公認心理師 2022-115

DSM-5における躁病エピソードの症状に関する問題です。

躁病が「脳が忙しくなる」という状態と認識し、示されている症状を理解するとわかりやすいと思います。

問115 DSM- 5の躁病エピソードの症状として、不適切なものを1つ選べ。
① 離人感
② 観念奔逸
③ 睡眠欲求の減少
④ 目標指向性の活動の増加
⑤ 自尊心の肥大、または誇大

関連する過去問

公認心理師 2021-136

解答のポイント

躁病エピソードを把握している。

選択肢の解説

② 観念奔逸
③ 睡眠欲求の減少
④ 目標指向性の活動の増加
⑤ 自尊心の肥大、または誇大

まずはDSM-5における躁病エピソードを見ていきましょう。


A.気分が異常かつ持続的に高揚し、開放的または易怒的となる。加えて、異常にかつ持続的に亢進した目標指向性の活動または活力がある。このような普段とは異なる期間が、少なくとも1週間、ほぼ毎日、1日の大半において持続する(入院治療が必要な場合はいかなる期間でもよい)。

B.気分が障害され、活動または活力が亢進した期間中、以下の症状のうち3つ(またはそれ以上)(気分が易怒性のみの場合は4つ)が有意の差をもつほどに示され、普段の行動とは明らかに異なった変化を象徴している。

  1. 自尊心の肥大、または誇大
  2. 睡眠欲求の減少(例:3時間眠っただけで十分な休息がとれたと感じる)
  3. 普段より多弁であるか、しゃべり続けようとする切迫感
  4. 観念奔逸、またはいくつもの考えがせめぎ合っているといった主観的な体験
  5. 注意散漫(すなわち、注意があまりにも容易に、重要でないまたは関係のない外的刺激によって他に転じる)が報告される。または観察される。
  6. 目標指向性の活動(社会的、職場または学校内、性的のいずれか)の増加。または精神運動焦燥(すなわち、無意味な非目標指向性の活動)
  7. 困った結果になる可能性が高い活動に熱中すること(例:制御のきかない買いあさり、性的無分別、またはばかげた事業への投資などに専念すること)

C.この気分の障害は、社会的または職業的機能に著しい障害を引き起こしている、あるいは自分自身または他人に害を及ぼすことを防ぐため入院が必要であるほど重篤である、または精神病性の特徴を伴う。

D.本エピソード、物質(例:薬物乱用、医薬品、または他の治療)の生理学的作用、または他の医学的疾患によるものではない。

注:抗うつ治療(例:医薬品、電気けいれん療法)の間に生じた完全な躁病エピソードが、それらの治療により生じる生理学的作用を超えて十分な症候群に達してそれが続く場合は、躁病エピソード、つまり双極I型障害の診断とするのがふさわしいとする証拠が存在する。


上記の通り、「観念奔逸」「睡眠欲求の減少」「目標指向性の活動の増加」「自尊心の肥大、または誇大」が示されています。

なお、観念奔逸とは「思考プロセスが異常に亢進し、さまざまな考えがとめどなく湧いてくる状態」であり、目標指向性の活動の増加とは「仕事、家事、趣味などを頑張ってやり過ぎ」のことを指します。

以上より、選択肢②、選択肢③、選択肢④および選択肢⑤は適切と判断でき、除外することになります。

① 離人感

離人感とは、自分の精神機能や身体から遊離し、あたかも外部の傍観者であるかのように感じる持続的または反復的な体験(夢の中にいるような感じ、自己または身体の非現実感や時間が進むのが遅い感じ)を指します。

そして、こうした離人感が診断基準に出てくるのが心的外傷後ストレス障害であり、このDSM-5の基準内にある「いずれかを特定せよ」という中の項目として出てきています。

また、解離症群/解離性障害群の「離人感・現実感消失症」でも離人感の存在は基準Aに定められています(離人感、現実感消失、またはその両方の持続的または反復的な体験が存在する)。

なお、「躁病エピソード」について問う内容ですから、「もしかしたら抑うつエピソードの項目なのかな?」と思う人もいるかもしれませんが、抑うつエピソードの中に離人感は示されておりません。

ちなみに「離人感」はざっくりと言えば「自我に負担がかかるような出来事を「他人事」として処理することで安定を得ようとする心のディフェンス機能」になり、人間が他の動物に食べられていた時代から存在する機能であると考えられています。

動物に食べられている時にパニックになってしまうと生き延びる可能性が減るので、過度に冷静に自身を捉えるための機能であり、自分が遊離して自分を眺めるようになるのもそういう「俯瞰視点」で状況を見ることで状況から離脱する可能性を高めるためのものと解しておくと、実践上いろいろ役立つかもしれません。

私はいわゆる「幽体離脱」という現象は、この「外部の傍観者でいる感じ」が亢進したものと見なしています(実際のところはわからないですけどね)。

いずれにせよ、選択肢①は不適切と判断でき、こちらを選択することになります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です