管理監督者に対する研修内容に関する問題です。
正誤判断はそれほど難しい問題ではないですね。
「心理専門職」の立場と「管理監督者」の立場の両方から、不適切な選択肢について述べることが大切です。
問40 職場の心理専門職として管理監督者研修を行うこととなった。研修内容に盛り込む内容として、不適切なものを1つ選べ。
① セルフケアの方法
② 労働者からの相談対応
③ 代表的な精神疾患の診断法
④ 職場環境からの評価及び改善の方法
⑤ 健康情報を含む労働者の個人情報の保護
解答のポイント
厚生労働省が出している「職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~」における「管理監督者への教育研修・情報提供」の内容を把握していること。
選択肢の解説
① セルフケアの方法
② 労働者からの相談対応
④ 職場環境からの評価及び改善の方法
⑤ 健康情報を含む労働者の個人情報の保護
厚生労働省が出している「職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~」では、「4つのメンタルヘルスケアの推進」が以下の通り定められております。
- セルフケア
- ラインによるケア
- 事業場内産業保健スタッフ等によるケア
- 事業場外資源によるケア
メンタルヘルスケアは、この4つのケアを継続的かつ計画的に実施することが基本となりますが、具体的な推進にあたっては、事業場内の関係者が相互に連携し、いくつかの取組を積極的に推進することが効果的とされています。
その取り組みの一つとして「メンタルヘルスケアを推進するための教育研修・情報提供」が示されており、その中には労働者への教育研修・情報提供、管理監督者への教育研修・情報提供、事業場内産業保健スタッフ等への教育研修・情報提供がそれぞれ示されています。
本問でテーマとなっている「管理監督者への教育研修・情報提供」として以下が示されております。
- メンタルヘルスケアに関する事業場の方針
- 職場でメンタルヘルスケアを行う意義
- ストレス及びメンタルヘルスケアに関する基礎知識
- 管理監督者の役割及び心の健康問題に対する正しい態度
- 職場環境等の評価及び改善の方法
- 労働者からの相談対応(話の聴き方、情報提供及び助言の方法等)
- 心の健康問題により休業した者の職場復帰への支援の方法
- 事業場内産業保健スタッフ等との連携及びこれを通じた事業場外資源との連携の方法
- セルフケアの方法
- 事業場内の相談先及び事業場外資源に関する情報
- 健康情報を含む労働者の個人情報の保護等
なお、心の健康対策に取り組んでいる事業所のうち、心の健康対策の取組内容(複数回答)をみると、「事業所内の相談体制の整備」(44.4%)が最も高く、次いで「労働者への教育研修・情報提供」(42.0%)、「管理監督者への教育研修・情報提供」(38.6%)の順となっています。
この資料からも、管理監督者に対して研修を行うことが重要であるとわかりますね。
このように、本選択肢の内容は上記の「管理監督者への教育研修・情報提供」として挙げられている項目であると言えます。
よって、選択肢①、選択肢②、選択肢④および選択肢⑤は適切と判断でき、除外することになります。
③ 代表的な精神疾患の診断法
精神障害等に係る労災補償状況をみると、請求件数、認定件数とも近年、増加傾向にあるので、労働者の心の健康の保持増進に関して重要な役割を担う管理監督者が精神疾患についての理解を持つことは重要です。
上記の「ストレス及びメンタルヘルスケアに関する基礎知識」「管理監督者の役割及び心の健康問題に対する正しい態度」などでは、その辺の理解も求められるでしょう。
しかし、それは精神疾患を持つ人への接近法などに留まるものであり、本選択肢にある「診断法」になるとその役職の範囲を超えたものになると言えるでしょう。
また、「職場の心理専門職として」行う内容としても不適切であると言えます。
この「職場の心理専門職」がどういった資格を有しているか明記はされていませんが、心理専門職の代表である公認心理師も臨床心理士も精神疾患の診断をすることはできませんから、「精神疾患の診断法」について研修を行うことはできないはずです。
もちろん「代表的な精神疾患の診断基準の紹介」程度ならばあり得る話ですが、併せて心理専門職も管理監督者も「診断」する立場ではないこと、それを行うのは医師であること、そういう事態になったときに医師との連携が重要であることなどを伝えていくことが大切になりますね。
なお、言うまでもなく、診断は医療法に定められている医師の業務になります(医療法第17条)。
以上より、選択肢③が不適切と判断でき、こちらを選択することになります。