学校教育に関する法規の説明に関する問題です。
問題自体はそれほど難しくないと感じますが、それは私が教育領域にいること、子どもを育てていることと関係があるかもしれません。
問131 学校教育に関する法規等の説明として、誤っているものを1つ選べ。
① 学校教育法は、認定こども園での教育目標や教育課程等について示している。
② 学習指導要領は、各学校段階における教育内容の詳細についての標準を示している。
③ 教育基本法は、憲法の精神を体現する国民を育てていくための基本理念等について示している。
④ 学校保健安全法は、学校に在籍する児童生徒・教職員の健康及び学校の保健に関して示している。
解答のポイント
学校教育に関する法規について概要を把握している。
選択肢の解説
① 学校教育法は、認定こども園での教育目標や教育課程等について示している。
こちらは学校教育法で定められている「学校」の定義の理解が必要です。
学校教育法における「学校」とは、「幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする」と第1条にて定められています。
この背景には管轄の違いがあって、上記の学校に関しては文部科学省の管轄になりますが、保育所や認定こども園は厚生労働省の管轄になります。
学校教育法では、幼稚園という「義務教育及びその後の教育の基礎を培うものとして、幼児を保育し、幼児の健やかな成長のために適当な環境を与えて、その心身の発達を助長することを目的とする(第22条)」機関で行われる教育について示してあります。
学校教育法の第三章の第22条~第28条がその条項になりますね。
これに対して、本選択肢の認定こども園については、まず児童福祉法第6条の三⑦に「この法律で、一時預かり事業とは、家庭において保育(養護及び教育(第三十九条の二第一項に規定する満三歳以上の幼児に対する教育を除く。)を行うことをいう。以下同じ。)を受けることが一時的に困難となつた乳児又は幼児について、厚生労働省令で定めるところにより、主として昼間において、保育所、認定こども園(就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成十八年法律第七十七号。以下「認定こども園法」という。)第二条第六項に規定する認定こども園をいい、保育所であるものを除く。第二十四条第二項を除き、以下同じ。)その他の場所において、一時的に預かり、必要な保護を行う事業をいう」と示されています。
上記の「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律:認定こども園法」もチェックしておきましょう。
第二条(定義) この法律において「子ども」とは、小学校就学の始期に達するまでの者をいう。
2 この法律において「幼稚園」とは、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する幼稚園をいう。
3 この法律において「保育所」とは、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第三十九条第一項に規定する保育所をいう。
4 この法律において「保育機能施設」とは、児童福祉法第五十九条第一項に規定する施設のうち同法第三十九条第一項に規定する業務を目的とするもの(少数の子どもを対象とするものその他の主務省令で定めるものを除く。)をいう。
5 この法律において「保育所等」とは、保育所又は保育機能施設をいう。
6 この法律において「認定こども園」とは、次条第一項又は第三項の認定を受けた施設、同条第十一項の規定による公示がされた施設及び幼保連携型認定こども園をいう。
7 この法律において「幼保連携型認定こども園」とは、義務教育及びその後の教育の基礎を培うものとしての満三歳以上の子どもに対する教育並びに保育を必要とする子どもに対する保育を一体的に行い、これらの子どもの健やかな成長が図られるよう適当な環境を与えて、その心身の発達を助長するとともに、保護者に対する子育ての支援を行うことを目的として、この法律の定めるところにより設置される施設をいう。
8 この法律において「教育」とは、教育基本法(平成十八年法律第百二十号)第六条第一項に規定する法律に定める学校(第九条において単に「学校」という。)において行われる教育をいう。
9 この法律において「保育」とは、児童福祉法第六条の三第七項に規定する保育をいう。
10 この法律において「保育を必要とする子ども」とは、児童福祉法第六条の三第九項第一号に規定する保育を必要とする乳児・幼児をいう。
