少年法に関する問題です。
これは少年司法制度についての理解が問われていますね。
問108 少年法について、正しいものを1つ選べ。
① 少年とは、18歳に満たない者をいう。
② 少年の刑事処分については、規定されていない。
③ 14歳に満たない者は、審判の対象とはならない。
④ 審判に付すべき少年とは、刑罰法令に触れる行為を行った者に限定されている。
⑤ 少年事件は、犯罪の嫌疑があるものと思料されるときは、全て家庭裁判所に送致される。
解答のポイント
少年法の概要について理解している。
選択肢の解説
① 少年とは、18歳に満たない者をいう。
こちらは少年法第2条に規定がありますね。
第二条(少年、成人、保護者) この法律で「少年」とは、二十歳に満たない者をいい、「成人」とは、満二十歳以上の者をいう。
2 この法律で「保護者」とは、少年に対して法律上監護教育の義務ある者及び少年を現に監護する者をいう。
上記の通り、少年法において「少年」とは、20歳に満たないものを指します。
ちなみに、本選択肢の「18歳未満」というのは、児童福祉法の定義ですね。
第四条 この法律で、児童とは、満十八歳に満たない者をいい、児童を左のように分ける。
一 乳児 満一歳に満たない者
二 幼児 満一歳から、小学校就学の始期に達するまでの者
三 少年 小学校就学の始期から、満十八歳に達するまでの者
このように、児童福祉法と少年法では、同じ「少年」という表記でも、その示す年齢が異なることに注意が必要です。
他にも「児童手当法」では児童=18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者とし、「母子及び寡婦福祉法」では児童=20歳未満の者としているなど、法律によって呼び方や年齢の枠組みが異なりますね。
なお「少年」という用語は、男子・女子に関係なく用いるが、女子の少年を少女と表すこともあります。
以上より、選択肢①は誤りと判断できます。
② 少年の刑事処分については、規定されていない。
こちらについては、そもそもの少年法第1条(この法律の目的)で「この法律は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする」とあります。
ここまでだと「刑事事件について講ずる」とあるにとどまっていますので、本選択肢の「刑事処分」はどうか?までを考えておくことが大切ですね。
「刑事処分」についても、第三節に「処分(第五十一条‐第六十条)」とありますから規定されていることがわかります。
いくつか抜粋しておくと以下の通りです。
第五十一条(死刑と無期刑の緩和) 罪を犯すとき十八歳に満たない者に対しては、死刑をもつて処断すべきときは、無期刑を科する。
2 罪を犯すとき十八歳に満たない者に対しては、無期刑をもつて処断すべきときであつても、有期の懲役又は禁錮を科することができる。この場合において、その刑は、十年以上二十年以下において言い渡す。
第五十二条(不定期刑) 少年に対して有期の懲役又は禁錮をもつて処断すべきときは、処断すべき刑の範囲内において、長期を定めるとともに、長期の二分の一(長期が十年を下回るときは、長期から五年を減じた期間。次項において同じ。)を下回らない範囲内において短期を定めて、これを言い渡す。この場合において、長期は十五年、短期は十年を超えることはできない。
2 前項の短期については、同項の規定にかかわらず、少年の改善更生の可能性その他の事情を考慮し特に必要があるときは、処断すべき刑の短期の二分の一を下回らず、かつ、長期の二分の一を下回らない範囲内において、これを定めることができる。この場合においては、刑法第十四条第二項の規定を準用する。
3 刑の執行猶予の言渡をする場合には、前二項の規定は、これを適用しない。
第五十五条(家庭裁判所への移送) 裁判所は、事実審理の結果、少年の被告人を保護処分に付するのが相当であると認めるときは、決定をもつて、事件を家庭裁判所に移送しなければならない。
第五十六条(懲役又は禁錮の執行) 懲役又は禁錮の言渡しを受けた少年(第三項の規定により少年院において刑の執行を受ける者を除く。)に対しては、特に設けた刑事施設又は刑事施設若しくは留置施設内の特に分界を設けた場所において、その刑を執行する。
2 本人が満二十歳に達した後でも、満二十六歳に達するまでは、前項の規定による執行を継続することができる。
3 懲役又は禁錮の言渡しを受けた十六歳に満たない少年に対しては、刑法第十二条第二項又は第十三条第二項の規定にかかわらず、十六歳に達するまでの間、少年院において、その刑を執行することができる。この場合において、その少年には、矯正教育を授ける。
第五十七条(刑の執行と保護処分) 保護処分の継続中、懲役、禁錮又は拘留の刑が確定したときは、先に刑を執行する。懲役、禁錮又は拘留の刑が確定してその執行前保護処分がなされたときも、同様である。
第五十八条(仮釈放) 少年のとき懲役又は禁錮の言渡しを受けた者については、次の期間を経過した後、仮釈放をすることができる。
一 無期刑については七年
二 第五十一条第二項の規定により言い渡した有期の刑については、その刑期の三分の一
