コルチゾールの過剰状態に伴う症状を選択する問題です。
「公認心理師 2018追加-100」でコルチゾールの過剰状態について少し書いていますが、ストレス反応の問題だったのでそこまで詳しくは述べていませんでした。
とは言え、読んでおけば外せる選択肢もあったので、やはり過去問は大切です。
問28 慢性的なコルチゾールの過剰状態に伴う症状として、正しいものを1つ選べ。
① 低血糖
② るい痩
③ 眼球突出
④ けいれん
⑤ 満月様顔貌
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解答のポイント
コルチゾールの過剰および欠乏時の症状を把握している。
選択肢の解説
① 低血糖
② るい痩
③ 眼球突出
④ けいれん
⑤ 満月様顔貌
コルチゾールは副腎皮質から分泌しているホルモンです。
副腎は腎臓の上部にある器官であり、構造上は大福餅みたいになっていて「餅」に該当する皮質部分と、「餡」に該当する髄質部分に分けられます。
皮質部分では、電解質(鉱質)コルチコイド(ホルモン名:アルドステロン)と糖質コルチコイド(ホルモン名:コルチゾール)が分泌されており、前者は腎臓での水とナトリウムの再吸収作用があり血圧に関与しており、後者は抗炎症作用があり風邪をひいたときに休息と食事で治るのはこのホルモンの作用が発揮されているためです。
髄質部分では、アドレナリンが分泌され、交感神経伝達物質であるノルアドレナリンも少し分泌されています。
ここでは本問で問われている糖質コルチコイド(コルチゾール)について詳しく見ていきましょう。
コルチゾールは主として免疫系細胞に作用し、抗炎症作用、抗アレルギー作用、免疫抑制作用、糖新生促進・血糖上昇、タンパク質分解促進、精神活動高揚、ACTHの分泌抑制などの作用があります。
コルチゾールが欠乏した場合の症状としては、対ショック脆弱性、色素沈着、虚弱、易疲労感・脱力感、食欲不振・体重減少、低血糖、消化器症状(悪心、嘔吐、便秘、下痢、腹痛)、低血圧、精神異常(無気力、嗜眠、不安、性格変化)、発熱、筋肉痛・関節痛などがあり、アジソン病などが病理としては生じます。
急性の副腎皮質機能低下症では、体重減少、低血圧、発熱、脱水を認め、更にショック、意識障害、けいれんが出現します(アジソン病における急性症状をアジソンクリーゼと呼び、急激に症状が悪化するため、適切な治療を行わないと生命に関わります)。
対して、コルチゾールが欠乏した場合の症状としては、皮膚の暗赤色線条、皮内出血、筋委縮、体幹部肥満、満月様顔貌、骨粗鬆症、損傷治癒遅延、精神症状(統合失調症様)、高血圧、糖尿病などがあり、クッシング病などが病理としては生じます。
満月様顔貌とは、顔に脂肪が沈着して丸くなる状態のことでありムーンフェイスと称されることが多く、一般的にはステロイドの副作用の一つとして知られています。
ステロイドを投与すると、体内のコルチゾールが増えるのと同じことになり糖新生が亢進され、糖の上昇を抑えるためにインスリンの分泌が増えることになります。
このインスリンの受容体は脂肪細胞に多くあり、そこにインスリンが結合することで、脂肪の合成を亢進したり、分解を抑制したりするので、身体に脂肪がつきやすくなり、特に、インスリン感受性が強い脂肪細胞が多くあるといわれる顔や腹部に脂肪がつきやすくなるので、その部分が丸く膨らむのです。
さて、こうしたコルチゾールですが、臨床適用として挙げられているのは以下になります。
- 抗炎症疾患
- 膠原病、気管支喘息、劇症肝炎、多発性硬化症、ネフローゼ症候群、アトピー、リウマチ熱
- アレルギー性疾患:薬物アレルギー、血清病、アナフィラキシーショック
- 白血病:急性白血病、慢性リンパ性白血病
- その他:臓器移植の拒絶反応防止、副腎不全、サルコイドーシス
膠原病は甲状腺機能亢進症の一つであり、その症状として「眼球突出」があります。
眼球が収まっている頭蓋骨の空洞を眼窩といい、その内側は眼球を動かす「外眼筋」という筋肉と、その周囲にある「眼窩脂肪」によって埋められています。
甲状腺機能亢進症では外眼筋や眼窩脂肪に炎症が起き、その炎症による腫れのためにその体積が増え、眼窩内圧(眼窩内の圧力)が高くなります。
その結果、眼球が前へ押し出されて「眼球突出」が起こります。
すなわち、選択肢③の「眼球突出」はコルチゾールが臨床適用である甲状腺機能亢進症の症状であることがわかりますね。
上記を踏まえると、低血糖、るい痩、けいれんはコルチゾールが欠乏した場合の症状であり、満月様顔貌がコルチゾールの過剰状態で生じる症状であると言えます。
また、眼球突出はコルチゾールが臨床適用である甲状腺機能亢進症の症状でしたね。
よって、選択肢①、選択肢②、選択肢③および選択肢④は誤りと判断でき、選択肢⑤が正しいと判断できます。