11 この法律において「保護者」とは、児童福祉法第六条に規定する保護者をいう。
12 この法律において「子育て支援事業」とは、地域の子どもの養育に関する各般の問題につき保護者からの相談に応じ必要な情報の提供及び助言を行う事業、保護者の疾病その他の理由により家庭において養育を受けることが一時的に困難となった地域の子どもに対する保育を行う事業、地域の子どもの養育に関する援助を受けることを希望する保護者と当該援助を行うことを希望する民間の団体若しくは個人との連絡及び調整を行う事業又は地域の子どもの養育に関する援助を行う民間の団体若しくは個人に対する必要な情報の提供及び助言を行う事業であって主務省令で定めるものをいう。
上記に認定こども園が規定されているのがわかりますね。
大切なのが、認定こども園と幼稚園の違いを知っておくことだろうと思います。
幼稚園は学校教育法に規定されていますから「教育」を行う機関となりますが、認定こども園は上記からもわかる通り「家庭において保育を受けることが一時的に困難となつた乳児又は幼児を一時的に預かり、必要な保護を行う事業」となります。
ですから、本選択肢の内容は「認定こども園」だと矛盾が生じ、「幼稚園」であれば問題がないということですね。
以上より、選択肢①は誤りと判断できます。
② 学習指導要領は、各学校段階における教育内容の詳細についての標準を示している。
学習指導要領は、文部科学省が告示する初等教育および中等教育における教育課程の基準です。
文部科学省のページにおいて学習指導要領は「全国どこの学校でも一定の水準が保てるよう、文部科学省が定めている教育課程(カリキュラム)の基準です。およそ10年に1度、改訂しています。子供たちの教科書や時間割は、これを基に作られています」とされていますね。
学習指導要領は学校教育法施行規則に基づいて作成されていますが、各教科の単元の構成やその詳細について指示してあり、これらについての法的根拠はありません(学習内容について、法的に定めるというのが難しいのは何となくわかりますよね)。
ただ、以前、最高裁において学習指導要領に一定の法的拘束力が認められていますから、全体としては法的拘束力を有すると考えてよいでしょう。
以上より、選択肢②は正しいと判断でき、除外することになります。
余談ですが、ゆとり教育とか脱ゆとり教育とか、いろんな変遷もあった学習指導要領ですが、あまり時代の流れに左右されない箇所に関しては「よくできている」といつも感じます。
子どもの心の発達に沿って「確かにその内容はそのタイミングだと入りやすいよね」という時期にしっかりと作られているという印象です。
例えば、家庭科という科目は「他人の心身に対して慮る」という機能が育っていないと意味がありません。
他者の食べ物や着るもの、それらに対する心地良さに対して思いをはせることができない人は、家庭科という科目での学びが入りにくいのは想像できると思います。
この家庭科が小学校5年生から科目としてスタートするというのも、本当に他者の心身の状態を慮ることができつつある年齢という感じがします。
もちろん、家庭科が小学校5年生からスタートするのは技能的な意味合いも大きいでしょうが、技能と心の発達は連動するという見方もできるかもしれませんね。
いずれにせよ、学習指導要領(の時代の流れと関係がないところ)はよくできているというのが全体としての印象です。
③ 教育基本法は、憲法の精神を体現する国民を育てていくための基本理念等について示している。
こちらについては、教育基本法の前文に記載がありますね。
我々日本国民は、たゆまぬ努力によって築いてきた民主的で文化的な国家を更に発展させるとともに、世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願うものである。
我々は、この理想を実現するため、個人の尊厳を重んじ、真理と正義を希求し、公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに、伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を推進する。
ここに、我々は、日本国憲法の精神にのっとり、我が国の未来を切り拓く教育の基本を確立し、その振興を図るため、この法律を制定する。
本選択肢の内容は、この前文の内容を引用したものであると言えます。
こうした日本国憲法の基本理念に則った教育を示すのが教育基本法であり、より詳しく細かい事柄については学校教育法で示されていますね。
