公認心理師 2024-147

ストレスプロフィールに基づいた面接において、優先的に確認すべき事項を選択する問題です。

こちらはあまり内容を知らなくても解きやすい問題になっていますね。

問147 35歳の女性A、会社員。半年前に経験者採用で入社した。先月に実施されたストレスチェックの結果、高ストレス者に該当するか否かを判断する補足的な面接を公認心理師Bが行った。Aのストレスプロフィールは次のとおりであった。「心理的な仕事の負担(質)」、「心理的な仕事の負担(量)」、「職場環境によるストレス」は低い。「技能の活用度」、「仕事の適性度」、「働きがい」が低い。ストレス反応は「活気」が低く、「不安感」が強い。「上司からのサポート」、「同僚からのサポート」、「家族や友人からのサポート」が高い。
 BのAへの面接で確認すべき事項として、優先度の高いものを1つ選べ。
① 長時間労働の有無
② 家庭生活における葛藤の有無
③ キャリアに関する悩みの有無
④ 職場の作業環境の問題の有無
⑤ 同僚との人間関係における問題の有無

選択肢の解説

① 長時間労働の有無
② 家庭生活における葛藤の有無
③ キャリアに関する悩みの有無
④ 職場の作業環境の問題の有無
⑤ 同僚との人間関係における問題の有無

まずは本問の「ストレスプロフィール」なるものが何のことであるかを理解しておきましょう。

労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」にはストレスチェックの調査票に関する記述があり、「職業性ストレス簡易調査票」が代表的なものであると考えられます。

この評価のマニュアルとして「職業性ストレス簡易調査票を用いたストレスの現状把握のためのマニュアル‐より効果的な職場環境等の改善対策のために‐」が示されており、こちらにストレスプロフィールなどについて可視化して確認することができますね。

これらに基づいて、本問の解説を行っていきましょう。

事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」では、メンタルヘルスケアの具体的な進め方について、①セルフケア、②ラインによるケア、③事業場内産業保健スタッフ等によるケア、④事業場外資源によるケアの4つのケアをあげています。

調査票の実施の方法や扱い方により、この4つのケアのいずれにおいても、職業性ストレス簡易調査票は有用なツールとして活用できるとされていて、①セルフケアでは、労働者個人が調査票に回答して、紙やコンピュータを用いて結果やその評価を見ることにより、ストレスへの気づきのための資料とする、という方法があります。

②ラインによるケアでは、管理監督者が、いつもと違う労働者に早めに気づき対処することも重要ですが、これに加えて産業保健スタッフや職場のメンバーと協力して、ストレスの要因となる職場環境等を改善していくことが重要です。

調査票を用いて、どのようなストレス要因が問題となっているのか、の情報を収集して、効率よく対策を考えていくことが可能になります。

③事業場内産業保健スタッフ等によるケアでは、労働者からの自発的な相談時、あるいは、健康診断やメンタルヘルスに関する知識の付与等を目的とした健康教育等の機会を利用して、調査票を実施し、その結果を産業医等が判断することにより、ストレス問題を抱えた労働者を早期に発見し早期に対応することが可能となります。

④事業場外資源によるケア、では、事業場外の専門機関が、相談対応時やEAPの中で調査票を使用する方法が考えられます。

職業性ストレス簡易調査票は57項目からなり、仕事のストレス要因、ストレス反応、修飾要因の大きく3つから構成されています。

仕事のストレス要因に関する尺度は9つで、心理的な仕事の量的負担(A項目 No.1~3)と心理的な仕事の質的負担(A項目 No.4~6)、身体的負担(A項目 No.7)、コントロール(A項目 No.8~10)、技術の活用(A項目 No.11)、対人関係(A項目 No.12~14)、職場環境(A項目 No.15)、仕事の適性度(A項目 No.16)、働きがい(A項目 No.17)からなっています。

ストレス反応については、心理的ストレス反応と身体的ストレス反応について測定でき、心理的ストレス反応の尺度は5つで、ポジティブな心理的反応の尺度として活気(B項目 No.1~3)、ネガティブな心理的反応の尺度としてイライラ感(B項目 No.4~6)、疲労感(B 項目 No.7~9)、不安感(B項目 No.10~12)、抑うつ感(B項目 No.13~18)があります。

身体的ストレス反応は身体愁訴についてが11項目(B項目 No.19~29)からなっており、修飾要因としては、上司、同僚、および配偶者・家族・友人からのサポート9項目(各々C項目 No.1,4,7(上司)、No.2,5,8(同僚)、No. 3,6,9(配偶者・家族・友人))および仕事あるいは家庭生活に対する満足度の2項目(D項目 No.1,2)があります。

まとめると、職業性ストレス簡易調査票の構成は以下のようになっております。

  • 仕事のストレス要因:仕事の負担(量)、仕事の負担(質)、身体的負担、対人関係、職場環境、コントロール、技能の活用、適性度、働きがい
  • ストレス反応:活気、イライラ感、疲労感、不安感、抑うつ感、身体愁訴
  • 修飾要因:上司からのサポート、同僚からのサポート、家族や友人からのサポート、仕事や生活の満足度

これらは本事例で示されている内容と合致していることがわかりますね。

本事例の特徴としては以下のようなことが挙げられます。

  • 「心理的な仕事の負担(質)」「心理的な仕事の負担(量)」「職場環境によるストレス」は低い。
  • 「技能の活用度」「仕事の適性度」「働きがい」が低い。
  • ストレス反応は「活気」が低く、「不安感」が強い。
  • 「上司からのサポート」「同僚からのサポート」「家族や友人からのサポート」が高い。

まず選択肢①の「長時間労働の有無」については、「心理的な仕事の負担(量および質)」が低いことから、こちらは面接で優先すべき事項とは言えません。

選択肢②の「家庭生活のストレスの有無」については、「家族や友人からのサポート」が高いことから優先的に面接で問う内容ではないですし、それは選択肢⑤の「同僚との人間関係における問題の有無」も「同僚からのサポート」が高いので同様に優先されない項目ですね。

選択肢④の「職場の作業環境の問題の有無」についても、「職場環境によるストレス」が低いので優先されないことは明白です。

残るのは選択肢③の「キャリアに関する悩みの有無」ですが、こちらは「技能の活用度」「仕事の適性度」「働きがい」が低いことから事例にとって高ストレスになっている要因である可能性が考えられ、それがストレス反応は「活気」が低く、「不安感」が強いということにつながっている可能性もありますね。

ですから、本事例の面接において確認すべき事項として「キャリアに関する悩みの有無」は優先度が高いと考えられます。

以上より、選択肢①、選択肢②、選択肢④および選択肢⑤は優先度が低く、選択肢③が優先度が高いと判断できます。

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