説明に合致する手法を選択する問題です。
書いていてもわかったようなわからんような…となりますが、試験ですから割り切って勉強をするのです。
問8 酸素との結合の有無によって、ヘモグロビンの磁化率が変化することに基づき、脳活動を評価する手法として、適切なものを1つ選べ。
① EEG
② fMRI
③ MEG
④ PET
⑤ SPECT
選択肢の解説
① EEG
Electroencephalography=EEGとは、脳波のことであり、脳の神経活動に伴う振動的な電気信号のことを指します。
シナプス後電位の多数が神経細胞(ニューロン)間で同期したものであり、神経のスパイク活動とは異なります。
頭皮上に置いた電極から非侵襲に計測する頭皮脳波、開頭して脳皮質表面に直接電極を貼り付けて計測する皮質脳波(Electrocorticogram=ECoG)とがあるが、単に脳波と呼ぶときには頭皮脳波を指すのが一般的であり、略称として「EEG」を使います。
周波数(1秒間に発生する波の数)により、遅い周波数の波から順にデルタ波、シータ波、アルファ波、ベータ波、ガンマ波に分類されます。
また、光や音などの刺激の処理に関連して変化する脳活動を事象関連電位(ERP)と呼び、刺激提示を繰り返した場合の脳は信号の事象間平均値として求められます。
頭皮上で計測する脳波は、脳組織の通電率の違いにより複雑に伝播した活動を計測しているため、空間分解能が低くなり、必ずしも電極直下の活動を反映していないことに注意する必要があります。
脳波検査を行うのは、我々の領域で比較的多いのは「てんかんの診断」を行う場合かもしれませんが、それ以外にも脳に起因した意識障害の判定や脳死判定に用いられることがありますね。
例えば、記憶障害があるという話が出れば、真っ先に解離性障害を疑うのではなく、まずは身体的要因であるてんかんの可能性を考えていくのが定石です。
以上より、EEGは「酸素との結合の有無によって、ヘモグロビンの磁化率が変化することに基づき、脳活動を評価する手法」ではないことがわかりますね。
よって、選択肢①は不適切と判断できます。
② fMRI
functional magnetic resonance imaging=fMRIとは、脳機能をMRI(磁気共鳴画像法)を用いて計測する手法のことを指します。
機能的磁気共鳴画像法と訳されますね。
神経活動に伴う局所脳血流量の変化をBOLD(blood oxygenation level dependent)法により画像化することで、機能と脳活動の相関を検証します。
BOLD法とは、血液中に存在する酸素化ヘモグロビン量の変化に伴う磁場変化をMRIにより検出する方法です。
神経活動に伴い局所脳血流量が増加した場合においても、酸素消費量はそれほど増加しないため、静脈での残存酸素量が増加します。
この残存酸素による磁場変化を画像化することで脳活動変化を計測していくわけです。
なお、神経細胞(ニューロン)のスパイク活動(ニューロンからの出力)との関係よりも、脳波などで観察されるシナプス後電位(ニューロンへの入力)の振幅変動との関係が強いことが報告されています。
この方法による計測は、ヒトの脳を対象とした他の非侵襲脳機能計測方法と比較して、空間分離能に優れているものの、局所脳血流量の変化に伴う信号変化を検出しているために、時間分解能が低いという特徴があります。
これらのfMRIの特徴は「酸素との結合の有無によって、ヘモグロビンの磁化率が変化することに基づき、脳活動を評価する手法」と合致することがわかりますね。
よって、選択肢②が適切と判断できます。
③ MEG
Magneto Encephalo Graphy=MEGとは、脳磁図のことであり非侵襲脳機能計測の一つです。
多数の神経細胞の電気的活動によって生じる微弱な磁場変化を、超電導量子干渉計(SQUID)という高感度センサーで検出します。
ミリ秒単位の優れた時間解像度をもつため、脳内処理の時間特性を捉えるのに適しています。
一方、センサー信号からの脳活動源の推定は不良設定問題(解を一意に決めることができない問題)であるため、複数の脳活動が同時発生したときにそれらを空間的に分離することは困難になります。
臨床では、焦点性てんかんの発生源の特定にも用いられています。
こうしたMEGの特徴は「酸素との結合の有無によって、ヘモグロビンの磁化率が変化することに基づき、脳活動を評価する手法」と合致しないことがわかります。
よって、選択肢③は不適切と判断できます。
④ PET
⑤ SPECT
これらは局所脳血流量の変化に基づいて、特定の物質の代謝や神経伝達に関係する部位を画像化する方法になります。
Positron Emission Tomography=PETとは陽電子放射断層撮像法であり、陽電子(ベータ線)を放出する放射線同位体を投与して、その崩壊時に発生するガンマ線を検出することで局所脳血流量の変化を画像化します。
これに対して、Single Photon Emission Computed Tomography=SPECTとは単一電子放射断層撮像法であり、ガンマ線を直接的に放出する放射線同位体を体内に投与することによって、局所脳血流量が増加した部位を画像化します。
SPECTで使用する核種(陽子や中性子の数によって区分される原子・原子核の種類のこと)は一方向にのみガンマ線を放出するのに対して、PETで用いる核種の陽電子の崩壊によるガンマ線は正反対の二方向に放出されます。
このため、SPECTに比べてPETの方が高感度に局所脳血流量の変化を検出可能です。
ともに放射線同位体を体内へ投与するために内部被曝することから、繰り返しの測定は制限されます。
分解能といって、小さな範囲の異常をみる能力はPETの方が優れています。
しかし、検査結果を解析する方法にも進歩があり、SPECT検査でも神経疾患の診断に十分に役立つ所見が得られます。
糖代謝、酸素代謝、そして動脈から酸素を脳組織が取り出している割合など、PET検査でないとわからないことが必要な時以外は、SPECT検査で十分であると思います。
こうしたSPECTやPETの特徴は「酸素との結合の有無によって、ヘモグロビンの磁化率が変化することに基づき、脳活動を評価する手法」と合致しないことがわかります。
よって、選択肢④および選択肢⑤は不適切と判断できます。