依存症者の家族や友人を主な対象とする自助グループを選択する問題です。
依存症者の自助グループには色んな種類がありますが、それらについて把握していることが求められていますね。
問97 依存症者の家族や友人を主な対象とする自助グループに該当するものを1つ選べ。
① 断酒会
② ダルク〈DARC〉
③ アラノン〈Al-Anon〉
④ ギャンブラーズ・アノニマス〈GA〉
⑤ アルコホーリクス・アノニマス〈AA〉
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なし
解答のポイント
依存症者を対象とした自助グループについて把握している。
選択肢の解説
① 断酒会
④ ギャンブラーズ・アノニマス〈GA〉
⑤ アルコホーリクス・アノニマス〈AA〉
現在、日本で活動している相互援助(自助)グループは、断酒会・AA・NA(Narcotics Anonymous:薬物依存症者の会)の他に、GA(Gamblers Anonymous:ギャンブル依存症者の会)、EA(Emotions Anonymous:感情に問題を抱える人たちの会)、OA(Over-eaters Anonymous:過食症者の会)などがあります。
上記のAAとはアルコホーリクス・アノニマス(Alcoholics Anonymous:無名のアルコール依存症たち)のことで、1935年にアメリカでアルコール依存症の二人の男性が、お互いの飲酒経験を語り合ったことから活動が始まり、この語り合いが今でもAAの活動の柱となっています。
AAは、現在およそ180以上の国と地域に10万以上のグループが存在し、メンバー数は200万人以上です(日本には600以上のグループが存在し、メンバー数は5700人以上と推定されています)。
AAでの参加者の語り合いはミーティングと呼ばれ、言いっぱなし聞きっぱなしが基本とされ、自分の語りは他の参加者からは尊重されると同時に、他の参加者の語りには最後まで耳を傾けます。
AAのメンバーになるために必要なことは、飲酒を止めたいという願いだけです。
その特徴は、グループ内では実名を名乗る必要はなく、ニックネーム(アノニマスネーム)でお互いを呼び合うことであり、これによって参加者同士のプライバシーを守ることができます。
また12ステッププログラムといって、アルコール依存症からの回復プログラムが提案されており、既にそれに取り組んだことのある参加者の経験と知恵を借りながらプログラムを取り組むこともできます。
AAの取り組みを参考に、日本の文化などを考慮に入れ、独自の発展を遂げた自助グループが1953年に創設された「断酒会」になります。
断酒会でもAAと同様、参加者同士がアルコールに関する自身の体験を語り合います(これを例会といい、全国各地で行われています)。
断酒会とAAのもっとも大きな違いであり、断酒会の主な特色になるのは例会で参加者が自身の氏名を名乗ることです(また、会員制をとっていることも特色のひとつです)。
参加者の家族も一緒に自身の体験を語りますし、家族のみで例会を行う断酒例会の会場もあります。
上記から、AAと断酒会の違いとしては、①AAには組織がなく、断酒会は組織化されている、②AAは匿名で参加し、断酒会は実名を明かす、③AAは原則本人のみが参加し、断酒会は家族も参加する、ということが挙げられるでしょう。
上記の通り、「依存症者の家族や友人を主な対象とする自助グループ」として、断酒会、AA、GAは該当しません。
断酒会では家族の参加も認められますが、依存症者の家族や友人を「主な対象」とはしておらず、やはり本人が対象となっていますね。
よって、選択肢①、選択肢④および選択肢⑤は不適切と判断できます。
② ダルク〈DARC〉
上記のAAで示されている12ステップは以下の通りになります。
- 私たちはアルコールに対し無力であり、思い通りに生きていけなくなっていたことを認めた。
- 自分を超えた大きな力が、私たちを健康な心に戻してくれると信じるようになった。
- 私たちの意志と生きかたを、自分なりに理解した神の配慮にゆだねる決心をした。
- 恐れずに、徹底して、自分自身の生き方の棚卸し表を作った。
- 神に対し、自分に対し、そしてもう一人の人間に対して、自分の過ちの本質をありのままに認めた。
- こうした性格上の欠点全部を、神に取り除いてもらう心の準備がすべて整った。
- 私たちの短所を取り除いてくださいと、謙虚に神に求めた。
- 私たちが傷つけたすべての人の表を作り、その人たち全員に進んで埋め合わせをしようとする気持ちになった。
- その人たちやほかの人を傷つけない限り、機会あるたびに、その人たちに直接埋め合わせをした。
