人間が無意識に支配されているとする精神分析や、外的環境に支配されているとする行動主義に対して、人間を自由意思のもつ主体的な存在として捉える立場が人間性心理学です。
マズローはこの立場を、精神分析と行動主義の二大勢力に対して第三勢力の心理学と呼んでいます。
コーチンは人間性心理学の基本的特徴を以下のように述べています(Korchin,S.J.の現代臨床心理学は重要な古典の一つです)。
- 全体論:パーソナリティを理解するためには人間を全体として研究しなければならない。
- 現象学:最も重要なことは人間の直接的体験である。
- 直観的共感的理解:研究者は経験の場から離れず、そこに関与しながら観察することが重要である。
- 個性記述的アプローチ:個人の独自性を常に中心に据えなければならない。
- 目標、価値、希望、将来の重視:これらを成育史的決定因または環境決定因よりも重視する。
- 人間の独自性を強調:人間の行動を機械論的あるいは還元主義的に見るのではなく、選択、創造性、価値づけ、自己実現などの人間独自の性質を強調する。
- 人間の積極面を強調:人間は与えられた刺激に反応する存在であると同時に、みずから前進的に行動していく存在でもあり、課せられた要求に順応するだけでなく、みずから積極的に求めることができる。このパラダイムが現れる以前は人間の行動の病的側面が強調されてきたが、人間の積極的側面を強調する必要がある。
こうした人間性心理学の立場に属する理論家や臨床家としては、実存分析のフランクル、現存在分析のビンスワンガー、欲求階層説のマズロー、クライエント中心療法のロジャーズ、フォーカシングのジェンドリン、ゲシュタルト療法のパールズ、実存心理学のロロ・メイなどになります。
【2018追加-80】