三 第五十二条第一項又は同条第一項及び第二項の規定により言い渡した刑については、その刑の短期の三分の一
2 第五十一条第一項の規定により無期刑の言渡しを受けた者については、前項第一号の規定は適用しない。
以上のように、少年法には「刑事処分」に関する規定が設けられていることがわかりますね。
よって、選択肢②は誤りと判断できます。
③ 14歳に満たない者は、審判の対象とはならない。
④ 審判に付すべき少年とは、刑罰法令に触れる行為を行った者に限定されている。
これらは少年法第3条の内容になりますね。
第三条(審判に付すべき少年) 次に掲げる少年は、これを家庭裁判所の審判に付する。
一 罪を犯した少年
二 十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年
三 次に掲げる事由があつて、その性格又は環境に照して、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年
イ 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。
ロ 正当の理由がなく家庭に寄り附かないこと。
ハ 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し、又はいかがわしい場所に出入すること。
ニ 自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること。
2 家庭裁判所は、前項第二号に掲げる少年及び同項第三号に掲げる少年で十四歳に満たない者については、都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り、これを審判に付することができる。
このように審判に付すべき少年が規定されています。
選択肢④の「刑罰法令に触れる行為を行った者」というのは、上記の「一 罪を犯した少年」および「二 十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年」を指しています。
ただ、この枠では「三 次に掲げる事由があつて、その性格又は環境に照して、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年」すなわち虞犯少年が含まれないことになってしまいますね。
つまり、「審判に付すべき少年とは、刑罰法令に触れる行為を行った者に限定されている」というのは虞犯少年を抜いた表現になってしまっているということです。
また、選択肢③の「14歳に満たない者は、審判の対象とはならない」に関しても、「~十四歳に満たない者については、都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り、これを審判に付することができる」とありますから、審判の対象となり得ることが示されていますね。
以上より、選択肢③および選択肢④は誤りと判断できます。
⑤ 少年事件は、犯罪の嫌疑があるものと思料されるときは、全て家庭裁判所に送致される。
これは少年の刑事事件に関する規定で定められています。
第四十一条(司法警察員の送致) 司法警察員は、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、罰金以下の刑にあたる犯罪の嫌疑があるものと思料するときは、これを家庭裁判所に送致しなければならない。犯罪の嫌疑がない場合でも、家庭裁判所の審判に付すべき事由があると思料するときは、同様である。
第四十二条(検察官の送致) 検察官は、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑があるものと思料するときは、第四十五条第五号本文に規定する場合を除いて、これを家庭裁判所に送致しなければならない。犯罪の嫌疑がない場合でも、家庭裁判所の審判に付すべき事由があると思料するときは、同様である。
2 前項の場合においては、刑事訴訟法の規定に基づく裁判官による被疑者についての弁護人の選任は、その効力を失う。
なお、上記の第四十五条第五号本文に規定する場合とは「検察官は、家庭裁判所から送致を受けた事件について、公訴を提起するに足りる犯罪の嫌疑があると思料するときは、公訴を提起しなければならない。ただし、送致を受けた事件の一部について公訴を提起するに足りる犯罪の嫌疑がないか、又は犯罪の情状等に影響を及ぼすべき新たな事情を発見したため、訴追を相当でないと思料するときは、この限りでない。送致後の情況により訴追を相当でないと思料するときも、同様である」という内容を指しています。
これは「公訴を提起するに足りる嫌疑がない」という場合ですから、要は、犯罪の嫌疑がない場合ですから本選択肢の「犯罪の嫌疑があるものと思料される」とはなりませんね。
上記のようなルートはともかく「犯罪の嫌疑があるものと思料するとき」には、全て家庭裁判所に送致されることが規定されていることがわかります。
以上より、選択肢⑤が正しいと判断できます。