- 自分自身の棚卸しを続け、間違ったときは直ちにそれを認めた。
- 祈りと黙想を通して、自分なりに理解した神との意識的な触れ合いを深め、神の意志を知ることと、それを実践する力だけを求めた。
- これらのステップを経た結果、私たちは霊的に目覚め、このメッセージをアルコホーリクに伝え、そして私たちのすべてのことにこの原理を実行しようと努力した。
こうしたAAの12ステッププログラムを回復の原理とする居住型の治療施設が「治療共同体」と呼ばれています。
この治療共同体は、依存症者自身の手によって運営されているという特徴があります。
1947年、アメリカで設立されたPhoenix Houseは、住む家を失ったAAメンバーのために作られ、1日3回のミーティングによって断酒生活を維持していました。
その施設では、平均18カ月を過ぎると、入寮者が就職したり、家族を取り戻したりするなど顕著な治療効果が認められたために、治療共同体と呼ばれるようになりました。
入居者も職員も依存症者であり、飲酒すれば生活の場が破壊されてしまうので、入所には厳しい条件が課されました。
すなわち、断酒の意思があり、12ステッププログラムによって生き方を変える人のみが、入所を許されたわけです。
治療内容は施設によってさまざまであり、1980年代以降は依存症者や家族の職員に加え、医療・福祉専門職を雇入れて内容の充実を図る施設が増えています。
日本の治療共同体は、マック(MAC:アルコール依存症者の施設)とダルク(DARC:薬物依存症者の施設)に代表されます。
MAC(メリノールアルコールセンター)は、メリノール宣教会のMeany神父によって大宮に開設され、後に東京の三ノ輪に移って「みのわマック」と称されるようになりました。
その後、覚せい剤や鎮痛薬の依存症者がDARC(Drag Addiction Rehabilitation Center)を創設しました。
MACやDARCは、従来の治療共同体にならって、回復している依存症者たちによって運営されています。
地域から直接入所することもできますが、医療機関で治療を受けてから利用することも可能です。
退院した人たちを地域のAAやNAに繋ぐという意味で、中間施設と呼ばれることもあります。
入寮者は1日2回の施設内ミーティングに出席し、夜間は連れ立って地域のAAやNAに参加します。
その他に、レクリエーションやスポーツ、料理や健康法などの実技も行われます。
退所時には、就職し自立していることが原則とされており、一般の医療施設よりも社会復帰度は高いとされています。
上記の通り、DARCは薬物依存症者の治療共同体であると言えますね。
よって、選択肢②は不適切と判断できます。
③ アラノン〈Al-Anon〉
家族は、依存症者が断酒や断薬を継続し、もう一度自分なりに幸せな人生を手に入れるとき、強力なバックアップをしてくれる大切な協力者です。
ですが、アルコール依存症は家族を巻き込み、悪影響を受けているにも関わらず、誰にも相談できず多くの家族が困っています。
そうしたアルコール依存症者に影響されて様々な障害が生じている家族が回復のために参加する自助グループが「アノラン:Al-Anon」になります。
子どもの場合は親が依存症で家庭での役割を果たせなくなると、依存症の子(children of alcoholics:COA)として特徴的性格や行為障害を呈することがあり、大人となっても影響が残ります(adult children of alcoholics:AC)。
このため依存症者本人と同様に、家族にとっても正しい知識を得たり感情をぶつける場が、家族の健康を保つために必要となっています。
先述の通り、アルコール依存症の自助グループである断酒会は、患者本人だけでなく家族も参加できますが、AAは本人のみの参加が原則です。
そこで家族のみが参加する自助グループである「アノラン:Al-Anon」が作られました(また子どもに対象を絞ったものがアラティーン(Alateen)になります)。
AAと同様に「言い放し、聞き放し」で進行するミーティングと、回復の指標とする12ステップについて自らの体験や考えを検討していくという2つの構成からなります。
家族がアルコール依存症者を抱えて他者に相談できない苦痛などが軽減され、家族自身が健康に生きるための援助を受けます。
家族が変化することで依存症者本人の回復に役立つことも期待できます。
上記の通り、本問の「依存症者の家族や友人を主な対象とする自助グループ」にアノランは該当すると言えますね。
書籍に書いてあるのは主に家族のための自助グループという説明ですが、アノランのホームページを見ると「友人」もその対象となっていることがわかります。
よって、選択肢③が適切と判断できます。