公認心理師 2024-36

達障害者支援法で規定されている発達障害の名称に関する問題です。

知識を持っていることで迷いが生じるというタイプの問題になっています。

問36 発達障害者支援法で規定されている発達障害の名称に該当しないものを1つ選べ。
① 自閉症
② 学習障害
③ 社会的行動障害
④ アスペルガー症候群
⑤ 注意欠陥多動性障害

選択肢の解説

① 自閉症
② 学習障害
③ 社会的行動障害
④ アスペルガー症候群
⑤ 注意欠陥多動性障害

本問の内容については、第2条の「定義」を見ていきましょう。


  1. この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。
  2. この法律において「発達障害者」とは、発達障害がある者であって発達障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受けるものをいい、「発達障害児」とは、発達障害者のうち十八歳未満のものをいう。
  3. この法律において「社会的障壁」とは、発達障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。

こうした各法律に定められている「定義」は、とても大切なものですから、きっちりと覚えておきたいところですね。

わかっているでしょうが、第1号の自閉症およびアスペルガー症候群は「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」に、広汎性発達障害は「神経発達症群/神経発達障害群」に、かつて広汎性発達障害に含まれなかった注意欠陥多動性障害は「神経発達症群/神経発達障害群」の1カテゴリーとしてDSM-5では変更されています。

発達障害者支援法が規定された当時は、いわゆる「発達障害:広汎性発達障害」の中にADHDは含まれていませんでしたから、その辺の知識を持っている人は多少迷ったかもしれないですね。

法律と医療の表記が合致していないので(法律ができた後にDSMの改訂などがあるため)、その辺はDSMの改定前・後を把握し、自分で読み替えて読み進める必要があります。

そのように考えると、「最新の版」だけを覚えておけばよいのではないことがわかるはずですね。

さて、本問で挙げられた選択肢のうち、上記の定義で挙げられているのは、選択肢①の「自閉症」、選択肢②の「学習障害」、選択肢④の「アスペルガー症候群」、選択肢⑤の「注意欠陥多動性障害」であることがわかりますね。

発達障害者支援法で規定されていない、選択肢③の「社会的行動障害」についてです。

交通事故や脳出血などで脳を損傷すると、後遺症として、記憶や注意などの認知機能低下のほかに、「感情や欲求がおさえられない」「すぐ怒る」「何もやる気がない」など、社会生活に大きく影響するような問題行動を生じることがあります。

このような脳損傷によって生じる行動障害を「社会的行動障害」と呼びます。

社会的行動障害は、行動によるその時々の直接の問題とともに、家族を含む周辺の人々との関係に持続的な影響を及ぼす点に特徴があります。

症状の頻度として最も多いのは「感情コントロールの障害、易怒性」であり、次いで「金銭管理が困難」「対人技能の拙劣」「意欲・発動性の低下、アパシー」「固執性」「暴言・大声」などが多く見られるとされています。

頻度は決して多くはありませんが、家庭生活や社会生活を困難にするのは、暴力・他害行為や万引き、ストーカー行為など触法行為や反社会的な行動に至る場合です。

これらの症状や行動は、高次脳機能障害者が地域生活に移行する初期の段階から、適切な治療や生活訓練あるいは継続した地域支援を受けられていないために起きている可能性があります。

上記の通り、発達障害者支援法で規定されている発達障害の名称に該当しないものは社会的行動障害であると言えますね。

よって、選択肢①、選択肢②、選択肢④および選択肢⑤は該当すると判断でき、選択肢③が該当しないと判断できますから、選択肢③を選択することが求められます。

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