、暑がり・動悸・神経過敏・不眠・発汗・食欲亢進・軟便・体重減少・体温上昇・手指振戦などの甲状腺機能亢進症が疑われる症状がある場合、寒がり・易疲労感・嗜眠・皮膚乾燥・便秘・体重増加・体温低下・浮腫などの甲状腺機能低下症が疑われる症状が見られる場合には、甲状腺疾患を疑うことが重要になります。

このような場合、コレステロール、クレアチンキナーゼ、アルカリフォスファターゼ、クレアチニンアドの臨床化学検査の変化から甲状腺機能異常が疑われる場合は甲状腺機能検査が行われることになります。

コレステロールは比較的短期間の甲状腺機能亢進症でも低下するため無痛性甲状腺炎など破壊性甲状腺機能亢進症でも見られますが、甲状腺機能亢進症に伴う高アルカリホスファターゼ血症はおもに骨由来であり、通常3カ月以上持続しないと上昇しないためバセドウ病など甲状腺機能亢進症の可能性が高くなります。

甲状腺機能亢進症により食後早期の血糖値は軽度上昇し(尿糖は陽性となる)、血球(白血球、赤血球、血小板)は減少傾向を示します。

甲状腺機能低下症ではコレステロールとクレアチニンキナーゼの上昇を認め、肝逸脱酵素(AST、ALT)は中毒症と低下症のいずれでも上昇することがあります。

特に、複数の検査異常が組合わさっている場合に注意する必要があります。

視床下部-下垂体-甲状腺系にはネガティブフィードバック機構が存在するため、甲状腺の病的状態により甲状腺ホルモン分泌に破綻をきたすと血中甲状腺刺激ホルモン濃度に変化が現れます。

高感度の甲状腺刺激ホルモン測定は、甲状腺機能を知る上で最も鋭敏な検査として必要不可欠の検査となっていますから、甲状腺機能異常のスクリーニングにおいては、甲状腺ホルモンと併せて甲状腺刺激ホルモンを測定することが重要です。

これらを踏まえて、各選択肢の解説に入っていきます。

① 下痢

甲状腺機能低下症では便秘に、甲状腺機能亢進症では下痢が症状として現われます。

甲状腺機能亢進症では、甲状腺ホルモン過剰により新陳代謝が亢進、腸の蠕動運動が活発になり、下痢になるとされています。

本選択肢は甲状腺機能亢進症にみられる症状となりますね。

よって、選択肢①は誤りと判断できます。

② 頻脈

甲状腺機能障害による心臓への影響はさまざまです。

甲状腺機能亢進症でも、甲状腺機能低下症でも不整脈や心不全が生じ得るので注意が必要です。

甲状腺機能亢進症では、洞結節に対する交感神経作用と活動電位の持続時間および不応期が短縮することによって頻脈が起こります。

心室細動はT3(血液中の甲状腺ホルモンのこと)による肺静脈起始部の異所性心房組織の変化や心拍出量増加による両心房圧の上昇・左室拡張障害などの血行動態の異常により誘発されます。

一方、甲状腺機能低下症の洞性徐脈は、T3により転写レベルが制御されている心臓ペースメーカー遺伝子の発現低下によって起こります。

甲状腺機能亢進症では、頻脈・親近収縮能亢進・心拍出量増加(50~300%)・末梢血管抵抗低下・心室充満圧上昇・肺血管圧上昇により高心拍出状態となり、心不全に至ることもあります。

一方、甲状腺機能低下症では、1回拍出量減少と心拍数現象により心拍出量は減少します(30~50%)。

また、心筋制御蛋白の発現量変化・循環血液量減少・体血管抵抗増加などにより、心室の収縮力低下と拡張機能低下を来たし、心不全となることもあります。

このように、頻脈は甲状腺機能亢進症の症状と言えます。

よって、選択肢②は誤りと判断できます。

③ 眼球突出

眼球突出が見られる代表的な疾患としてバセドウ病が挙げられます。

バセドウ病は、甲状腺ホルモンが過剰に作られる状態である甲状腺機能亢進症を起こす代表的な病気です。

眼球が収まっている頭蓋骨の空洞を眼窩といい、その内側は眼球を動かす「外眼筋」という筋肉と、その周囲にある「眼窩脂肪」によって埋められています。

バセドウ病では外眼筋や眼窩脂肪に炎症が起き、その炎症による腫れのためにその体積が増え、眼窩内圧(眼窩内の圧力)が高くなります。

その結果、眼球が前へ押し出されて「眼球突出」が起こります。

なお、過剰に分泌されている甲状腺ホルモンが平滑筋を刺激して、その影響で瞼を上下する筋肉が収縮するために起こる現象が「眼瞼後退」になります。

とくに上瞼の筋肉が収縮しやすく瞼が吊り上がったようになり、下を向いたときに白目の部分が大きく見えるので、症状がよりはっきりわかります。

なお、この症状が強いと眼球突出と間違われることがあるので注意が必要です。

以上より、眼球突出はバセドウ病(によって起こる甲状腺機能亢進症)によく見られる症状と言えます。

よって、選択肢③は誤りと判断できます。

④ 傾眠傾向

ここでは、甲状腺機能低下症の症状とその頻度について挙げていきましょう。

  • 無気力:99%
  • 皮膚乾燥:97%
  • 皮膚粗ぞう:97%
  • 嗜眠:91%
  • 言語緩徐:91%
  • 眼瞼浮腫:90%
  • 寒がり:89%
  • 発汗減少:89%
  • 皮膚冷感:83%
  • 舌肥大:82%
  • 顔面浮腫:79%
  • 毛髪粗ぞう:76%
  • 皮膚蒼白:67%
  • 記憶障害:66%
  • 便秘:61%
  • 体重増加:61%
このように、本選択肢である傾眠傾向すなわち嗜眠については、かなりの割合で生じる症状であることがわかります。

甲状腺機能低下症では、甲状腺ホルモンの量が不足して、新陳代謝が低下することで、寒がりで皮膚も乾燥してカサカサになったり、体全体がむくみ、髪も抜け、眠気がありボーッとして活動的でなくなるなどの症状が見られるようになります。

こうした強い眠気(傾眠傾向)は、橋本病(自己免疫の異常により甲状腺に慢性的な炎症が起こる疾患)などの甲状腺機能の低下が見られる病気で生じます。

以上より、選択肢④が正しいと判断できます。

⑤ 発汗過多

甲状腺機能亢進症では甲状腺ホルモンが多くなるため、熱産生の増加および組織の交感神経感受性の亢進があります。

熱産生増加の症状としては、暑がり・発汗過多・体重減少・食欲亢進が見られます。

このように、発汗が多くなるのは甲状腺機能亢進症で見られる症状です。

甲状腺機能低下症では、むしろ発汗が減少します。

以上より、選択肢⑤は誤りと判断できます。

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