こちらの設問は、「学習性無力感」が日常的にはどのような体験なのかを示せるか否かを問うものです。
と言っても、それほど難しく考える必要はなく、どういった経緯でこの概念が提唱されたかを知っておくで解くことが可能です。
解答のポイント
学習性無力感についての基本的内容を理解していること。
学習性無力感について
◎基本情報
セリグマンは、逃避も回避もできない電撃実験が、その後の回避訓練に重大な影響を与えることを実験的に明らかにしました。
イヌに電撃を与えて、それが回避可能か否かで群を分け、その後、回避可能な状況におかれた場合であっても、回避不能であった群のイヌは、解決を諦め受動的に苦痛を受け容れてしまったかのような状態になることが明らかにされています。
そしてこのような効果を「学習性無力感」と呼んでいます。
◎抑うつとの関連
すなわち、強制的・不可避的な不快経験やその繰り返しの結果、何をしても環境に対して影響を及ぼすことができないという誤った全般的ネガティブな感覚が生じることにより、解決への試みが放棄され、あきらめが支配する結果となるということです。
セリグマンは、人間のある種の抑うつの形成にも同様なメカニズムが働くことを指摘しています。
すなわち、喪失体験等を通し、自身が無力であると知覚するということです。
◎教育領域との関連
ドゥエックは教育領域に学習性無力感の問題を適用し、学業不振対策の一環として「帰属変更プログラム」の導入を示しています。
つまり学業不振児は、自分の失敗を能力の欠如に原因を求めて無力感を生じさせているので、彼らに努力不足による失敗であったと誘導的に帰属変更させることによって、無力感の解消と達成への努力を触発させようとしています(こちらとの関連がありますね)。
アブラムソンは「学習性無力感」を、自分は他人より劣っているという「個人的無力感」と、自他の反応全てが望ましい結果と関連しないという「普遍的無力感」から構成されていると考えました。
正しい選択肢
すなわち学習性無力感では、以下がポイントになるように思われます。
- 頑張ってもダメな環境・状況に曝された経験があること。
- 自分が環境に働きかけても影響を及ぼせないという微小体験。
- 全般的な否定的感覚、あきらめが内面を占めること。
以上の内容から、もっとも上記の「学習性無力感」と合致する体験と考えられるのは『④努力が成果に結びつかない体験』と見てよいでしょう。
余談ですが「学習性無力感」のニュアンスについては、色んなところで使われていました。
ドストエフスキーが「地下室の手記」で示した懲罰として、罪人に穴を掘って、その土でその穴を埋めさせる、ということを繰り返す方法を描いています。
古い刑罰に、ハノイの塔の100個バージョンをさせるというものあったということです(普通は3個くらいのイメージですよね)。
これは1秒に1個動かしても、約401垓9693京6841兆3315億年後に完成ということなので、無力感が出てくるのが自然でしょう。