公認心理師 2024-105

内発的動機づけによる行動を選択する問題です。

これはサービス問題と言って良いでしょうね。

問105 労働者の内発的動機づけによる行動として、最も適切なものを1つ選べ。
① 新商品の開発が楽しかったので、時を忘れて没頭した。
② 昇進の道が開けると言われたので、積極的に仕事に取り組んだ。
③ 老後の生活資金が心配になったので、自発的に投資の勉強を始めた。
④ 利用客から「ありがとう」と言ってもらえることが嬉しかったので、飲食店で長期間勤務した。
⑤ 職場の温度環境に不満をいう同僚が多かったので、新しいエアコンの設置を会社に掛け合った。

選択肢の解説

① 新商品の開発が楽しかったので、時を忘れて没頭した。
② 昇進の道が開けると言われたので、積極的に仕事に取り組んだ。
③ 老後の生活資金が心配になったので、自発的に投資の勉強を始めた。
④ 利用客から「ありがとう」と言ってもらえることが嬉しかったので、飲食店で長期間勤務した。
⑤ 職場の温度環境に不満をいう同僚が多かったので、新しいエアコンの設置を会社に掛け合った。

動機づけのうち、賞罰などの外的要因によって行動が動機づけられることを外発的動機づけと呼び、動機づけの要因が人間の外側にあり、賞を求め、罰を避ける手段として活動がなされます。

これに対して、興味・関心や知的好奇心など、人間の内側から生じるもので活動そのものが目的となっている場合を内発的動機づけと呼びます。

1970年代以降になって、自己決定理論の提唱者であるDeciによって、外発的動機づけと内発的動機づけがどのような関係にあるか、その本質に迫る研究がなされています。

自己決定理論は、デシとライアンによって構築された内発的動機づけ研究から発展してきた理論で、人の成長と発達、ウェルビーイングを導く動機づけの在り方を説明する大きな理論的枠組みです。

認知的評価理論、有機的統合理論、因果志向性理論、基本的心理欲求理論、目標内容理論、対人関係動機づけ理論の6つのミニ理論によって構成されています。

デシらは、外的な報酬によって内発的動機づけが低下する現象を実証的に明らかにしており、これは認知的評価理論によって説明がなされています。

デシはこの理論の中で、外発的報酬が次の3つの点から自らの行動に対する認知的評価に変化をもたらし、内発的動機づけに影響を与えるという説を提唱しました。

  1. 自発的な行動であっても、それに外発的報酬が与えられると、その行動を統制するのは自分ではなく、外部にあるものと認知するようになり、それによって内発的動機づけが弱められる。
  2. 自らの行動について、外部から正のフィードバックが与えられ、有能さと自己決定の感情が高められると、それによって内発的動機づけは強化される。
  3. すべての外発的報酬は、「制御的側面」と「情報的側面」の2つの側面を有している。制御的側面が強ければ、外発的報酬は内発的動機づけを弱めてしまうことがある(これを「アンダーマイニング効果」という)。逆に、情報的側面が強く、有能さと自己決定感が高めることができれば、外発的報酬は内発的動機づけを強化する。

臨床実践で見ていると、確かに金銭などの外的報酬は内発的動機づけを下げることがわかります。

マラソン大会などで「〇位に入ったら課金させてあげる」と言う親が増えてきたと頭を抱えていますが、言われた子どもたちは「〇位」という目標が達成不可能となった時点で、明らかにやる気をなくすのが見て取れます。

上記の通り、外発的動機づけとは「賞罰などの外的要因によって行動が動機づけられることを指し、動機づけの要因が人間の外側にあり、賞を求め、罰を避ける手段として活動がなされるもの」であり、内発的動機づけとは「興味・関心や知的好奇心など、人間の内側から生じるもので活動そのものが目的となっているもの」になります。

この考え方に当てはめていくと、選択肢②の「昇進の道が開けると言われたので、積極的に仕事に取り組んだ」は昇進の道という外側の要因、選択肢③の「老後の生活資金が心配になったので、自発的に投資の勉強を始めた」では老後の生活資金への心配という外側の要因、選択肢④の「利用客から「ありがとう」と言ってもらえることが嬉しかったので、飲食店で長期間勤務した」では利用客からの感謝の言葉という外側の要因、選択肢⑤の「職場の温度環境に不満をいう同僚が多かったので、新しいエアコンの設置を会社に掛け合った」では同僚からの職場環境の不満の訴えという外側の要因によって、それぞれが動機づけられ、動いていることがわかると思います。

ちょっとわかりにくいのが選択肢④の「ありがとう」という感謝の言葉ですが、これも「興味・関心や知的好奇心など、人間の内側から生じるもので活動そのものが目的となっているもの」とは言えませんね。

単純に「興味・関心や知的好奇心など」によって突き動かされているのは、選択肢①の「新商品の開発が楽しかったので、時を忘れて没頭した」になるのは明白です。

以上より、選択肢②、選択肢③、選択肢④および選択肢⑤は不適切と判断でき、選択肢①が適切と判断できます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です