公認心理師 2019-37

問37は記憶モニタリングに関する問題です。
記憶モニタリングとは「自分の頭の中の情報を確認したり、記憶を使って色んなことをするときの結果を捉えたりする過程」のことですね。

問37 メタ記憶的活動のうち、記憶モニタリング(メタ認知的モニタリング)の下位過程として、不適切なものを1つ選べ。
①保持過程
②確信度判断
③既知感判断
④学習容易性判断
⑤ソースモニタリング判断

わかれば簡単というか、実体験に沿って理解しやすい領域だろうと思います。
「保持過程」は明らかに違うのですが、こういう風に出されると逡巡しちゃいますよね。
一つだけ「判断」が付いていないのも、なんか怪しさを感じてしまいます。

さてこちらについては、以下の書籍でコンパクトにまとめてくれていました。

こちらから引用しつつまとめていきたいと思います。

解答のポイント

メタ記憶活動を概観的に理解していること。

メタ記憶測定法

メタ記憶とは、自己の記憶や他者の記憶に関連した個人の認識や知識、理解、思考、経験、活動などを含む広範な概念です。
メタ記憶は大きくメタ記憶的知識(個人が人間の記憶について知っている事柄)とメタ記憶的活動(自己の記憶活動に対する開始、終結、修正、調整など)に分かれます。

このうち、メタ記憶的活動には「何かを記銘しなければならない状況にいる」という認識を持つことや、将来の想起の必要性を自覚すること、刺激材料や記憶課題の性質に合わせて適切な記憶方略を実行すること、自己の記憶活動の効果性を監視すること、自己の既有知識の中に課題遂行に必要な情報が保持されているかどうかを点検することなどが含まれます。
特に、自己の記憶システム内の情報を確認したり、記憶活動による課題遂行の結果を捉えたりする過程は記憶モニタリング(またはメタ認知的モニタリング)と呼ばれています

記憶モニタリングには、記憶にかかわる種々の意思決定や選択、予測、判断、気づきなどが含まれます。
こうした記憶モニタリングに基づいて、実際の記憶活動の目標設定や計画、実行、修正、調整などの記憶コントロール(またはメタ認知的コントロール)が行われます。

メタ記憶的活動は、記憶過程における記銘・保持・想起という諸段階で個人がどのように記憶課題に取り組むかという観点から、以下のように概観することができます

記憶モニタリングは…

  • 記銘段階:
    学習容易性判断:ある刺激項目への記銘学習がどの程度容易であるのか
    学習判断:ある刺激項目が後続のテストでどの程度再生されるか
    既知感判断:ある刺激項目が想起できない時にその項目をどの程度「知っている」と思うか
  • 想起段階:
    既知感判断
    ソースモニタリング判断:ある刺激項目をどこから知り得たか
    確信度判断:再生した答えの正しさについてどの程度自信があるか
…などが含まれます。
以下では、より細やかに解説していきましょう。

選択肢の解説

①保持過程

記憶の過程について、記銘(符号化とも言います)、保持(貯蔵とも言います)、想起(検索とも言います)の三つの段階に分けることができます。
保持とは、取り込まれた情報を内部で保持・貯蔵し、外には表れない段階のことです。
このように、保持過程とは記憶の段階の一つであり、記憶モニタリング過程とは異なると考えられます

ちなみに先述の通り、メタ記憶的活動は、記憶過程における記銘・保持・想起という諸段階で個人がどのように記憶課題に取り組むかという観点から概観できます
自己の記憶システム内の情報を確認したり、記憶活動による課題遂行の結果を捉えたりする過程(=記憶モニタリング過程)が示されていますが、保持過程ではそうした下位過程が示されていないことがわかりますね。

以上より、選択肢①が不適切と判断でき、こちらを選択することが求められます。

②確信度判断

確信度判断は、想起段階で行われる記憶モニタリングであり「再生した答えの正しさについてどの程度自信があるか」で示されます

これは、自分の行った判断がどの程度正しいと自分で感じるのか、という内容を数値に置き換えて表現する手法です。
判断がある確信の程度を超える場合には、その項目に対する判断はより確実なものとして位置づけられ、結果として確信度と比例して正答率が上昇することがこの分析手法の前提となっています。

以上より、選択肢②は適切と判断でき、除外することが求められます。

③既知感判断

既知感判断は、記銘段階および想起段階で行われる記憶モニタリングであり「ある刺激項目が想起できない時にその項目をどの程度「知っている」と思うか」で示されます

既知感判断の正確さを測定するための手続きの一つは、RJR法(再生・判断・再認法)です。
実験参加者に一般知識問題を与え、答えられなかった問題については、多肢選択式の質問形式であれば正しい答えを選べる(=再認できる)かどうかを実験参加者自身に判断させます。
その後、実際に多肢選択式の再認テストを行い、既知感判断の正確さを評価します。
これまでの実験結果の多くでは、実験参加者が正答を再認できないと予測した場合に比べて、再認できると予測した場合のほうが再認成績は高いです。

以上より、選択肢③は適切と判断でき、除外することが求められます。

④学習容易性判断

学習容易性判断は、記銘段階で行われる記憶モニタリングであり「ある刺激項目への記銘学習がどの程度容易であるのか」で示されます

学習容易性判断の正確さを測定する場合、実験参加者が刺激項目を記銘する前に、個々の項目に対して「覚えやすい」「覚えにくい」に関する多段階評定を実験参加者に求めることが多いです。
そうした評定結果と実際の再生テストでの成績との関連が検討されます。

以上より、選択肢④は適切と判断でき、除外することが求められます。

⑤ソースモニタリング判断

ソースモニタリング判断は、想起段階で行われる記憶モニタリングであり「ある刺激項目をどこから知り得たか」で示されます

こちらは、自分が保持している記憶情報が外部からもたらされたものか、あるいは内的に産出されたもの(内的なイメージや思考、想像、夢など)かについて以下のように分かれます。

  1. 2つの異なる外部情報の区別
  2. 2つの異なる内部情報の区別
  3. 外部情報か内部情報かの区別
このうち3は、リアリティモニタリングと呼ばれます。
実験事態としては、1の場合、実験参加者にソース(情報源)の異なる様々な刺激項目を記銘するように教示した後、特定の情報源に由来する項目と別の情報源に由来する項目をどのくらい正確に弁別できるかに焦点が当てられます。

選択肢⑤は適切と判断でき、除外することが求められます。

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