臨床心理士資格試験では精神分析系の概念が多く出題されています。
今回の公認心理師ではほとんど出ていませんでしたね。
ですが、今後のことを踏まえると、やはり押さえておいた方が良いでしょう。
今回は特に精神分析から派生した各学派についてまとめていきます。
詳しい解説などは省き、この概念はこの人、ということだけ列挙していきます。
自我心理学
自我心理学は、最もFreud,Sの考えに忠実な正統派ともいわれる系譜です。
「無意識よりも自我に研究を移し、自我の自律性や現実適応や機能、また防衛やその社会的行動」を対象とし、幅広い心理学として展開されています。
代表的な人物と、その提唱した概念等をまとめていきます。
アンナ・フロイト
- 防衛機制概念の整理。
- 主要な防衛機制として、退行、抑圧、反動形成、分裂、打ち消し、投影、取り入れ、自己への向き換え(人に向ける怒りを自分に向ける)、逆転(愛を憎しみに変える)、昇華の10種類を挙げている。
- 児童分析において、精神分析をそのまま用いず、外的な環境を重視し、未熟な自我をサポートし、成長することを見守るという姿勢。
- その点でメラニークラインとの論争があった。
ハルトマン
- 健全な自我(現実適応的自我)の研究
- 自我自律性:自我は単にエスと超自我の調整をするのではなく、積極的に外界と接触し適応的な機能を果たすと考えた。
- 自我機能を知覚・思考・言語・認知・記憶などの『一次的自律機能』とその後の経験や学習で適応的な対処能力を備えた『二次的自律機能』に分類した。
- 10種の自我機能
①現実検討(主観的な観念や表象が、客観的現実と一致しているか否か)
②合理的な判断(自身の行動が社会的に適切か予測し、判断の妥当性を測る機能)
③自己と外界(対象)に対するリアリティ
④順序のある思考プロセス
⑤欲動と感情の調整・制御(葛藤に巻き込まれないことで、自分の成長に寄与する自我の働き)
⑥自我防衛機制(受け容れ難い欲望や願望を精神世界の操作で処理する機能)
⑦対象恒常性の確立など内的な対象関係
⑧支配‐達成の能力
⑨適応的な退行
⑩バランスの良い自我機能の統合(自己と他者のパーソナリティの統合と一貫性、連続性が保たれる)
フェダーン
- 自我と非自我の境界を「自我境界」と名づけた。
◎内的自我境界:無意識と自我の境界
◎外的自我境界:主観的世界と他者や現実世界
クリス
- 自我に奉仕する退行:多くの創造的活動は自我が一時的に退行することによって新しい創造がなされる。
コフート
- 自己愛を主要概念とする「自己心理学」の流れを作り、自己愛の肯定的な側面を評価し、健康な自己愛の視点を取り入れた。
- 自己愛の治療において「共感的環境」が重要であるとした。
マーラー
- 分離・個体化過程:生後3年までの乳幼児の発達研究により、乳児が母親との一体感から次第に分離して個としての自己像を確立していくプロセスを示した。
- 自閉期→共生期→分離・個体化期→対象恒常性の確立(母親の不在に耐え、相手との関係を維持できる)
①分化:母親と自分が別個の存在であると気づく
②練習:母親を支えとして外側と母親の間を往復
③再接近期:分離の意識も芽生えつつしがみつきたい両価的な時期
ブロス
- 「第2の分離個体化」として青年期に再び親から精神的にも自立していく過程を示した。
- 青年期を5つの段階で示した。
対象関係論
メラニー・クライン
- 子どもに精神分析的技法をそのまま採用(プレイには自由連想と同様の意味が内包されているので、それを直接解釈していく)。外界はそれほど重視しない立場。
- 原始的防衛機制の提唱:スプリッティング、投影性同一視、原始的理想化-脱価値化、躁的防衛など。
- ポジション概念(妄想分裂ポジション・抑うつポジション)の提唱。
- アンナの自我心理学派、クラインのクライン派のどちらにも属さない中間学派・独立学派というグループも出てきた(ウィニコット、バリントなど)。
- フロイトが考えているよりも、エディプスコンプレックスは早い時期から見られるとして、早期エディプスに着目した。
フェアバーン
- 「対象関係論」という言葉を公式に始めて用いた。
- リビドーの本質を「対象と満足のゆく関係を築きたい」という対象希求的な傾向と捉えた(対象希求)。
- 口唇期前期の対象関係に困難が集中しているとシゾイド・パーソナリティに、口唇期後期の対象関係に問題が集中していると抑うつ性パーソナリティになるとした(メラニークラインの妄想分裂ポジション・抑うつポジションと対応:エネルギー論は廃している)。
ビオン
- コンテイナー理論:乳児は空腹などの耐え難い苦痛を泣声で追い払う。その時、母親はその苦痛を受け取り、乳児が受け入れやすい形にして返すことにより、乳児は苦痛に耐えられるようになっていく(咀嚼して食べやすくしてあげるようなイメージ)。
中間学派
バリント
- 一次愛、受身的対象愛:甘え(土居健郎)と同義
- 基底欠損:境界例水準の問題に相当する。「ぴったりと膚接する」。
ウィニコット
- メラニー・クラインのSVを受けていた。
- ほどよい母親(good enough mother):万能感を脱却し現実を生きる
- 母親の原初的没頭
- 移行対象:自分が万能ではないことを体験する
- 錯覚と脱錯覚
- ホールディング
- 本当の自己、偽りの自己
- 独りでいられる能力:誰かが一緒にいても独りでいられること。くつろぎ。
- スクイッグル
新フロイト派
ホーナイ
- 基底不安(基本的不安):「敵意に満ちた外界に囲まれて、自分が孤独で無力である」という幼児の感情で、子どもの安全感を脅かす両親との関係によって引き起こされる。
サリヴァン
- 関与しながらの観察:文化人類学者の客観的に対象を対象として扱わず、自分を含めた上で調査を行う手法を面接に採用。
- 「精神医学は対人関係の学である」とし、精神疾患の原因を社会的な対人関係の偏倚に求めた。特に前思春期的体験の重要性を強調。
- 統合失調症の非常に高い寛かい率を示しており、しかもそれは継承性があったとされている。
エーリッヒ・フロム
- 自由からの逃走:大虐殺(ホロコースト)に大きく影響されている。
- 権威主義的性格:権威ある者への絶対的服従と、自己より弱い者に対する攻撃的性格
フリーダ・フロム・ライヒマン
- 「分裂病を作る母」を提唱した。
- 積極的心理療法