公認心理師 2018追加-3

公認心理師に求められるスーパービジョンについて、最も適切なものを1つ選ぶ問題です。

この「公認心理師に求められる」というところがミソですね。
臨床心理士のときには大丈夫だったことが、公認心理師ではそうもいかないことが出てくる可能性があるわけです。

ちなみに公認心理師2018-46もSVに関する内容でした。
しかも、今回も類似した選択肢がありました。
過去問をしっかりやっておきましょう。

解答のポイント

SVの定義や習熟度に応じて行われる内容について把握していること。
公認心理師法との絡みで考えることができる。

選択肢の解説

『①スーパーバイザーはスーパーバイジーを評価しない』

SVの定義としては「バイザーがバイジーに対して一対一で、臨床実践上のアセスメントと介入の具体的方法について、時間と構造を定めて、継続的に教育・訓練を行うこと」(平木典子,1997)を指します。
具体的には、面接における技法や技術、ケースの概念化、専門職としての役割、バイジーの自己内的・対人的気づき、などを伸ばすことと言えます。

大前提としてSVは教育システムの一つであり、上記のように専門家として成長を促していくことが目的です。
よって、上記のような項目についてバイザーがどの程度の能力を備えているのかを評価し、その評価に応じたSVを行っていくことになります。

SVの機能が「不安を軽減し、心理的に支える」であるという理解に留まっていると、この選択肢でつまづきやすいのだろうと思います。

以上より、選択肢①は不適切と判断できます。

『②スーパービジョンを受ける際クライエントの許可は必要ない』

こちらが問題文にある「公認心理師のスーパービジョンとして」という点を重視した選択肢だと思われます。
公認心理師法第41条では「公認心理師は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。公認心理師でなくなった後においても、同様とする」という秘密保持義務が課せられております。

この条項をどのように運用するかについては、未だ不透明ではあります。
しかし、「クライエントに何も言わずにスーパービジョンを受ける」というのは、この条項に照らすと厳しいように感じます。

例えば、アメリカ心理学会では、スーパービジョンを受ける場合、クライエントに対して「スーパービジョンを受けていること」「スーパーバイザーの氏名」を開示する必要があるとされています。

 このように明確に定められてはいませんが、クライエントに対して、自分がそういった教育システムを受けているということを明言しておくこと、SVの中で話し合うことがあり得ることへの許可は必要になってくると思います。

もしかしたら、この選択肢が臨床心理士と公認心理師の大きな違いなのかもしれません。
臨床心理士がきちんと許可を取っていないということではなく、公認心理師が法的にその義務を有するという意味で。
以上より、選択肢②は不適切と判断できます。

『③スーパービジョンはスーパーバイジーの発達段階に合わせて行われる』

心理臨床大事典(p250)には、各段階における留意点について記載されています

初心者の場合は以下の通りです。

  • 見立ての指導と不安の軽減。
  • コンプレックスに触れるか否かはバイザーのタイミングをはかる技量に委ねられる。
中級者の場合は以下の通りです。
  • 自身のカウンセリングに対する枠組みができあがり、どこかマンネリの状況が漂ってくる時期に多い。
  • 自分を超えたクライエントが続くときに受けると良い。
  • 自分の課題を示すケースに集中して受けるのもいいし、すでに終わっているケースをもう一度初めから検討するような形も良い。
  • 複数のバイザー、性別の異なるバイザーにつくなども視野を広げる良い体験になりやすい。
上級者の場合は以下の通りです。
  • バイザーになっているような段階でも、SVはやはり必要。
  • 上級者にとっての最大のバイザーはクライエント。カウンセリングをクライエントから学ぶ、と言えるのは上級者になってから。
  • 上級者では、人間のみならず、自然や動物、異文化や古典などのあらゆるものがバイザーに成り得る。
以上のように、それぞれの習熟段階に課題があり、それに応じたスーパービジョンがあります
よって、選択肢③が最も適切と判断できます。

『④スーパーバイザーはスーパーバイジーへの心理療法を行う責任を有する』

この選択肢については、公認心理師2018-46にも類似した内容が見受けられますので、ご参照ください。
こちらの解説では教育分析には触れていませんでしたので、今回の解説では教育分析に触れながら行っていきましょう。

こちらの選択肢はSVと教育分析をごっちゃにしたような内容だと思われます。
(教育分析も、心理療法を行う、というのとは違うのでしょうが)

教育分析では、スーパーバイジーの抱える個人的課題についてやりとりし、人格の成長をはかるような形になります。
これはある意味で心理療法の枠組みに近いとも言えるでしょう。

ですが、SVの定義としては「バイザーがバイジーに対して一対一で、臨床実践上のアセスメントと介入の具体的方法について、時間と構造を定めて、継続的に教育・訓練を行うこと」(平木典子,1997)を指します
具体的には、面接における技法や技術、ケースの概念化、専門職としての役割、バイジーの自己内的・対人的気づき、などを伸ばすことと言えます。

このようにSVにおいてバイザーへの心理療法を行う責任を有することはありません。
以上より、選択肢④は不適切と判断できます。

『⑤スーパーバイザーは気づいたことをすべてスーパーバイジーに伝えることが基本である』

心理臨床大事典には以下のように記載されています。
スーパーヴィジョンはスーパーヴァイザーが気づいたことをすべてスーパーヴァイジーに伝えるものではない。このことはカウンセリングでのクライエントにも同じようなことが言えるが、スーパーヴァイジーが消化できることのみ伝え、後は見守るのがよい。何を伝え、何を保留しておくかは、タイミングの問題で、このタイミングは教えることが極めて難しい領域に属している」(p250)

SVにおけるバイザーとバイジーの関係は、同じではないもののカウンセリングのセラピストとクライエントの関係に類似する部分はあります。
SVの中で、ずけずけと言われた経験のあるバイジーは、自身が行うカウンセリングの中で、ずけずけとクライエントに指摘を行うでしょう。
「このような姿であってほしい」という姿でバイザーは接し、それがバイザーの中に染み込んでいくことが重要だと思います。

以上より、選択肢⑤は不適切と判断できます。

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