公認心理師 2024-126

健常成人において、安静覚醒閉眼時に出現する脳波の成分を答える問題です。

脳波の問題としては基本的なものになっていますね。

問126 健常成人において、安静覚醒閉眼時に出現する脳波の成分として、正しいものを1つ選べ。
① α波
② β波
③ δ波
④ θ波

選択肢の解説

① α波
② β波
③ δ波
④ θ波

まずは各脳波における基本的事項を述べていきましょう。

健常成人が、覚醒安静状態にあって目を閉じている時の脳波としては、10Hz前後で、電位50μV前後のα波が連続して後頭部優勢に出現しており、このα波に、電位10〜20μVの速波が混在しているのが普通です。

α律動の周波数は8〜13Hzと規定されていますが、成人の場合には普通10Hz前後で、8Hz前後の時には「slow alpha activity」といって、何らかの脳機能障害の存在を予想します。

12〜13Hzのα律動を示す者は、健常者のうちにもかなりいるが、10〜11Hzのα律動に比べると、その出現頻度ははるかに低いとされています。

α波よりも周波数が遅い波を総称して「徐波」といい、最も遅いδ波と、中間徐波であるθ波に分けられます。

両者とも覚醒状態にある正常成人の閉眼安静脳波にはほとんど出現しません。

徐波は、生理的には、幼小児の脳波、睡眠時の脳波などに見られ、病的状態としては、てんかん、脳腫瘍、脳血管障害などの種々の器質脳疾患、意識障害、低酸素状態、低血糖など種々の脳の機能障害の際に出現します。

ちなみにδ(デルタ)波は、波形が三角形に見えるところから名付けられました。

θ(シータ)波はWalterという人が発見しましたが、視床(thalamus)付近から出現すると考えていたため、thをとってtheta波と名付けたとされています。

θ波は入眠時の脳波として見られますので、「やっと寝まシータ(θ)」と覚えましょう。

こうしたα波よりも周波数が遅い波があるのに対して、周波数が速い波があり、これを速波と呼びます。

また、13Hz以上の波のことをβ波と呼びますから、速波≒β波という感じで捉えておいて良いと思います。

β波は通常の覚醒時の意識と関連付けられており、また、低振幅で複数の変化する周波数のベータ波は能動的で活発な思考や集中と関連付けられています。

速波は徐波とは異なり正常脳波にもα波とともに出現するが振幅が小さいのが普通であり(10~20uV)、振幅が50uV以上と大きい場合には異常と見なされます。

速波は正常成人の覚醒時に見られるほか入眠時、薬物使用時、にもみられ、病的な場合としては、精神遅滞、頭部外傷、脳手術後などに見られます。

こうした脳波は睡眠との関連が深いので、まとめてみておきましょう。

脳波が意識水準とよく対応して変化することから、脳波パターンによって睡眠状態を分類し、眠りの深さの指標とする試みが重ねられてきました。

睡眠段階については、今日も脳波が主要な指標であることに変わりはないが、眼球運動や筋電図を同時記録する睡眠ポリグラムの変化を総合して判定します。

以下に、各段階ごとの特徴を示していきます。

【段階1】

  • α波の出現パターン間歇的になり、2~7ヘルツの低振幅徐波が現れます。
    徐波=α波より周波数が低いという意味で、δ波(0.5~4Hz未満)とθ波(4~8Hz未満)に分けられます。
  • いわゆる入眠期であり、θ(シータ)波が多いので「やっと寝まシータ」と覚えましょう。
  • ゆっくりとした眼球の振り子運動(slow eye movement:SEM)が見られます。

【段階2】

  • 12~14ヘルツで0.5秒以上の持続をもった明瞭な紡錘波(ノンレム睡眠時の脳波に見られる12~14Hzの波で、律動的に連続して出現し、それが紡錘の形に似ている脳波パターン)が出現します。
    段階2に移ったと判断するには、この紡錘波の存在が必須になります。
  • この段階では持続が0.5秒以上の明瞭なK複合波(瘤波と紡錘波が結合したような形でみられ、音などの感覚刺激で誘発されたり、自発性に出現することもある)が出現することも特徴的です。
  • SEMは停止し、呼吸は規則正しい寝息になります。
  • 男性は覚醒中は腹式呼吸ですが、この時期から胸式呼吸に変わり、これ以降の睡眠中の呼吸運動の性差は無くなります。

【段階3および段階4】

  • 1~2ヘルツのδ波が出現します。
  • 判定区間に占めるδ波の割合によって、50%以上を段階4、20~50%を段階3とします。これらをまとめて「徐波睡眠」と呼ぶこともあります。
  • この段階では呼びかけてもなかなか目を覚ましません。

【REM期】

  • 眠り始めてから1時間半から2時間たつと、脳波パターンは突然低振幅、不規則状態を示し、入眠期とよく似た脳波パターンに変わります。
    ところが通常の入眠期と異なり、閉じたまぶたの下で、眼球が水平方向に急激な速さで運動を繰り返します。
    一般に眼球運動の速さは覚醒水準と関係しており、不安や緊張など高覚醒状態では小刻みな急速眼球運動(rapid eye movement:REM)が連続します。
    この時期がレム期と呼ばれるのは、こうした急速眼球運動が見られることに由来します。
  • 本来は安静にするとレムは減少し、うとうとすると入眠時に特有のセムが現れるはずであり、一方で、レムであれば脳波パターンはβ波が優勢な高覚醒パターンでなければならないはずです。
    しかし、入眠後1時間半から2時間たってから現れる段階1では、レムが現れているにも関わらず、眼を開けて起きたりせず、行動的には眠りの状態が維持されています。
  • つまり、眠っているはずの人に起きている時に表れるはずのレムが見られることから、この睡眠は非常に逆説的といえ、それ故に「逆説睡眠」などと呼ばれています。
  • Jouvetら(1959)によって、顎や頸などの抗重力筋の筋緊張が著しく低下することもレム期の特徴として挙げられるようになり、レム睡眠は脳波・眼球運動・筋電図の3つの指標から判定されるようになりました。

現在では、レム期以外の睡眠段階をまとめてノンレム睡眠(non-REM sleep)と呼んでいます。

以上から、健常成人において、安静覚醒閉眼状態で出現する脳波の成分はα波であると言えます。

よって、選択肢②、選択肢③および選択肢④は誤りと判断でき、選択肢①が正しいと判断できます。

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