以上より、選択肢③は正しいと判断でき、除外することになります。
④ 学校保健安全法は、学校に在籍する児童生徒・教職員の健康及び学校の保健に関して示している。
こちらについてはまず総則から引用していきましょう。
第一条(目的) この法律は、学校における児童生徒等及び職員の健康の保持増進を図るため、学校における保健管理に関し必要な事項を定めるとともに、学校における教育活動が安全な環境において実施され、児童生徒等の安全の確保が図られるよう、学校における安全管理に関し必要な事項を定め、もつて学校教育の円滑な実施とその成果の確保に資することを目的とする。
第二条(定義) この法律において「学校」とは、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校をいう。
2 この法律において「児童生徒等」とは、学校に在学する幼児、児童、生徒又は学生をいう。
上記の太字部分が、本選択肢の「学校に在籍する児童生徒・教職員の健康及び学校の保健に関して示している」という内容に合致しますね。
以上より、選択肢④は正しいと判断でき、除外することになります。
これで解説は終わりですが、学校でのコロナ対応について軽く述べておきましょう(せっかくの学校保健安全法に関する選択肢ですしね)。
これは私が経験しているもので全国的にはわかりませんが、主に出欠の扱いについてです。
まず昨年のコロナの対応が定まっていなかったときには、体調不良や「親がコロナが心配だから行かせたくない」といった場合すべてを「欠席」ではなく「出席停止」として扱っていました。
現在ではもう少しわかりやすくなって、感染したり濃厚接触者になったら、ある期間だけ「出席停止」となり、それ以外は「欠席」になるのが一般的ですが、感染不安に関しては「出席停止」となっていますね(こちらの文部科学省のページが詳しい)。
ちなみに、感染不安で休むという子どもは、私が勤務している学校(全部で12校くらい)では見られなくなりましたが、全国的にはどのくらいいるのかわかりません。
ここまでは前置きなんですが、結構シビアになってくるのが小中学生よりも高校生です。
高校生の場合、欠時によって留年の判断がなされるので、「欠席」と「出席停止」でえらい違いが生じてしまいます。
昨年度、私が経験したのは「欠席をすべて出席停止として扱った」という期間がそれなりにあったために、不登校児もみんな「出席停止」扱いになったということです。
ちなみに高校の単位についてですが、大学の授業で考えてもらえばわかりやすいです(一般に、半期の授業全15回のうち2/3出ないと単位を落とすことになりますよね)。
「出席停止」だと、この「15回」という言わば分母の数が減っていくということになります。
だから、コロナで3回出席停止になったら、残り12回の2/3に出れば良いということになり、「出席しなければならない回数」も減っていくということになるわけです。
つまり、高校で「欠席をすべて出席停止として扱った」という期間がそれなりにあると、出席しなければならない回数がぐっと減って、「本来ならば進級できなかったはずの生徒が進級できた」という事態が起こるわけです。
これは一見良さそうですが、実態はそうでもなく、彼らは次の学年で「前年度体験するはずだった留年の危機を体験することになる」ことが多いのです(不登校状態が改善すればOKだが、そう簡単に改善しない例の方が多い)。
留年の危機になり、他の学校に転校する等の措置を取ることが多いのですが(現在では、あまり留年して同じ高校に残るという選択は少なくなっています)、前年度に「出席停止」となって学校にほぼ来ていないような生徒だけど進級できている場合、学力的には「中卒時」のまま高校2年生として転校するという形になるわけですね。
こうした事態は、コロナという初めてのことによる対応が招いたわけですが、ある程度は仕方のないことだろうと思います。
ですが、やはり「体験すべきことを、きちんと体験すべきタイミングで体験することの大切さ」を感じています。
これは高校の留年云々に関わらず、心理支援全般に言えることだと思っています。
その人が今の時点で体験することが自然な体験については、誤魔化したり現実を加工して目を逸らすような姑息な真似はしてはいけないなと感じますし、そういう場面ではクライエントと対決することもあり得るのでしょうね。
でも、「これは今体験しておくべきことだ」と思っても、クライエントが全くその状況に身を置かないということも少なくないので、結果的に「次の支援者にバトンタッチ」ということも多いですね。