ケース・フォーミュレーション

査定領域に示されている「ケース・フォーミュレーション」についてです。
問題を細やかに把握し、それを理解できる形にし、どこから手を付けることが適切かということについては、古くから様々な領域で行われてきました。
それをクライエントと共にという点が、ケース・フォーミュレーションでは強調されていますね。

概要

ケース・フォーミュレーションは「介入の対象となる問題の成り立ちを説明する仮説」と定義されます。
問題の芽、発現、維持のプロセスに関する仮説と言えますね。

通常はCl、関係者が理解しやすいように、問題の構成要素の関連性を簡略化して図に示すことが多いです。
近年、こういった手法はポピュラーなものになっていますね(村山正治先生のPCAGIP法など)。
Clにとって「よくわからない」ものを、各要素が絡み合った「意味ある現象」として眼前に置くことができ、問題の外在化が自然と行われるアプローチでもあります。

ケース・フォーミュレーションは基本的にカウンセラーとクライエントの共同作業によって行われます。
クライエントの情報は問題の全体像が理解できるようにまとめられますが、単に情報を並べるだけでは全体像が見えてこないので、さまざまなモデル(多くは認知行動療法)を用いてクライエントの全体的理解を目指します。
重要なのは、現在の問題に着目し、それを中心に情報をまとめるということです。
そして、現在の問題を理解する際には、具体的な1つの状況を取り上げ、そこにおける自動思考や感情、行動を記述するようにしていきます。
ケース・フォーミュレーションでは、症状を維持するメカニズムや診断名を考慮して進めていきます。
広い視点で現在起こっている問題を維持させている悪循環についての仮説を立てるだけでなく、各問題がどのように発生し、発展して、現在に至っているかという点についても検証していく作業です。
ケース・フォーミュレーションは一度作成された後でも新たな情報によって、その都度作り変えられていきます。
その中で症状が維持される仕組みなどを理解し、それに基づいて治療の方針が立てられるわけです。
この経過の中で、クライエントも自分の問題を整理して理解することができ、これ自体が心理教育として治療のステップアップにつながっていくことも多いです。

臨床過程におけるケース・フォーミュレーション

「公認心理師必携 精神医療・臨床心理の知識と技法」に「臨床過程におけるケース・フォーミュレーション(以下、CF)の活用」が示されていました。
以下の通りです。

  1. アセスメントによって問題に関連するデータを収集する。
  2. 得られたデータを分析し、介入のターゲットとなる具体的問題を同定する。
  3. その問題を維持させている悪循環に関する仮説としてCFを生成する。
  4. クライエント(患者や関係者)にCFを提示し、問題理解について説明(心理教育)する。
  5. クライエントからCFに関する意見をもらい、CFを修正する。
  6. CFの修正作業を通してクライエントとの間で問題理解を共有し、問題解決に向けての協働関係を深める。
  7. 共有したCFを作業仮説として介入方針を定める。
  8. 介入方針をクライエントに説明(心理教育)し、合意を得る。
  9. 介入方針に関する合意を得る過程でクライエントの動機づけを高める。
  10. 介入した結果、効果が見られない場合にはCFを修正する。
  11. 修正されたCFに基づき介入方法を変更して介入を進める。
  12. 介入効果が見られたならば、CFに基づき再発防止のための留意点を確認し終結とする。

上記のようにクライエントとの共同作業で行っていくことが示されていますね。

【2018-18】

問題の維持・成り立ちに関するフォーミュレーション

問題の維持に関するケース・フォーミュレーションでは…
 ◎刺激:問題のきっかけとなる状況や対人関係の分析
 ◎反応:認知・感情・生理・行動の各々の反応がどのように問題を成り立たせているか。
 ◎結果:生活への影響、周囲の反応等が何を引き起こしているか
…などを見ていきます。

問題の成り立ちに関するケース・フォーミュレーションでは…
 ◎素因:遺伝、体質、家族関係など
 ◎発生要因:母子分離、病気、異動、等々
 ◎発展要因:周囲の無理解、安全感が維持されない環境等々

…などを見ていきます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です