公認心理師 2018追加-99

睡眠について、正しいものを1つ選ぶ問題です。

睡眠といえば脳波と切り離せないですね。
睡眠段階の判定には脳波が重要な指標となります。

脳波も基本的な、α波、β波、θ波、δ波などは覚えておきたいところです。
どういった状況でどの波が優勢になるか、なども含めて。
これらは臨床心理士資格試験でも何回も出ていますね。
臨床心理士資格試験の分類表は公開していますから、こちらでご確認ください。

解答のポイント

睡眠、特にレム睡眠とノンレム睡眠の違いを把握していること。

選択肢の解説

『①夢を見るのはノンレム睡眠である』

レム睡眠とノンレム睡眠の夢再生率については、すでにいくつかの知見が示されています。
それによると、レム睡眠の再生率はおよそ80%であるのに対して、ノンレム睡眠の再生率は0~54%に分布し、かなりのばらつきがあります
これは夢の定義と判別基準が研究者間で統一していないこと、覚醒法や聴取法の違いが不一致の原因と考えられていますが、いずれにせよレム睡眠で夢を見ていることが多いのは明らかと言えましょう。

よくレム睡眠は脳が起きていて身体が寝ている、ノンレム睡眠は体が起きていて脳が寝ていると言われますが、レム睡眠では夢という精神作業が行われている割合は高いことに間違いはありません。

以上より、選択肢①は誤りと判断できます。

『②ノンレム睡眠は逆説睡眠とも呼ばれる』
『④全身の骨格筋が緊張するのはレム睡眠である』
『⑤ノンレム睡眠は脳波によって第1期から第6期に分けられる』

脳波が意識水準とよく対応して変化することから、脳波パターンによって睡眠状態を分類し、眠りの深さの指標とする試みが重ねられてきました。
睡眠段階については、今日も脳波が主要な指標であることに変わりはないが、眼球運動や筋電図を同時記録する睡眠ポリグラムの変化を総合して判定します
以下に、各段階ごとの特徴を示していきます。

【段階1】

  • α波の出現パターン間歇的になり、2~7ヘルツの低振幅徐波が現れます。
    徐波=α波より周波数が低いという意味で、δ波(0.5~4Hz未満)とθ波(4~8Hz未満)に分けられます。
  • いわゆる入眠期であり、θ(シータ)波が多いので「やっと寝まシータ」と覚えましょう。
  • ゆっくりとした眼球の振り子運動(slow eye movement:SEM)が見られます。

【段階2】

  • 12~14ヘルツで0.5秒以上の持続をもった明瞭な紡錘波(ノンレム睡眠時の脳波に見られる12~14Hzの波で、律動的に連続して出現し、それが紡錘の形に似ている脳波パターン)が出現します。
    段階2に移ったと判断するには、この紡錘波の存在が必須になります。
  • この段階では持続が0.5秒以上の明瞭なK複合波(瘤波と紡錘波が結合したような形でみられ、音などの感覚刺激で誘発されたり、自発性に出現することもある)が出現することも特徴的です。
  • SEMは停止し、呼吸は規則正しい寝息になります。
  • 男性は覚醒中は腹式呼吸ですが、この時期から胸式呼吸に変わり、これ以降の睡眠中の呼吸運動の性差は無くなります。
【段階3および段階4】
  • 1~2ヘルツのδ波が出現します。
  • 判定区間に占めるδ波の割合によって、50%以上を段階4、20~50%を段階3とします。これらをまとめて「徐波睡眠」と呼ぶこともあります。
  • この段階では呼びかけてもなかなか目を覚ましません。
【REM期】
  • 眠り始めてから1時間半から2時間たつと、脳波パターンは突然低振幅、不規則状態を示し、入眠期とよく似た脳波パターンに変わります。
    ところが通常の入眠期と異なり、閉じたまぶたの下で、眼球が水平方向に急激な速さで運動を繰り返します。
    一般に眼球運動の速さは覚醒水準と関係しており、不安や緊張など高覚醒状態では小刻みな急速眼球運動(rapid eye movement:REM)が連続します。
    この時期がレム期と呼ばれるのは、こうした急速眼球運動が見られることに由来します。
  • 本来は安静にするとレムは減少し、うとうとすると入眠時に特有のセムが現れるはずであり、一方で、レムであれば脳波パターンはβ波が優勢な高覚醒パターンでなければならないはずです。
    しかし、入眠後1時間半から2時間たってから現れる段階1では、レムが現れているにも関わらず、眼を開けて起きたりせず、行動的には眠りの状態が維持されています
  • つまり、眠っているはずの人に起きている時に表れるはずのレムが見られることから、この睡眠は非常に逆説的といえ、それ故に「逆説睡眠」などと呼ばれています
  • Jouvetら(1959)によって、顎や頸などの抗重力筋の筋緊張が著しく低下することもレム期の特徴として挙げられるようになり、レム睡眠は脳波・眼球運動・筋電図の3つの指標から判定されるようになりました

現在では、レム期以外の睡眠段階をまとめてノンレム睡眠(non-REM sleep)と呼んでいます。
以上より、各選択肢について以下のような点を述べることができます。

選択肢②にある「逆説睡眠」は、ノンレム期ではなくレム期に特徴的です
レム期は本来覚醒しているはずの脳波を示しているのに、眠っているという点が「逆説的」ということですね。
ただし、現在ではあまり「逆説睡眠」という表現は使わないようです。
あくまでも歴史的な流れをしっかり把握しているかを問うているものと思われます。

選択肢④にある「全身の骨格筋が緊張する」のはレム睡眠ではなくノンレム睡眠です
先述したように、レム期に筋緊張が著しく低下することが発見され、睡眠判定として筋電図も用いられるようになったという経緯があります。

選択肢⑤にある「第1期から第6期」は誤りで、ノンレム睡眠は全4期で構成されています
これに「覚醒段階」と「レム期」が加わってくるわけですね。

以上より、選択肢②、選択肢④および選択肢⑤は誤りと判断できます。

『③陰茎の勃起が起こるのはレム睡眠である』

夜間陰茎勃起現象は、性的興奮や自意識とは関係のない状態で陰茎が勃起している現象であり、俗にいう「朝立ち」のことを指します(シティハンターの描写でよく出てきますね)。
これは多く男性の陰茎に起こる現象を指して称されていますが、構造が似ている女性の陰核にも同様の現象は起こるとされています。

勃起はレム睡眠と連動して起こることが知られています。
こうした勃起はレム睡眠の開始に平均2.5分先行して始まり、レム睡眠の終了約40秒前から萎縮が始まります
朝方はレム睡眠が多いため、レム睡眠から覚醒する機会も多く、そのため血液輸送が間に合わないので勃起状態で目覚めることになります
俗に「朝立ち」と呼ばれますが、朝だから陰茎の勃起が起きるのではなく、朝にレム睡眠から覚醒する機会が多いためというのが理由となります。

これらは夢内容とは無関係におこる自律神経機能の変化であり、勃起能力や射精能力を正常に発達、維持するのに重要であるとされています。

以上より、選択肢③が正しいと判断できます。

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