Reasonが提唱している安全文化の構成要素に関する問題です。
正答を選ぶ根拠は過去問でも正誤判断が問われている箇所でしたから、ほぼ過去問と同じ内容と言ってよいでしょう(「もちろん過去問はやってきているよね?」という出題者側からのメッセージを感じるほど同じです)。
問50 J.T.Reasonが提唱している安全文化の構成要素を表す内容として、不適切なものを1つ選べ。
① 自らのエラーを率直に報告する。
② 定められた指揮系統に厳密に従う。
③ 不可欠な安全関連情報を提供する。
④ 安全に関する情報を基に正しい結論を導き出す。
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解答のポイント
Reasonの「安全文化の構成要素」を把握している。
過去問をしっかりと復習している。
選択肢の解説
① 自らのエラーを率直に報告する。
② 定められた指揮系統に厳密に従う。
③ 不可欠な安全関連情報を提供する。
④ 安全に関する情報を基に正しい結論を導き出す。
「安全文化」という考え方が安全対策や事故の問題の中で語られるようになったきっかけは、チェルノブイリ原子力発電所事故です。
1996年にIAEA(国際原子力機関)がASCOTガイドラインを示し、安全文化の定義や組織の安全文化の測定法が提案されました。
IAEAによると安全文化とは「安全にかかわる諸問題に対して最優先で臨み、その重要性に応じた注意や気配りを払うという組織や関係者個人の態度、特性の集合体」とされています。
こうした定義のみでは具体的な対策がわからないでいたところ、ヒューマンエラー研究の草分け的存在だったジェームズ・リーズンが「安全文化はエンジニアリングできる」とし、下記の4つの文化それぞれについて仕組みをきちんとできるようにすれば安全文化が育っていくはずだと考えました。
リーズンの安全文化の4要素は以下の通りです。
- 報告する文化:
自己のエラーやニアミスを率直に報告しようとする文化。 - 正義の文化:
不可欠な安全関連情報の提供を奨励し、そうでない場合を制裁する信頼関係に基づく文化。 - 柔軟な文化:
状況に応じて組織形態を変化させるなど組織自身を再構成できる文化。 - 学習する文化:
安全情報システムから正しい結論を導き出す意思と能力、大きな改革を実施する意思をもつ文化。
これらを踏まえて、各選択肢を見ていきましょう。
選択肢①の「自らのエラーを率直に報告する」は第1の要素「報告する文化」を表していることがわかります。
選択肢③の「不可欠な安全関連情報を提供する」は第2の要素「正義の文化」を表していることがわかります。
選択肢④の「安全に関する情報を基に正しい結論を導き出す」は第4の要素「学習する文化」を表していることがわかります。
誤っているのが選択肢②の「定められた指揮系統に厳密に従う」であり、これは第3の要素「柔軟な文化」に反する内容になっていますね。
私は緊急対応時に必要な力として「通常時と緊急時のパラダイムシフトが速やかにできること」だと考えています。
舞鶴市の相撲の巡業で、土俵上で倒れた市長に駆け寄ろうとした女性看護師に「女性は土俵に上がらないでください」とアナウンスしたという話がありましたが、これはまさに「通常時と緊急時のパラダイムシフト」ができていないわけです。
通常時、土俵の上に女性が上がらないというルールでやるなら好きにやればいいのですが(私にとっては女性専用車両と同じくらいのレベルで見ています)、人が死にかけているかもしれないという緊急時においては、そういった「通常のルール」は吹っ飛ぶはずなんです。
「通常時と緊急時のパラダイムシフトが速やかにできる」という柔軟さの重要性を、この第3の要素は示しているのだと認識しています。
ちなみにどうやったら「通常時と緊急時のパラダイムシフトが速やかにできる」のかを考えたときに(今、学校で緊急対応を主に行う場所にいるので、こういうことを考えねばならない)、「常に自分の言動が、他者にどういう影響を与えているかを考え続けること」だと思っています。
つまり、いつも自分の言動によって生じた力動があり、それによって「まだ見ぬ未来にどのような影響を与えるか」を頭の中で想像する習慣をつけるのです。
そうすることで「考え得る一番良くない状況」についても思案する習慣が付きますし、それにどう対処するかも考えることになるはずです(もちろん、良い状況についても考えることになっていい。それだけしか考えないのはダメだけど)。
男性は女性と違って「わけがわからない状況に耐える力」が弱いので、そして私は男性なので、常にこうした「予測」の力を使って対処することが重要だと認識しています。
以上より、選択肢①、選択肢③および選択肢④は適切と判断でき、除外することになります。
また、選択肢②が不適切と判断でき、こちらを選択することになります。