教育現場における開発的カウンセリングで用いられる技法に関する設問です。
カウンセリングの役割として、治療、予防、開発の機能があります。
開発的カウンセリングは、治療モデルに代わる成長モデルによるアプローチであり、より意欲的・健康的な生活を目指す援助です。
Blocherは「開発的カウンセリング」という書物の中で、それを「人間の自由の拡大と、人間の効率性の拡大を目的にするもの」としています。
なお、本問では「開発的カウンセリング」として用いられている選択肢が3つ存在します。
このうち、「より適切と判断できるもの」を2つ選ぶことになりました。
解答のポイント
文部科学省が示している開発的カウンセリングの見解を把握していること。
学校における開発的カウンセリング
学校における開発的カウンセリングについては、文部科学省のホームページに説明が載っています。
「将来、児童生徒が自立して豊かな社会生活が送られるように、児童生徒の心身の発達を促進し、社会生活で必要なライフスキルを育てるなどの人間教育活動を行う」
「全ての児童生徒を対象とし、教科学習や特別活動、総合的な学習など、学級、学校全体の教育活動を通して、児童生徒の成長を促進する」
「開発的カウンセリングは、児童生徒の心理的な発達を促進し、社会生活で必要なライフスキルを育て、困難な問題に対処する力やストレス耐性を高める活動である」
活動の視点として「人権教育」「ライフスキル教育」「キャリア教育」などがありますが、特に「ライフスキル教育」の項目の中で具体的な事項が以下の通り述べられています。
WHO(世界保健機関)は、どの時代、どの文化社会においても、人間として生きていくために必要な力があるとし、それをライフスキルと定義しました。
ライフスキルには、次の10のスキルがあるとされています。
- 意思決定(Decision making):
生活に関する決定を建設的に行う力。様々な選択肢と各決定がもたらす影響を評価し、主体的な意思決定を行うことにより望ましい結果を得る。 - 問題解決(Problem solving):
日常の問題を建設的に処理する力。 - 創造的思考(Creative thinking):
どんな選択肢があるのか、行動の結果がもたらす様々な結果について考えることを可能にし、意思決定と問題解決を助ける。直接経験しないことを考える、アイデアを生み出す力。 - 批判的思考(Critical thinking):
情報や経験を客観的に分析する能力。価値観、集団の圧力、メディアなど、人々の態度や行動に影響する要因を認識し、評価する力。 - 効果的コミュニケーション(Effective communication):
文化や状況に応じた方法で、言語的または非言語的に自分を表現する能力。意見・要望・欲求・恐れの表明やアドバイス・援助を求めることができる。 - 対人関係スキル(Interpersonal relationship skills):
好ましい方法で人と接触・関係の構築・関係の維持・関係の解消をすることができる。 - 自己認識(Self-awareness):
自分自身の性格、長所と短所、欲求などを知ること。 - 共感性(Empathy):
自分が知らない状況に置かれている人の生き方であっても、それを心に描くことができる能力。共感性を持つことで、人々を支え勇気づけることができる。 - 情動への対処(Coping with emotions):
自分や他者の情動を認識し、情動が行動にどのように影響するかを知り、情動に適切に対処する能力。 - ストレス・コントロール(Coping with stress):
生活上のストレッサーを認識し、ストレスの影響を知り、ストレスレベルをコントロールする。ストレッサーに適切に対処し、リラックスすることができる。
選択肢の解説
『②ソシオメトリー』
『③チームティーチング』
『①ピアカウンセリング』
ただし上記書籍(P149~P150)には、開発的カウンセリングの働きかけの窓口は以下の3つあるとされています。
- 個人:従来のカウンセリング
- グループ:ピアカウンセリング
- 学級全体:SSTや構成的エンカウンター(アサーショントレーニングも含まれます)など
- ピアカウンセラーになるには専門的研修が必要になる(カウンセリング辞典)。
- 文部科学省が示している開発的カウンセリングでは「全ての児童生徒を対象」としているため、上記のようにグループという枠組みで行われるとされるピアカウンセリングが該当しない可能性がある。
- 「ピアカウンセリング」という行為が、問題文にある「技法」として捉えてよいか疑問がある。
『④アサーショントレーニング』
また「教師カウンセラー 教育に活かすカウンセリングの理論と実践」の中でも、開発的カウンセリングとして構成的エンカウンターが、そして構成的エンカウンターの中にはアサーショントレーニングがある旨が記載されています。
よって、選択肢④は適切と判断できます。
いつもお世話になっております。
選択肢①ですが、先生の資料室に掲載されてある、第1回問52では、「ピアカウンセリング」ではなく、「ピアサポート」と記載されています。
ピアサポートの場合では、異なる回答になるのでしょうか。
ご多忙のところ,すみません。