試行錯誤学習・洞察学習・潜在学習

学習心理学の重要概念である、試行錯誤学習・洞察学習・潜在学習について解説します。
比較的わかりやすい概念だと思いますので、きちんと押さえておきましょう。

こうした理解しやすい概念であるほど、難解な専門用語を用いて説明できることが大切です。
単純に覚えすぎると、いざ試験のときになると勉強したこととつながりを感じられなくなりますからね(試験は専門用語での理解が問われている)。

また、複雑な概念をわかりやすく説明することも大切ですが、「それ以上単純にできないライン」もあることを理解しておきましょう。
複雑な概念や現象は、複雑に説明せざるを得ないものである、という考え方も大切です。
過度な単純化は、見落としや不十分な理解への道です。

試行錯誤学習

Thorndike(ソーンダイク)が提唱した、「試行の積み重ねによって問題の解決に至ることから生じる学習」を指します。
猫の問題箱の実験で示されたものです。
「ソーンダイク=損な大工」と考えて「作っては壊し、作っては壊し(試行錯誤、ですね)の損な大工」と覚えておくと良いでしょう。

一般的に、試行錯誤を繰り返すことにより、刺激(S)と反応(R)の結びつきが徐々に強くなり、問題解決にかかる時間は短くなっていくとされます。
また、このS-R連合(刺激と反応の結びつき)には報酬が寄与するとされます。

試行錯誤学習では、徐々に問題解決にかかる時間は短くなりますが、この背景には「効果の法則」があるとされています。
効果の法則とは「学習が生起するためには反応が環境に対して何らかの効果を持つことが必要である」というもので、ソーンダイクが唱えた法則です。

彼によれば、満足をもたらすような行動は神経系の中で状況との結合が強められ、嫌なものあるいは不快なものをもたらすような行動は状況との結合が弱められます。
このようにして生ずる状況=反応(S-R)結合の結果が試行錯誤学習をもたらすと考えるわけです。

効果の法則は、強化と呼ばれる概念の必要性を唱えた法則であり、また観念の連合に代わってS-R結合を考えたものであり、この後の行動理論(スキナーのオペラント条件付け)の発展に影響を与えました。

洞察学習

洞察とは、問題解決事態において、試行錯誤的に解決手段を探していくのではなく、諸情報の統合によって一気に解決の見通しを立てることを指します。

試行錯誤のように問題の解決を学習における学習完成基準への到達へと考えると、試行錯誤的方法においては、試行数の増大に伴い、効果の法則によって徐々に行動の幅が狭まり、同時に成功確率が高くなるという漸増曲線を描きます。

一方、Kohler(ケーラー)はチンパンジーに複雑な課題を出しました。
チンパンジーは無為な試行錯誤を繰り返すよりも、過去経験やその場の様々な状況を統合して、あたかもあらかじめ解決の見通しを立てたかのような行動を取りました。

これは、問題の初期状況において把握された構造が、一定の目的(天井からつるされたバナナを取る)に沿って再構造化・再体制化された結果だと見なされました。
こうした問題状況の中心転換が洞察を構成する最も重要なメカニズムとされ、学習曲線は悉無律的な不連続曲線となることが示されています。

潜在学習

Tolman(トールマン)とHonzik(ホンジック)は、白ネズミを以下の3郡に分けて1日1試行の迷路学習を行いました。

  1. 第1群は迷路の終点に餌を置く。
  2. 第2群は餌無しで訓練する。
  3. 第3群は、最初の10日間は餌無しで訓練を行ったが、11日目からは終点に餌を置く。
この結果、当初は第2群と第3群の成績は第1群に比べて劣っていました。
しかし、第3群では、条件を変化させた翌日の第12試行目から急速に成績は向上し、第1群と同等の結果を得るまでになりました。

すなわち、白ネズミが報酬がない時期にも迷路について学習し「潜在知識」を持ち、その知識は報酬の餌が導入されるやいなや行動として表出したことを示しています。
この事実は、行動の遂行に直接に現われない「潜在的な」学習過程の存在を示すものと解釈されています。

トールマンは、このとき白ネズミの記憶には「認知地図」という認知表象が形成されていると考えました。
すなわち、学習を「刺激反応間の連合の形成」、つまり右や左に曲がると言うような一連の反応を学習しているのではなく「環境の認知のしかたの変化」ととらえ(これをサイン・ゲシュタルトと言います)、認知地図(cognitive map)すなわち迷路の配置図の心的表象(迷路の道筋の内的な地図)を作り上げていたと結論付けたのです。
問題解決に使用され、認知地図の利用によってなされる学習であると考察されたのが潜在学習ということになります。
※ちなみに「サイン・ゲシュタルト」とは、「環境の手がかり」と「生活体(動物)の期待」との間の関係からなる認知過程を指します。。

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